ユーベは11節からの26試合で25勝1分けという驚異的な強さを見せた。決定的な仕事を連発したディバラ(中央)が原動力に。(C)Getty Images

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 終わってみれば、ユベントスがスクデット5連覇を成し遂げ、ナポリとローマがチャンピオンズ・リーグ(CL)出場権、インテルとフィオレンティーナがヨーロッパリーグ(EL)出場権と、ほぼ下馬評通りの結末になった。しかしここに至るまでの展開は、ユーべが早々と独走体制を築いた過去数シーズンとはまったく異なり、意外なサプライズが連続する波乱に富んだものだった。
 
 最初の、そして最大のサプライズは、ほかでもないそのユベントスの信じられない出遅れだった。開幕からウディネーゼとローマに連敗し、その後も10月末までの10試合でわずか3勝。10月28日のサッスオーロ戦(10節)を0-1で落として首位から11ポイント差の12位となった時点では、スクデットはおろかCL出場権(3位以内)すら絶望的だと思われた。ここから信じられない連勝街道を驀進して11チームをごぼう抜きにし、ぶっちぎりで優勝するなどと、いったい誰が予想できただろうか。
 
 この時点で上位戦線を賑わせていたのは、ローマ、フィオレンティーナ、ナポリ、そしてとりわけインテルだった。大型補強によって顔ぶれを一新した最終ラインの堅い守りを武器に1-0の勝利を積み重ねるその戦いぶりは、圧倒的な戦力を持ちながら結果至上主義に徹して史上最少得点/最少失点でスクデットを勝ち取った1993-94シーズンの「カペッロのミラン」を思い起こさせると言われた。
 
 なりふり構わず結果を追い求めていたインテルとは対照的に、ポゼッションとハイプレスを組み合わせたセリエAでは異端ともいえるスタイルで、前半戦に彩りを添えたのがパウロ・ソウザ率いるフィオレンティーナ。攻撃時には3-4-2-1、守備時には4-4-1-1と局面に応じて2つのシステムを使い分ける欧州最先端のトレンドに乗った魅力的な攻撃サッカーで、ニコラ・カリニッチ、ヨシプ・イリチッチ、ボルハ・バレロといったプレーヤーの個性を存分に引き出して上位戦線を賑わせた。
 
 サッカーの質という点で飛躍的な進歩を遂げて首位争いに加わったもうひとつのクラブがナポリだ。エンポリから引き抜いたマウリツィオ・サッリ監督は、ダイレクトパスを多用したシステマティックな組み立てから、前線のロレンツォ・インシーニェ、ゴンサロ・イグアインの個人能力を引き出す攻撃、ボールだけを基準にして組織的な陣形を整え、敵をいっさいマークすることなく常に相互の連携を保ちながらラインが一体となって動く完全なゾーンディフェンスのメカニズムを短期間で浸透させ、攻守のバランスを高いレベルで保ったコレクティブなチームを築き上げた。
 
 1試合平均1ゴールという驚異的なペースでゴールを量産したイグアインの大活躍もあり、ナポリはライバルが次々と脱落する中、後半戦に入っても首位戦線に踏み止まって、最後までユベントスに食い下がった。
 
 ローマは最初の2か月こそ順調に勝ち点を積み重ねて首位戦線をリードしたものの、11月半ばを過ぎると、CLのバルセロナ戦で1-6の惨敗を喫したのをきっかけに急激なスランプに陥った。
 
 過去2シーズン続けて2位となり、3年目の今シーズンこそ悲願のスクデットを、という期待と重圧を一身に背負ったリュディ・ガルシア監督は、マスコミやサポーターのプレッシャーに追いつめられてコントロールを失い、首位から7ポイント差の5位まで順位を下げて前半戦を折り返したところで解任の憂き目に遭う。
 
 ローマの幸運は、後任にかつて足かけ5シーズンに渡ってチームの指揮を執り、クラブの内情からマスコミやサポーターの気質まですべてを知り尽くしたルチアーノ・スパレッティを後任監督に迎えるという巡り合わせに恵まれたことだった。