12月3日、東京地裁で開かれたガールズバーの元店長・高岡由佳被告(21)の初公判。高岡被告は5月、東京・新宿区のマンションでホスト男性の腹部を刃物で刺し、殺人未遂の罪に問われている。


初公判当日の東京地裁 ©文藝春秋

 黒のスーツに丸メガネ姿で出廷した高岡被告は、被告人質問で、被害者の琉月(るな)さん(20)のホストの“魔力”に魅了されたことを告白。ガールズバーを辞めデリヘルやパパ活などで稼いだお金を琉月さんに貢いだことや、事件現場となった新宿区内のマンションに引っ越しした経緯などを語った。

歌舞伎町のラブホに行ったと聞いて口論に

「被害者はスウェットパーカー姿で大きなピアスをつけて出廷し、まったく緊張感が感じられなかった。弁護人から繰り返し質問されるなかで、被害者なのに“女性を騙したホスト”としての印象が残ってしまった」(司法担当記者)

 高岡被告が、幸せを夢見た新宿の新生活は引っ越し2日目の5月21日、早くも目論見が崩れることになった。

「(琉月さんが)歌舞伎町のラブホに行ったと友人から聞いて、口論になった。彼はホテルに行ったことを認めたが、(性行為は)していないと言っていた。すごく辛かったけど『今後は女性といるときは伝えてほしい』でまとまりました」(高岡被告)

 翌22日、高岡被告はデリバリーヘルスの仕事を翌23日の朝まで勤めた後、ドン・キホーテで包丁を購入。家に戻るとガールズバーの友人に電話をかけ、琉月さんについて相談をしたという。

〈彼の言うことが嘘だとしても殺してしまえば本当になる〉

「『我慢するしかない』と言われた。その後、(琉月さんに)早く家に帰ってきてほしいことを伝えたが、お店に来た女の子に『営業直し(お客さんの店へ飲みに行く)に行くから遅くなる』と言われ、そのときは死にたいと思い、携帯でメモを作成しました。彼を殺して自分も死のうと思った。彼を殺すしかないと思いました」(高岡被告)

 殺害を決意したメモを検察官は早口で読み上げた。

〈お母さん、お父さん、○○さん、××さんごめんなさい。私に関わってくれた皆さんごめんなさい。昔から虚言癖が酷くて、虚言癖があった私は悲劇のヒロインになりたくて(略)親不孝な娘でごめんなさい。バカな娘でごめんなさい。虚言癖で嘘か本当かわからなくなって、大好きな人ができて どうしたら私以外を見なくなるのか殺せばいいとおもいました。彼のいうことが嘘だとしても殺してしまえば本当になる。琉月くんとしてではなくて、○○くん(琉月さんの本名)を愛している。心の底からどうしようもないほど愛している。お金としてしかみられていないのが辛い。嘘の言葉しかくれなかった、けれど死ねば本当になる(略)〉

彼が寝たのでキッチンに行き、「殺してしまおう」と

 同日15時過ぎ、何も知らない琉月さんは高岡被告の部屋を訪れる。前々日に購入したカーテンを取り付けた後、高岡被告と肉体関係をもつと、パンツ一枚の姿でベットで寝てしまった。

「彼が寝たのでキッチンに行き、『彼を殺してしまおう』と思い、包丁をもってベットに行きました。両手で包丁を握り、寝ている彼からみて身体の真ん中の左側に立ちお腹に対して直角……垂直に刺しました。彼が起き上がろうとしたので私は馬乗りになりました。彼は私の首を絞めようとしました」(高岡被告)

 刺した後も被害者に「好き」と告げる高岡被告に対して、琉月さんは「わかった、ずっと一緒にいよう」「警察に言わないから救急車を呼んでほしい」と懇願。それでも高岡容疑者は琉月さんの携帯を奪い取ったため、琉月さんは部屋を飛び出したという。高岡被告は阻止しようと琉月さんのパンツに手をかけた。

「どこにも行かないで。携帯とタバコを持って追いかけた」

「行かないでほしかった。どこにも行かないでほしかったんだと思います。彼は私を付き飛ばし、私を殴って蹴って出て行った。その際、私のコンタクトが取れたのでメガネを取りに行って、携帯とタバコを持って追いかけました」(高岡被告)

 高岡被告は1日タバコを4箱吸うヘビースモーカーだという。琉月さんはエレベーターで1階に降り、エントランスで力尽き、倒れた。高岡被告は非常階段で後を追い、エントランスで倒れている苦しむ琉月さんを見つけると、110番通報したという。

 前出の司法担当記者が続ける。

「高岡被告や弁護人は、自ら110番通報をしたことで過ちを悔い、自首をしたことをアピールしていた。一方、検察は高岡被告が非常階段で追跡をする際、途中でタバコを吸ったり、倒れた琉月さんにキスをしようとする、またはキスをしようとした奇行を指摘しました。追跡の際、血だらけの高岡被告を見た住民が悲鳴を上げており、警察に通報されたと思った高岡被告は『もう一緒に死ぬことができない』と考え、やむを得ず110番通報をしたと検察は見ている」

母親は涙ながらに「娘は本来優しい子なんです」

 逮捕後、高岡被告は琉月さんに謝罪の手紙を書き、琉月さんにはもちろん、彼の職場である歌舞伎町にも近付かないことを誓った。既に示談が成立しており、琉月さんは寛大な処分を望んでいる。

「示談金は500万で高岡被告の母親が払いました。法廷で証言した中国出身の母親は、涙ながらに『娘は本来優しい子なんです』と不慣れな日本語で減刑を嘆願していました」(同前)

 高岡被告は10月に保釈されており、学校に通い、介護の資格を獲得。今後はハローワークに通い、介護福祉の仕事を目指していくと訴えていた。

 12月4日、検察は確固たる殺意があったなどとして懲役5年を求刑。弁護人は両親から十分な監督が期待でき、反省をしているという点から執行猶予を求めた。高岡被告は裁判官に対し現在の気持ちを泣きながらこう述べた。

「本当に大変なことをしました。恐ろしい事件を起こしてしまった。被害者に申し訳ないと思っています。人間が人間を殺していいはずがありません。保釈されてから両親と話をしたときに父から『由佳と母がいれば』それでいいと言われ、母からは初めて強く抱きしめられた気がします。一生償って事件を背負って生きていきます」

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)