By Lucy Orloski

アメリカ人の40%は呑酸(どんさん)などを伴う胃食道逆流症を経験しています。主な症状としては胸焼け・消化不良・逆流徴候などがあり、加えて後鼻漏(こうびろう)・しゃがれ声・嚥下障害・慢性的な咳払いおよびぜんそくを伴う場合があります。日本でも胸焼け・呑酸(どんさん)を引き起こす逆流性食道炎に悩まされる人が増えていますが、その原因が「夕食の時間」に関係していることがわかっています。

The Dangers of Eating Late at Night - NYTimes.com

http://www.nytimes.com/2014/10/26/opinion/sunday/the-dangers-of-eating-late-at-night.html

ここ数十年で急速に増加している胃食道逆流症の患者数は、1970年台から500%もの増加を見せており、アメリカにおける胃食道逆流症の治療薬の取引額は1年あたり130億ドル(約1兆4000億円)を超えているとのこと。2014年に発表されたデンマークの研究によると、逆流性食道炎などの治療に用いられるプロトンポンプ阻害薬にはガンの予防効果はなく、長期的な利用が食道がんリスクの上昇に関係していることがわかっています。



By Holly Lay

胃食道逆流症の原因の1つは飲み物や加工食品に含まれる脂肪や糖分の取り過ぎと言われていますが、これまであまり重要視されていなかった「遅い夕食時刻」が大きな原因の1つになっていることがわかっています。ニューヨークで胃食道逆流症治療を専門とするジェイミー・A・コーフマン医師は、20年ほど前から胃食道逆流症患者たちの夕食の時間が徐々に遅くなっていることに気付いていたとのこと。

典型的な例は毎日23時ごろに職場のレストランを後にして、帰宅後に夕食をとってから眠る、という生活習慣を持っていたレストランの店主。後鼻漏・副鼻腔疾患・嗄声(させい)・胸焼け・慢性的なせきの症状を訴えていましたが、有効な治療法や治療薬が見つけられなかったとのこと。コーフマン医師は店主に対して「必ず19時に夕食を食べて、仕事の後は何も食べてはいけない」とアドバイスしたところ、生活習慣を変えただけで、6週間以内に逆流の症候は収まったということです。

別の患者も同様に、昼食はサンドイッチのみで夕食の時間は遅めという習慣を持っていましたが、夕食以外の食事が少ないため、食べ過ぎてしまうという傾向にありました。たくさん夕食を食べた後にソファでTVを見たり、寝転んでしまうため、満腹の胃から酸が逆流しやすくなってしまい、胃食道逆流症を発症しやすくなってしまうのです。また、健康な人の胃なら食物が空になるまで数時間ほどですが、高脂肪食品は消化をさらに遅くする作用があるため、食後のデザートや就寝前のスナックも逆流を促す原因となってしまいます。



By Erroll Ozgencil

このようにコーフマン医師は経験的に遅い夕食が胃食道逆流症を引き起こしていると考えており、胃食道逆流症を患っている人は「20時までに夕食をとること」「朝食・夕食をとること」「ミント系飲料・チョコレート・ジュース・アルコールを控えること」「就寝は食後から最低3時間を空けること」といった食事時間・食生活をの変更を推薦しています。症状が改善されれば、余分な投薬を摂取しなくても済むようになることから、食道がんリスクも抑えることができるようになるというわけです。