100回の練習より1回の本番!

気がつけば発足2年目に突入していたザックJAPAN。しかし、2年目を迎えるときここまで上々の成績を残しているとは、想像できなかったのではないでしょうか。パラグアイ、アルゼンチン、韓国、オーストラリアら決して簡単ではない相手との対戦がありながら未だ無敗。「無敗のアジア王者」とは何とも心地よい響きです。

ハッキリ言って、2年目を無敗で迎えると予想した人はゼロでしょう。震災の影響により南米選手権を参加辞退するところまで含めて予想していた人がいるなら、それはもう予言者のレベル。サッカーなんて見ている場合じゃありませんので、世界情勢やら経済不安について的確なアドバイスをお願いしたいところ。というくらい、出来すぎだったこの1年を思えば、ここでベトナムに煮え切らない試合をするのも新鮮で結構な話です。

ワールドカップ、アジアカップを通じて日本代表はある程度やれるメドが立っている状態。しかし、それは固定されたベストメンバーでならの話です。サッカーには主力選手の離脱、年齢による衰え、思わぬ不調がつきもの。常にベストで戦える保証はどこにもありません。今この順調な時期だからこそ、二の矢・三の矢を用意することができるというもの。

ザックJAPANでは初スタメンとなるメンバーや、しばらくチャンスをもらえていなかった選手。こうした選手たちに実戦の機会を与え、いつ誰が欠けてもスムーズに補える状態にするマネジメント…やるべきことを適切な時期に行なったのが今回のベトナム戦。練習で同じことをやっても、なかなか身につきませんし、何より「練習」での実績は信頼することができません。予選という「本番」でこそ、結果が求められる試合でこそ、新たな戦力・新たなシステムへの信頼が積み上げられるのです。

まして、欧州からはるばるやってくる選手と合わせる機会は、本番でもなければ作りにくいもの。「日本への長距離移動で壊れた」とか所属クラブの監督に言われかねないですからね。「練習は本番のように、本番は練習のように」を圧縮した「本番で練習」、ザックJAPANはコレを実践しているのです。緊張感のあるいい練習ができたうえに、結果として勝ったのですから何の問題もありませんね。

と、「1-0で日本が勝利」という速報だけを見て書いた前置きの余裕がどこまでつづくのか、7日の「日本VSベトナム戦」からチェックしていきましょう。



◆久々に見たグダグダの試合は、岡田JAPANを彷彿とさせる!


しがないサラリーマン稼業などに追われ、試合を見れずに帰宅した深夜。試合の映像を見ながら気づいたことは「あ、予選じゃなかった」ということ。言われてみれば、ベトナムは3次予選に進出していません。本番のタジキスタン戦は週明け11日ではありませんか。つまり今日は「本番で練習」ではなく「練習で練習」だったのです。一気に「すんごいダレた試合になりそう」という不安が立ち込め、前置きの余裕は早くも霧散。

入場前和やかに談笑する選手たち、国歌独唱の整列時にスタンドの知り合いを見つけて手を振る香川、ベテラン特有の自分勝手アレンジで君が代を熱唱する川中美幸さんなど、会場はいたってリラックスムード。スタンドにはなでしこJAPAN・澤穂希さんが観戦に訪れ、アディダス社の企画で宮間あやさんがツイッター実況をするなど、男女一体となっての盛り上げ企画も敢行されました。

しかし日本には、そんなリラックスムードの試合にこそ強い男が、凱旋(じゃない)帰国を果たしていたのです。しばらく見ないでいる間に、どんなプレーヤーだったかちょっと忘れられ始めた僕らの槙野智章さん。ケルンからわざわざやってきた男が、THE・練習試合を盛り上げるために大暴れしてくれたのです…!

↓ベトナムを意識してちょっと床屋チックな髪型に仕上げてきた槙野さん!


ドルトムント:「いまいましい代表戦だ」
インテル:「どこで頑張るのが本当に大事かは忘れるなよ」
レスター:「怪我に気をつけろよ、ホントに」
リールセ:「大変遺憾だ…」
アウグスブルク:「できるだけ早く帰ってきてね」
VVVフェンロ:「1人だけ?1人だけならいいか」
ヴォルフスブルク:「行きたいなら別にいいけど…」
ケルン:「もちろん行っていいよ、ぜひ行きなさい!頑張ってこーい!」
ディジョン:「え、自分行かんの?見るだけ見てきたら?嫁の実家にも顔出さんと」


THE・練習試合ということで、フォーメーションも非常に斬新。ザックの代名詞にされている3-4-3の布陣を敷いただけでなく、槙野-今野-伊野波という3バック、長谷部とコンビを組む細貝、長友&駒野の両サイドハーフ、3トップの一角に藤本、GK西川…と最近出ていない選手の起用や、慣れない位置での起用のオンパレード。いっぺんにいろいろ試す感じとなり、普段とは完全に別チームとなっての試合開始。

そんな中、無駄に突出した存在感を見せた槙野さん。3バックの左に入った槙野さんは、「このシステム、自分のロングフィードがカギになる(キリッ)」とテンションを上げつつ、守備に攻撃にいちいち顔を出してきます。前半8分にはFKに飛び込むもファウル。前半19分にもCKからヘッドで合わせるも、ボールが高すぎて及ばず。前半21分もCKに飛び込み、前半36分には長友のクロスにフリーで飛び込むなど、セットプレーはほぼ槙野さんの独擅場に。

↓気合い漲る槙野さんの顔が、逆にちょっとフザけてる感!


「ケルンでは顔で損してる疑惑」が拭い去れないwww

気合い入れるほどに嘘っぽくなるw


↓そんな中、槙野さんとは無関係なところから日本先制!


この試合、再三いい絡みを見せていた藤本の突破から、李のゴール!

アジアカップでは周囲から浮いていた男が、ザックJAPANにフィットした!


さぁ、日本が先制したことで、ますますいろいろとやりやすい状況になりました。長友OUT栗原IN、伊野波OUT阿部IN、長谷部OUT中村IN、香川OUT原口INと後半頭で一挙に4人を入れ替えた交代に、指揮官からの「いろいろ好きにやってみて」というメッセージを感じたか、後半に入ってますます意気上がる槙野さん。A代表初出場となる原口の頭をポンポン叩き、「頑張れよ」という先輩の優しさを見せた場面では、「お前もな!」という全国からのツッコミも飛び出します。

日本代表が4-2-3-1のフォーメーションに戻し、左SBに入った槙野さんは完全に攻撃モードにシフトチェンジ。DFラインで孤立する今野が後半開始早々にピンチを作った際も、ひたすらサイドに張って「いいから、早く、俺に、ボール」という無言のアピール。さらに後半6分には、相手ゴール前で得たFKを槙野さん自らが蹴るリラックス・セット・プレーで、場内をドッと沸かせます。

↓槙野さん得意のFKが相手ゴールを無駄に脅かす!


ゴール前で李が倒される

藤本・香川らが早いリスタートを試みるも、寄ってきた槙野さんは「待て待て」と声掛け

実況・解説は「蹴るのは憲剛か藤本だな」と予想

しかし槙野さんはボールに密着し、藤本に再三「蹴りたい」と耳打ち

そのギラギラ感に引いちゃったか、憲剛は静かに撤退

スタスタ寄ってきた李が藤本・槙野会談に割って入ろうとするも追い返される

ベトナム側から見えない角度で密談をつづける藤本・槙野

最終的にはジャンケンでどっちが蹴るかを決めることに

槙野さん、見事にジャンケン勝利!


↓藤本:「グー!」 槙野:「パー!」
http://www.sanspo.com/soccer/photos/111008/scc1110080504007-p1.htm

FK選抜ジャンケン大会wwwwww

こんなの絶対「本番」のオプションじゃないwwwww


そして、この日最大の見せ場となったのが後半20分。日本がハーフナー・マイク投入でトドメを刺そうと考えていた矢先。左サイド端っこでやおら転倒した槙野さん。まったく気づかずに、あるいは完全に無視して攻撃をつづけた日本代表ですが、ピッチサイドで「うぉー」「あぁー」「ぐぇー」と苦しむ槙野さんを無視しつづけるのにも限界がありました。

まさかの足ツリ芸。槙野さん一流の「張り切りすぎて足を痛める」芸により、ピッチサイドまで出ていたハーフナー・マイクはベンチにUターン。予定外の出番がやってきた吉田麻也は半笑い。日本代表が誰も助けに行かないことに業を煮やし、何故かベトナム選手が槙野さんを献身的に介護するという不思議な光景。槙野さんは吉本新喜劇の「ホンワカパッパ」音を観衆の脳内に響かせながら、担架でカッコよく去っていったのでした…。

↓ケルンからわざわざ「槙野新喜劇」をやりにきた顔www
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2011/10/08/gazo/G20111008001779600.html


ハーフナー:「マキノ〜!お前のせいで出れなかったぞ」
吉田:「ありがとうマキノ」
その他:「何だお前」
本人:「大したことないです。次も行けます!」

そりゃケルンも使わんわwwwwwwww

「何だお前」という感想が的確すぎるwwww


結局、その後はさしたる見せ場もなく、日本代表は1-0で勝利。ザッケローニ監督のイライラした様子だけが目立つ一戦となりました。しかし、こうした試合を乗り越えてこそ強化も進むというもの。「慣れないシステム」「不慣れな選手」は慣らすしかないのです。2014年を見据えるなら、今こそそうしたグダグダを体験しておくべき時期。2010年初頭までグダグダしていた岡田JAPANがワールドカップベスト16なら、今グダグダしているザックJAPANはワールドカップベスト4くらいのペースのはず。期待して見守りたいものですね。


槙野さんは、自分のペースでゆっくり成長していってくださいね!