トヨタ「アル・ヴェル」が苦手な人たちの心理
どこか苦手に思っている人が少なくないクルマです(写真はトヨタのサイトより)
存在感を放っている「アルファード/ヴェルファイア」
高級車が大型セダン一辺倒だった時代は遠い過去。現在の高級車で大きな存在感を放っているのが、最大8人乗りで背の高い大型ミニバンだ。その中でも別格といえるのが、トヨタ自動車の「アルファード/ヴェルファイア」(アル・ヴェル)兄弟だろう。
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全長約4.9m×幅1.85m×高さ約1.9mの迫力ある車体。アルファードはもともと1995年に登場した後輪駆動・縦置きエンジン「グランビア」の流れをくみ、2002年から初代モデルが展開されている。プラットフォームをエスティマと共用して横置きエンジン・前輪駆動ベースに切り替え、車体の軽量化と広い室内を実現した。
2008年5月の2代目アルファードに設定された兄弟車がヴェルファイア。その後、2015年1月に2車種ともフルモデルチェンジ(全面改良)、直近は2017年12月に大幅なマイナーチェンジ(一部改良)を施した。
2車種はほぼ同じだがたとえばアルファードの場合、もっとも手頃なグレードでも車両本体価格は335万4480円。トヨタのサイトでカーナビとフロアカーペットという最低限の装備を付け、下取りなし、値引きなしで見積もりしてみると総額400万円近くになる。
最上級グレードのハイブリッド仕様ともなると同735万8040円というプライスタグが付けられており、これも上記と同条件で総額800万円に迫る。トヨタモデリスタが架装を担当する「ロイヤルラウンジ」は1500万円を超える価格となっており、まるでそこは走る応接室といった様相。今では企業の重役や政治家、芸能人なども愛用する名実ともに高級車といえる活躍を見せている。
元々押し出しの強い迫力のあるフロントマスクを持っていた同車ではあるが、2017年12月に行われたマイナーチェンジでさらにメッキを多用したデザインに変更されている。ここでネット上の熱狂的クルマ好きからは「トヨタのデザインは死んだ」「デザイナーはなにを考えているんだ」と辛辣な意見が散見されるようになっている。
否定的な意見が出ているが売り上げは好調だ
しかし、この意見に反して2018年1月の販売台数は両車合わせて6095台を記録。販売台数ランキングではアルファードとヴェルファイアは別でカウントされているが、合算すれば9位にランクインする数字で、トヨタのロングセラーである「カローラ」や2017年のSUV(スポーツ多目的車)トップの「C-HR」をも上回る台数なのである。
熱狂的なクルマ好きからは否定的な意見が出ているものの、数値で見てみれば明らかに販売は好調。しかも、売れ筋グレードは総額で500万円を超える車両であることから、やむを得ず購入している層がそれほどいるとも思えない。つまり、ハッキリ言って売れまくっている車種といえる。
ただ、アル・ヴェルに対してなぜか苦手に思っている他車ユーザーはきっと少なくないはずだ。筆者は3つの理由があると思っている。
まず、これは実体験でもあるのだが、熱狂的なクルマ好きになればなるほど人と同じであることを避けるようになり、オンリーワンを求め出してしまう。そして、一般的な売れ筋車種を否定し始めてしまうのだ。「あんなみんなが乗ってるクルマに乗ってなにが楽しいのか」というふうに。
そして徐々にその気持ちは人気車種へのアンチへと変貌していく。昔から強いものへの対抗意識としてアンチ巨人やアンチトヨタ、アンチフェラーリ(F1での)という感情が芽生えるのは多々あることではあるのだが、それが誰でも気軽に発言できるSNSが発達したことでより顕著にみられるようになってきた、というのが本当のところだろう。
2つ目の理由は、そのいかつすぎるフロントマスクだろう。フロントマスクのほとんどがグリルといっても過言ではないほどの顔つきは、例えドライバーにそんな意識がなくても威圧感を与えてしまい、「煽られた」と思ってしまうのだ。
また、一部のマナーの悪いドライバーがその威圧感を利用した荒い運転をすることで、その印象は鮮明に残ってしまう。高速道路やバイパスで無茶な追い越しをかけるアル・ヴェルをたまに見かけるが、その姿が大きいだけにとても目立つ。アル・ヴェル=マナーが悪いというイメージが植え付けられてしまうのではないか。なにせ月間販売台数で、日本で10本の指に入るほど売れている車種であるから、マナーの悪いドライバーが乗る確率も上がってしまうだろう。
妬みや劣等感が入り混じった感情から…
そして最後の理由は「あんな高いクルマに乗りやがって」という妬みや劣等感が占めているのではないだろうか。かく言う筆者も若いドライバーが高級車を乗っているところをみると「若いくせに」と思ってしまうことがないとは言い切れない。そんな妬みや劣等感が入り混じった感情から、アル・ヴェルを否定したい気持ちが生まれてしまうのかもしれない。
実はこれにはカラクリがあり、若いユーザーにも人気のあるアル・ヴェルは中古車市場でも引く手あまた。そのため、新車で購入したときに残価設定ローンを使用すると、3年後の残価率は60%前後(販売店によって変動はあるものの)、5年でも50%くらいととんでもない価値が残ってしまうのである。
つまり、車両本体価格が500万円のグレードを5年ローンで購入したとしても、実際にユーザーが支払う額は残価を残した250万円ということ。これはプリウスとほぼ同額であり、プリウスを買う程度の出費で購入できてしまうのだから、若いユーザーでもちょっと頑張れば新車のアル・ヴェルが買えてしまうのだ。
もちろん中には若くして仕事で成功してポーンと現金で購入している人や、親のすねをかじりまくって買ってもらっている人もいるかもしれないが、多くのアル・ヴェルユーザーは普通の人と同じくらいの給料をやりくりして購入しているわけで、まったくもって妬んだり嫉妬したりする必要はないということをお伝えしておきたい。