元外交官で作家の佐藤優氏

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 元外交官で作家の佐藤優氏は2011年7月15日、ニコニコ生放送「憂国の哲学〜この危機をどう乗り切るか〜」で、今の日本には「ニヒリズム(虚無主義)が蔓延している」と語り、その危険性について説いた。

 外交官時代、日露外交のキーマンだったとされる佐藤氏は、経験と知識を活かした多数の著作を持つ。その知見を求めた(新聞・テレビなどの)政治部記者が、佐藤氏のもとをよく訪れるという。番組の中で佐藤氏は、「今、僕は政治部記者に、ものすごく問題があると思う」と語った。佐藤氏によると、政治部記者は「次の総理は誰になったら日本が良くなると思うか」というアンケートをしてくるそうだ。佐藤氏は答えない代わりに「この危機は構造的な危機だ。誰が(総理に)なっても新鮮味があるのは2週間だ。その後、深刻な問題になる」と返す。すると、政治部記者は「佐藤さん、僕もそう思っているんですよ」と返答してくるという。佐藤氏は「これ、良くないですよ」と話し、

「だって(政治部記者自身が)意味がないと思う(次の総理は誰になったら日本が良くなるか? のような)特集を組んで、それに対して有識者は『どうせ良くならないな』と思いながらも、政治家の名前を適当に出している。それを見た読者は白けた感じになる」

とし、さらに

「政治家は、結構熱い思いで永田町でやっている。(一方の)官僚は出世にプラスになるかマイナスになるかよく分からないから様子見をしようと(している)。そういう様子を見て、政治部記者というのはものすごいニヒリズム、白けた感じになってやっている。これによってニヒリズムが(日本全体に)蔓延していることが、僕はすごく恐い」

と、マスメディアを介して広がるニヒリズムの流れを説明した。

■ニヒリズムの蔓延がもたらした「歴史上のある結果」

 また、博覧強記の佐藤氏は

「1925年のこと。当時36歳の青年政治家が、ある本を出した。その中でこう言っている、『今の政治の問題は何だ。(それは)責任感の欠如だ。間違えた政策をとった場合に、内閣が総辞職をすれば責任が取れるのか。間違えた政策に対する責任は誰が負うのだ。あるいは、連立を組み替えれば責任を取れるのか。解散総選挙をしたからといって、国民に対して責任を取ったことになるのか。おかしな政策をしたってことはどうなるのか』と。しかも『最近の政治情勢を見ていると、首相が小物になっている。だから短期政権になる。首相が小物になるとスキャンダル政治が起きる』と言うのだ。どうしてかというと『スキャンダルでその政治家が外れ、次の人間が入り、長期間首相に居座ると神聖同盟、聖なる同盟に違反したと言って全員で引きずり降ろそうとする。その結果国政が混乱して国民に災いがあって国家が弱くなる。この様子でいいのか』と」

と話り、さらに

「(青年は本の中で)こう言う『しかし、皆さん、ここでよく考えてみよう。このだらしのない首相というのは、われわれ国民一人ひとりが、だらしがないからではないか。100人のだらしのない人から選んだ代表は、だらしがない人だ。100人の愚か者から選んだ人間は、愚か者だ。そして100人の卑怯者から選んだ人間は、卑怯者だ』と。『だから、議会制民主主義では国民は幸せにできない。重要なのはリーダーシップ。独裁を時には行わなければいけない』と彼は言った。この人はアドルフ・ヒトラーだ」

と『わが闘争』の内容を引き合いに出して、歴史上でニヒリズムが蔓延した結果について語り、その危険性を指摘した。

(山下真史)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 佐藤優氏のニヒリズムについての発言から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56338976?po=newslivedoor&ref=news#16:30