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●「面白そうだから行ってみよう」が必要

『池の水ぜんぶ抜く』テレビ東京の番組が、反響を呼んでいる。1月に第1弾が放送されて以来、順調に回を重ね、今度はシリーズ第4弾となる日曜ビックバラエティ『緊急SOS!超巨大怪物が出た!出た!池の水ぜんぶ抜く大作戦4』(9月3日19:54〜)が放送される。

番組を手がける伊藤隆行プロデューサーは、シリーズ第1弾収録時に「日比谷公園を狙っている」と言っていたが、第4弾では実際に日比谷公園の雲形池の水を抜くことになった。また、前回登場した伊集院光や、今回出演する芦田愛菜など、番組を見て立候補するタレントも続々登場している。これらの反響について、現場ではどうとらえているのか、そして第4弾の見どころについて、伊藤プロデューサーに話を聞いた。

○ガラクタを大事にする

――放送するたびに反響が大きくなっていると思うのですが、制作側としての印象はいかがですか?

なんなんでしょうね(笑)。これに関しては、びっくりです。

――社内でもびっくりされているとか。

最初は、こんなもの視聴率が取れるわけない、という感じでしたからね。だから本当にびっくりしていると思います。なんなんですかね? 本当に(笑)。テレビ東京と、「池の水をぜんぶ抜く」という番組のイメージが、ちょうど合ったのかもしれないですよね。

意外とテレビ東京の社員が"テレ東らしさ"を作るのが一番難しくて。「テレ東っぽいよね」と言われて反響を呼んだ時に「こういう番組なんだ」というのを、改めて思い知らされています。シンプルですよね。

――"テレ東ぽい番組"を考えすぎてしまうより、シンプルにした方がいいんですね。

最強の失敗作みたいなところあるじゃないですか、テレビ東京って。ガラクタをすごく大事にしている(笑)。どの局でも、着眼点が面白い番組はいっぱいあります。だからその中で"テレ東らしさ"ってなんなんだろうと思ったら、ガラクタなのかもしれません。ふだん無視してしまうようなものをすごくクローズアップして。だから失敗も多いですし、見向きもされない経験はたくさんあります(笑)。

『なんでも鑑定団』だって、ガラクタになりそうなものを蔵の中から出して鑑定して、『アド街ック天国』だって小さな街を大きくランキングして、『モヤさま』も、引きのない街に芸人が行って(笑)。誰も見向きもしないところに行ってみてやってみて、面白ければ当たっていく。で、大半が失敗する。それがテレビ東京的な事で、テレビってもっと立派なものなのに、全然違うことをやっているのがいいのかもしれません。カメラがそこになくていいことに対してカメラを向けて、なんとかテレビ番組に仕上げていくという。

あともうひとつ、テレビ東京で有名な番組って、やってみてわかることの方が多いんですよね。作っている人が「こんなことになると思わなかった」という番組が多い。でも社内で「池の水を抜いてみないとわからないんですよ」と言いながら企画書を出したら、上もわかんないですよね(笑)。それで「なし!」としてしまいたい気持ちもわかりますが、実はテレビマンってその気持ちをわかっちゃいけないんじゃないか。想像して一か八か、面白そうだから行ってみようという部分が、必要なのかもしれない。

そして「これでいこうよ」と決める人の勇気も、けっこう求められているのではないかという気がします。そうなると、製作する人も、企画をする若い人も、作家もディレクターもプロデューサーも、「こんなのあるんだ」と幅を持てるようになる。池の水を抜くだけで反響があったということが、2017年テレビのお話だと思うと、なんだかいいですよね。

●狩野恵里アナ、大江麻理子キャスターも「行きたい」

○どの池にも発見がある

――予告や公開された情報を見ていると、今回は様々な種類のものが出てきたのかなと思い、そこが楽しみです。

3打席3安打でしたね。初回はリサーチ会社から募って池の方にお願いしていたんですが、それ以降、特に今回は「やってください」という池が多くて。そういった声に対して、即座にスタッフが行って「やってみましょう」と、本当にやる。テレビと、切実に水を抜いてほしい人との距離感を大事にしました。日比谷公園の方も、『モヤさま』のファンで、僕のツイートを見てくれていたみたいなんです。

本当に、毎回毎回、どの池にも発見がありますからね。初回もあんなでかいスッポンがいるなんて想像もつかなかったですし、今回もニホンイシガメを探しに行ったはずが、巨大なシジミみたいな貝、ヌマガイが出てきて……。あ、これも気づいちゃったんですが、亀って、速いんですよ。海の中は速いイメージあると思うんですけど、土の中もめっちゃ速い。地味な情報ですが(笑)。

あとは、池にはその地域の生活の蓄積が出てくるから、周囲の人の関わりが結構見えてくるんです。日比谷公園からは佐賀藩鍋島家の家紋の入った瓦が出ましたが、日比谷公園には江戸時代に武家屋敷があり、大戦の時に取り壊されて日本軍の訓練所になったそうです。江戸時代に有名な大名たちの武家屋敷が軒を連ねていた。明治時代に入って陸軍の練兵場になり、屋敷が壊されたときに、家の一部が残土の中に入って眠っていたんじゃないかという。

価値があるかどうかというのは別にして、歴史のロマンを感じますよね。「あそこにずっとあったんだな」と思うだけでもワクワクします。池の中にずっといたものは、今の人にいろいろ教えてくれているような気がして、そこがやはりワクワクするんでしょうね。池や沼に言い伝えとかあるじゃないですか。そのうちカッパが出て来るんじゃないかな?

――前回は伊集院光さんが立候補されましたが、今回は芦田愛菜さんが出演を"逆依頼"されたそうで。

芦田愛菜ちゃんは、ドラマのプロデューサー経由で「ぜひ池の水を抜かせてほしい」というお話をきいたんですよ。ロケでは楽しそうで、ふつうの中学生のようでした。初回のときには、狩野恵里アナが「行かせてください」と言ってきたんですが、ちょうど『ゆうがたサテライト』が始まるときだったので、「あなたは報道に集中してください」と丁重にお断りしました(笑)。

ついこないだは局の正面入り口で、大江麻理子キャスターに「『池の水』面白いですね〜。チャンスがあれば行かせていただきたいです」と言われまして、みんなで行ってもらうのもいいかもしれないですね。もしよかったら池上彰さんと一緒に、「池の水を抜けば日本がわかる」みたいな(笑)。

――これは今後、第5弾を期待しても良さそうですか?

今後もやっていく予定です。抜ける限り、抜いていきます。抜く池は大量にありますので。なんだか使命感に変わってきて、道を歩いていても池の色を見て「やらなきゃな」と思うようになりました。息子も池の様子を見て「お父さん、これやったほうがいいんじゃないの?」と言ってきます(笑)。

本来、地方自治体の予算を使ってやるべきことなのかもしれないけれど、きれいにする理由が明確に見つからない場合もあるんですよね。今すぐきれいにしようとはならないと思うんです。本当に生活用水として池が使われていた時代は、周りの人が遊んだり、野菜を洗ったり距離感があったと思うのですが、目的が変わってきて、池が生活に必要なくなってしまった。池との距離感も変わって、外来種を放したり、バイクを捨てたりするから、誰かが掃除しなきゃいけないけど、予算を組んでいないとできない。でも、どうにかしたいとは思っているんですよ。

この番組を見て立候補してくださった習志野市長も、予算は出せないけど、「自分たちでやる」と労働力は出してくれました。今後、地方自治体が予算組みをするようになったら、この番組はなくなるかもしれません(笑)。もしそうなったら、実際の予算を使って池の水を抜いているところを、僕らが取材に行きたいですね。

○日曜ビックバラエティ『緊急SOS!超巨大怪物が出た!出た!池の水ぜんぶ抜く大作戦4』

大好評『池の水ぜんぶ抜く』第4弾。東京都千代田区の日比谷公園、神奈川県座間市の立野台公園、千葉県千葉市若葉区の泉自然公園の水を抜く。歴史的お宝や、カルガモを襲った謎の生物、巨大貝などが登場。小島瑠璃子、芦田愛菜が出演し、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)、田中直樹(ココリコ)がMCを務めつつ水抜きにも参加する。(9月3日19:54〜)

また、放送前日の2日にはこれまでの傑作選として『緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦 超巨大怪物が出た!ベスト3』(12:30〜14:24)を放送。「ココリコ田中直樹が捕獲…アリゲーターガー!」「ロンブー淳が捕獲…巨大スッポン!」「伊集院光が捕獲…ソウギョ!」の3本が放送される。