メジャートップクラスの奪三振率を誇る上原浩治【写真:編集部】

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メジャートップクラスの奪三振率、「ウエハラは稀な投手の一人」

 レッドソックスからFAとなり、カブスカブスと1年450万ドル(約5億1800万円)で契約合意したことが報じられた上原浩治投手。42歳でシーズン開幕を迎える来季は世界一球団での活躍が期待されるが、米メディアは88マイル(約142キロ)前後の直球でメジャートップクラスの奪三振率を誇る右腕の投球を「絶えることのない驚きを生み出す」とあらためて絶賛している。

 来季はカブスのユニホームを着ることになる日本人右腕について「レッドソックスでのコウジ・ウエハラを振り返ってみよう」とのタイトルで特集記事を組んだのは米メディア「SBネーション」。上原がいかに希少な存在であるかを解説している。

 記事ではまず、「ブルペンから出てくる投手たちは95マイル(約153キロ)以上の球を投げているように思える。厳密に言えば真実とは言い難いが、リリーフ投手における球速の上昇は明白である」と指摘。平均球速が07年の91.4マイル(約147.3キロ)から93マイル(約150キロ)まで上がったというデータを紹介した上で「球速が1マイル上がっただけでも、打者を戸惑わせることになる」と言及している。救援投手にとって、球速が武器となることは確かだろう。

 そんな中、異彩を放っているのが上原だ。「リリーフ投手の球速が上昇を続ける中、速球を投げることなく生き残っている投手もいる。88マイル前後を投げるコウジ・ウエハラは、デリン・ベタンセスらと張り合うことのできる球を持っている。ウエハラは強力な速球なしに、三振を奪うことができる」。100マイル(約161キロ)前後の直球を武器に打者を抑え込むヤンキースのリリーバー、デリン・ベタンセスを比較対象にして、上原の凄さを説明している。

「球速の遅い投手は多数の打者から三振を奪うことはできない。しかし、ウエハラはそれができる稀な投手の一人である。さらにウエハラを特徴づけているのは、四球を多く出さずに三振を奪えることである。2013年から2016年、ウエハラの与四球率は1.47を記録している。この間、ウエハラの与四球率は5位に位置する。 彼のコントロールと三振を奪う能力は優れている。レッドソックス時代、ウエハラは球界で最高の奪三振率を誇る投手のひとりだった」

高い奪三振率で世界一に貢献、「ボストンで彼がすぐに忘れ去られことはない」

 今季、上原は9イニングあたりで12.06個の奪三振を記録。これは40イニング以上を投げた投手ではリーグ9位の数字だった。上原より上位にいるのは速球派のリリーバーばかりだ。先発を務めていたオリオールズ時代の09年を含めても、キャリア通算の奪三振率は10.73と優秀な数字を誇る。

「ウエハラのファストボールは悪いわけではない。90マイル(約145キロ)に満たない投手がこれほど多くの三振を奪うことができるという、絶えることのない驚きを生み出した。PITCHf/x(投球速度や投球軌道を追跡するスピード測定器システム)の時代が始まってから、ファストボールおける三振率においてウエハラは20位(最低1000投球)に位置している。カテゴリーでトップ50位入りを果たしているリリーフ投手としては唯一、90マイルを下回っている」

 切れ味抜群の直球が相手にとって脅威となっていることは確か。ただ、相手打者にとって厄介なのは、それだけではない。記事では、「また彼は、リリーフ投手として最も優れたスプリットを投げるひとりだ」と絶賛。「打者のバランスを崩すため、ウエハラはいつでもこの2球種を使い分けることができる」としている。

 レッドソックス1年目の2013年、上原はシーズン途中からクローザーを任されると、73試合登板で4勝1敗21セーブ13ホールド、防御率1.09という圧倒的な成績を残した。ポストシーズンでもリーグ優勝決定シリーズでMVPに輝く活躍を見せ、世界一に大きく貢献。今季は、トレードで加入したクレイグ・キンブレル投手にクローザーの座を譲ったが、シーズン終盤はセットアッパーとして躍動した。その功績が色褪せることはない。

「クレイグ・キンブレルに仕事を譲ったが、ウエハラは2013年のレッドソックスの原動力だった。そして、ワールドシリーズの象徴だった。ボストンにおいて、彼がすぐに忘れ去られことはないだろう」

 痛快な投球でファンの心をガッチリと掴み、フェンウェイ・パークで大歓声を浴び続けた上原。驚異の直球で、新天地でも光を放ち続けてくれそうだ。