おしりがいっぱい! 元気いっぱい明るさいっぱいのハイテンションSF美少女アクション『ビビッドレッド・オペレーション』は、作り手のたくさんの「好きなもの」を詰め込んだボリューム満点のアニメ。欲望いっぱいに溢れた作りは、おいしいものオンパレード。

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おしりだ!
おしりがしゃべってる!
たいてい映画とかだとしゃべるシーンは顔がこちらに向いているか、あるいは後ろ姿で語りかけているかなのに、このアニメ、ケツがしゃべってる!

アニメ『ビビッドレッド・オペレーション』は、過剰なまでに股間にこだわった作品。
と言っても、『ストライクウィッチーズ』シリーズをご存知の人には「股監督ですから」といわれることでしょう。
「股監督」とは、監督高村和宏のアダ名。『ストライクウィッチーズ』では少女たちがパンツで飛び回る異常な様子に話題騒然。内容はがっちりしたものでしたが、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」の迷言が一世を風靡しました。
まあ、『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』の鶴巻和哉はオフィシャルファンブックで「高村君。パンツじゃないって言われても、やっぱり、それはパンツだよ」と突っ込んでいました。
パンツですよ。

そんな高村監督の新作が『ビビッドレッド・オペレーション』。
股監督の新作ですもの、股間が、女の子の股間がくるはず! と多くのファンが別の意味で期待していました。
答え応じるように、第一話冒頭では、少女の股の間から日の出を見るという、こだわりの演出を見せてくれました。通称「尻日の出」。
その後もなぜかケツアップでしゃべっていたり、おしりから顔へとカメラが動いたり、とことんこだわりを見せています。すごい尻率です。
「これだと王道熱血ドラマでも女性ついてこないんじゃないか」という声もありますし、その通りだと思います。
でもこの作品から尻を抜くなんてありえない。隙さえあえれば……いや、隙がなくても股間出てくるくらいです。

でもこの作品、『ストライクウィッチーズ』ほどの突き抜け感はないです。
十分突き抜けてるじゃん!って言われそうですが、比較するとそうでもないのです。
パンツじゃないパンツを期待してみても、パンツは出て来ません。足にストライカーユニットをはめてミリタリマニア大喜びということもないです。
まあ、学校の制服が女の子だけ上着+ホットパンツってのが「意外と普通」に見えている時点で、『ストライクウィッチーズ』に毒されすぎている感じもします。おかしいよね。
でもあのトンデモが好きだった人には物足りないんじゃないか、とも思います。

けれど面白い。
非常にベーシックで王道な作りなんです。
謎の巨大生物(?)がやってきて、それらから世界を守るために少女たちに運命が託される。
魔法は使いません。すべて科学力で解決します。
ヒロイン達には変身シーンがあるのですが、それは科学スーツ。言うなればアイアンマンと同じ。
メカニカルなスーツが体を覆うのに、覆った瞬間ヒラヒラフリフリ鼓笛隊風になるのには驚きました。
SFでありつつ、もっとファンタジー的ななにかです。

女の子たちが友情の力で何かと戦う。
ん?
この雰囲気、どこかで、見たぞ。これは……。
あっ、『プリキュア』だ。
女の子たちの戦闘コスチュームは、女の子が見たら喜びそうなデザイン。意外にも過激さは少なく、下にスパッツも履いています。
いいね、スパッツいいよ。これなら自由に飛び回っても平気だし。
最初、レッドの一色あかね、ブルーの二葉あおいが参戦。この二人は幼馴染の仲良しです。
それなら二人が選ばれて変身するのも納得できるよねー、と思っていたら、その後転校して仲良くなったばかりの三枝わかばが、あっさりOKもらってグリーンになります。
え、そんなん適当なの!?
いいようです。ちなみにスーツを作ったのはおじいちゃん。「示現エンジン」と呼ばれる世界中に普及した夢のエネルギーをスーツに使って、少女たちに戦わせて謎の怪物達を倒していきます。
仕組みとしては『エヴァ』のヤシマ作戦、といえばわかりやすいでしょうか。
まあ、おじいちゃんの趣味のおかげでいいスパッツお尻が見られます。

展開は、これ日曜の朝にやってもいいよね?ってくらいまっすぐ。
しかし、股間描写とか、合体変身するときにキスが必要とか、このへん間違いなく大人むけ。
よく見ると、出動する軍隊や兵器の描写がとてつもなくリアル。現存しているものにそっくりでよくできているあたりもマニア心をくすぐります。
お尻とのコントラストがいいですね。

そして、「アローン」と呼ばれる謎の敵が出てくるのですが、もうこれは見るからに『エヴァンゲリオン』リスペクト。使徒です。
まんまではないんですが、その存在感や強さ、脅威の度合いは非常にそっくり。
なんせ、こんごう護衛艦やアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦がレーザー一発でざくざく破壊されます。なんという豪華なやられ役。何人亡くなったのか。
でも確かに、「あるある」と思いながらも、気持ちいい。こういうの見たかった。
他にも『リリカルなのは』や『勇者シリーズ』などのノリを、パロディではなく要素としてみっちり詰め込んでいます。
そして、いいお尻がキリッと画面を引き締めます。

元気な女の子達。戦闘コスチューム。尻。科学。ミリタリー。巨大な敵。怪しい美少女。尻。女の子達の淡い友情。小動物。ハンマー。謎制服。空中飛行。尻。
「こういうのが見たい」というのを貪欲に吸収しまくった作品なんです。
最初は、展開の速さと唐突さにびっくりするかもしれません。
しかしこれが幕の内弁当だと考えると、一気に楽しめるようになります。
唐揚げ、ハンバーグ、エビフライ、卵焼き。美味しいものをよりどりみどりに詰め込むのが幕の内弁当。あれもこれも、という食べ方がおいしい。
まさにこれで、監督の好きなものがちょっとずつ、何種類も入っている。
好きなもの、楽しいもの、燃えるものが詰まった高村ワールド。『ストライクウィッチーズ』が好きなものが尖った、こってり「とんかつ定食」だとしたら、それをさらにこだわってバランスよく配分した幕の内弁当が、この作品。
極端な話、全部いっぺんに食べる(見る)のは無理です。
好きなところから入っていって、その上で楽しんでいくのがベストだと思います。
ぼくはお尻が見たくて見始めました。

話によると、どうやら五話から物語が動き始める模様。
現在は4話で黄色にあたる四宮ひまわりが参戦するところ。まだ戦士がそろっていません。
一方、変身せずにアローンを強化できる謎の少女黒騎れいについても何も語られていません。
いいね! 謎少女いい! ほむほむみたい!
ぼくも実際、メカギミック、あと百合っぽさに惹かれていて、全体像は見えません。というか、まだ全体像描かれていません。いろいろなものの「理由」がわからない。これからです。
ただ、これだけ興味のフックがあるなら、好きなところをちびちびかじって、物語が展開するのを見ていくことのできるアニメだとも思うのです。
なんせ動きが異常にキレイ。日本の3D技術進歩したなーとしみじみ感じます。
そしてお尻もプリプリです。

ぼくは褒め言葉として「欲望のアニメ」と呼ぼうと思います。
好きなものをこれでもかと詰め込んだ、おもちゃ箱です。
ある部分に関しては割りと投げっぱなしで、視聴者ツッコミ待ちなところも多い。ハイテンションで押し切っている力技っぷりもあります。「そういうもんだ」と開き直れると楽しめます。
ただ、蓋が閉まらないくらいぎちぎちに詰め込むと脂っこいので、そこは引き算。
キスでの合体シーンが唇同士じゃなくておでこに、とかが、抑えた部分なのだと思います。
お尻に関しては一切の妥協がありません。日常的にブルマ着用ってのはいいですね。

キャラの造形も、欲望を感じます。元気少女に黒髪お嬢様に武道っ子に引きこもり。
何と言っても、ヒロインあかねの妹、もものかわいさがちょっと異常。
スタッフお気に入られのような気がします。
個人的には「わんこ」と呼ばれる浮遊バイクや新聞紙の科学的な面白み、ビビッドシステムの具体的説明、軍隊との協力攻勢なんかがもっと見たいところですが、そう感じるのも幕の内弁当だから。ハンバーグ入っているのを見て「たくさん食べたい!」と思う感覚にそっくり。
今は、まだ弁当箱に詰まってなくて、素材が並べられた段階、でもあります。
テーマ一点突破したほうが面白い今のアニメ界隈で、この作品の詰め込み具合、ならし具合、王道な作りがどう作用するか、今後のストーリー展開に期待したいところです。
それ以上に股監督のさらなる股間描写に期待したいところです。


『ビビッドレッド・オペレーション BD 1』

(たまごまご)