「オアシス@akiba」の利用する和服姿の女性。26日、東京都千代田区の有料公衆トイレ「オアシス@akiba」前で。(撮影:佐藤学)

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東京・秋葉原に千代田区初の区営有料トイレ「オアシス@akiba」がオープンして25日で10日が過ぎた。当初見込んでいた1日80─100人の利用客は、平日で200人強、週末は約400人と予想を大幅に上回った。「有料」「有人」「情報」というキーワードに象徴されたこの新しいコンセプトのトイレは、アキバの地に根付くために上々のスタートを切った。

 「女性の視点を重視して設計を依頼したのですが、驚いたことに利用者の7割は男性でした」と言いながら満面の笑みを浮かべるのは、千代田区・環境土木部道路公園課の土本惠介課長。利用者の多くはサラリーマンで、平日は通勤前の時間帯午前8─9時、昼食前後、帰宅時間が始まる夕方からと利用状況の波が移り変わる。週末は、若い人から年配者まで買い物客を中心に幅広い利用者が訪れているという。

 利用者の口に出る言葉は「広くて、きれい!」。その言葉通り、「オアシス@akiba」はトイレをイメージさせないガラスとコンクリート素材を表面に使ったモダンな作り。内部は、約5メートルという天井の高さ、約15センチのコンクリートの壁で囲まれた個室ブースが独立して配置されている。

 「こうした設計を可能にしたのは、管理者が常駐するからです」と設計事務所「ゴンドラ」の小林純子さんは説明する。100円という使用料には、若い男女のスタッフ1組が常駐することで、商業施設やホテルなどよりさらに高い「安心」と「快適さ」を保障するという価値が含まれる。スタッフが洗面所から個人ブースまで随時、点検・清掃することで、利用者は常に清掃後の使用感が味わえ、10日間での利用者のコメントからも、有料に対する批判的なコメントはわずかで、ほとんどが肯定的な感想だ。

 今後の課題について、土本課長は「今までの公衆トイレのイメージを壊したわけですから、広告の場として企業がこの場所の価値を認識し、協力に乗り出してほしい」と期待に胸をふくらませる。そこには、まったく接点がなかった公衆トイレと企業広告を結び、情報発信源として利用できるこのトイレの管理コストを圧縮したいという智恵と工夫が隠れている。

 “公衆トイレはその地域の文化水準を表す顔だ”という思い入れの上に、この有料トイレを立ち上げた土本課長であるが、この10日間に、トイレットペーパーを散らかしたり、まるめてトイレに流し詰まらせるというマナー違反の利用者もあったが、常駐スタッフの管理体制で即対処したという。【了】