■  イタリアでの評価は?

南アフリカW杯後にFC東京からイタリアのチェゼーナに移籍したDF長友佑都。古巣のFC東京はJ2に降格してしまったが、自身は、世界有数のメガクラブであるインテルへの移籍を果たした。移籍してからしばらくはベンチスタートが続いていたが、ここ最近は「先発出場」が続いており、インテルへの完全移籍も確実視されている。

となると、DF長友がイタリアでいったいどんな評価を受けているのか、日本人としては非常に気になるところなので、調べてみた。参考にしたのは、イタリアのガゼッタ・デロ・スポルトの採点である。10点満点で、平均的なプレーをした選手には「5.5」あるいは「6.0」の点数が与えられる。

「6.5」というと、両チームを合わせて数名(2 or 3名)程度のレベルで、その試合のMOMに選ばれる可能性も出てくる点数で、「7.0」になると、その節に行われる全ての試合(=セリエAでは10試合)の中から選ぶベストイレブンに選出されるレベルであり、「7.5」になると、その節のベストプレーヤーに選ばれても不思議ではない活躍で、「8.0」となると、年間でも数えるほどしか出ない貴重な数字である。

ドイツのキッカーの採点は、ホームページ上で見やすくまとまっているので、簡単に調べることができるが、イタリアのガゼッタの場合、まとまったものは見つからなかったので、探すのは大変だった。ケアレスミスで間違いもあるかもしれないが、仕方ないと割り切って作業を進めた。

■ 34節までの評価

とりあえず、セリエAの34節までの出場記録と採点をまとめると、以下のようになった。1月31日にインテルに移籍したので、それまでがチェゼーナでの成績で、それ以後がインテルでの成績となる。

眺めてみると、見事に「高評価の試合」が続いている。先日のラツィオ戦の評価が「7.5」で、イタリアに移籍してから「最高」だったことは、すでに報道されているが、チェゼーナ時代からコンスタントに「6.5」が与えられている。

チェゼーナ時代は「6.5」が最高であるが、出場した16試合のうち、8試合が「6.5」である。しかも、その8試合でチームは3勝5敗。ディフェンダーなので、チームが敗れた場合、失点に直接関わっていなくても、減点される傾向にある。そんな中で「6.5」を連発しているというのは驚きである。さらに、チェゼーナでの16試合で見ると、最高が「6.5」で、最低が「5.5」というのも凄いことである。16試合で、「5.5」か、「6.0」か、「6.5」しか与えられていないといことで、いかに安定していたかが分かる。


18月28日(土)ASローマA6.0先発フル出場
29月11日(土)ACミランH6.5先発フル出場
39月19日(日)レッチェH6.5先発フル出場
49月22日(水)カターニャA5.5先発フル出場
59月26日(日)ナポリH5.5先発フル出場
610月2日(土)ウディネーゼA6.0先発フル出場
710月17日(日)パルマH5.5先発フル出場
810月24日(日)キエーヴォA6.5先発フル出場
910月31日(日)サンプドリアH6.5先発フル出場
1011月7日(日)ユヴェントスA5.5先発フル出場
1111月10日(水)ラツィオH6.0先発フル出場
1211月13日(土)フィオレンティーナA6.5先発フル出場
1311月21日(日)パレルモH6.5先発フル出場
1411月28日(日)バーリA5.5先発フル出場
1512月5日(日)ボローニャH6.5先発フル出場
1712月18日(土)カリアリH6.5先発フル出場
181月6日(木)ブレシアA-欠場
191月9日(日)ジェノアH-欠場
201月16日(日)ASローマH-欠場
211月19日(水)インテルA-欠場
221月23日(日)ACミランA-欠場
231月30日(日)レッチェA-欠場
232月3日(木)バーリA-出場機会なし
242月6日(日)ASローマH6.0後半30分 in
252月13日(日)ユヴェントスA5.5後半27分 in
172月16日(水)フィオレンティーナA5.5後半26分 out
262月19日(土)カリアリH6.0先発フル出場
272月27日(日)サンプドリアA6.0先発フル出場
283月6日(日)ジェノアH6.5後半33分 in
293月11日(金)ブレシアA6.0後半33分 out
303月20日(日)レッチェH-出場機会なし
314月2日(土)ACミランA-出場機会なし
324月9日(土)キエーヴォH7.0先発フル出場
334月16日(土)パルマA5.0先発フル出場
344月23日(土)ラツィオH7.5先発フル出場


■ 平均は「6.10」

平均を取ると、チェゼーナ時代の16試合の平均が「6.09」で、インテルでの10試合の平均が「6.10」。合わせると、全26試合での平均は「6.10」となる。

この数字が、セリエAの選手の中で、どのくらいにランクされるのか調べるの大変なので、同じように10点満点で評価されるJリーグと比較してみると、2010年シーズンのサッカーダイジェストの平均点で「6.00」以上を与えられているのは、以下の「17人」だけ。全く同じ基準で採点しているわけではないので、参考程度の情報であるが、「平均で6.00以上」というのは、リーグでトップクラスの選手だけに与えられる評価であることが一般的である。


 FW 玉田圭司 (名古屋) → 6.19
 FW 前田遼一 (磐田) → 6.18
 FW 藤本淳吾 (清水) → 6.16 
 FW マルキーニョス (鹿島) → 6.04
 MF マルシオ・リシャルデス (新潟) → 6.35
 MF 家長昭博 (C大阪) → 6.21
 MF 明神智和 (G大阪) → 6.12
 MF 兵働昭弘 (清水) → 6.08
 MF マルチネス (C大阪) → 6.08
 MF 遠藤保仁 (G大阪) → 6.07
 MF 中村憲剛 (川崎F) → 6.07
 MF 本田拓也 (清水) → 6.05
 DF 田中マルクス闘莉王 (名古屋) → 6.16
 DF 茂庭照幸 (C大阪) → 6.04
 GK 楢崎正剛 (名古屋) → 6.07
 GK 西川周作 (広島) → 6.06
 GK 東口順昭 (新潟) → 6.06


最後に、ガゼッタ・デロ・スポルトでは「寸評」も書かれているので、主だったものを挙げてみる。イタリア人記者のセンスの良さが感じさせるものがある一方で、一部、センスの良さを感じさせないものもあって、なかなか面白い。


・猫のように走り、マンガのように効力を発揮した。寿司をむさぼるようにサイドを攻め上がった(1節)

・攻撃参加はたった1度だけ(5節)

・前半は全速力。後半はゆっくり失速(8節)

・相手のプレッシャーに屈せず、相手陣内に侵攻した(9節)

・(サイドで)主導権を握ったが、正確性を欠くプレーが何度か見られた。(11節)

・至るところに姿を現し、好印象を与えた(12節)

・日本の記者たちを喜ばせる出来。彼らは、(長友が)イタリアでも通用していると記事にしているだろう(15節)

・15分に渡り左サイドを掌握し、多少疲れの見えていたマルコ・カセッティを2度抜き去った(24節)

・最後の15分の段階で投入されたラスト・サムライ。 期待した人々を裏切る形になったが、おそらく長友への要求は大きすぎた。 持ち場である左サイドに入ったが、彼自身が試合に入ることができていなかった(25節)

・右サイドをスプリングのように飛び上がり、スパートした。運動量も豊富で、守備の面でも処理を誤ることはなかった(27節)

・小さなサムライは、インザーギのように姿を変え、反転してゴールを奪った。長友がボールに触れると、サン・シーロは沸き立った(28節)

・右サイドは彼のポジションではない。まるで満タンの水槽を背負っているかのように思えた。(33節)

・最初から最後までプッシュを続け、自分よりも背が高い相手に跳びはねた。 彼は今シーズンのインテルに欠けていた闘争心あふれるハングリー精神のシンボル(34節)


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