民主、自民、公明3党の政調会長が7月26日に会談して、マイナンバー法案の修正協議を早急に決着させて8月中旬までに衆院で可決する方針を確認した。マイナンバー法案というのは、国民全員に背番号をふり、徴税と社会保障サービスを一体管理する仕組みだ。

 野田総理は27日の参院社会保障と税の一体改革特別委員会で、マイナンバー法案に関して「一体改革関連法案と密接に結びついた重要法案だ。与野党双方に衆議院での審議促進をお願いしたい」と述べ、2015年1月からの運用を目指して、法案の早期成立への期待を示した。
 マイナンバー制度は、消費税率引き上げに伴って、低所得者対策として検討されている「給付つき税額控除」の実施の前提となっているというのが、早期導入の根拠となっているが、この理屈はおかしい。低所得者に給付金を支払うために税務データと社会保障データを統合する必要はないからだ。'99年に行った地域振興券の配布と同様の手続きで済むのだ。

 では、税務データと社会保障データと統合管理すると、何ができるのか。たとえば、生活保護の不正受給防止には役立つだろう。いまでも、生活保護をもらいながら、隠れて就労している人が相当いるといわれている。マイナンバーで課税データと生活保護受給者を付き合わせれば、こうした不正をあぶりだすことができる。それだけではない。生活保護の申請の際に、親族にどれだけの所得があるのかを把握できるようになるから、厳正な審査ができるようになる。
 また、一番影響が大きいのが、厚生年金の加入対象者の拡大だろう。現在、パートタイマー以外の社員は厚生年金に加入する義務があるが、零細企業の社員は、厚生年金に加入していないケースが多い。厚生年金に加入すると企業にも保険料負担が生ずるためだ。厳密に言えば、それは違法なのだが、税務データと社会保障データがバラバラに管理されている現状では、チェックができていないのだ。

 また、将来的には、マイナンバーを使って、課税範囲の拡大も可能になるだろう。たとえばインターネットオークションだ。
 現在、ネットオークションで行われている個人間の取引は、税の対象になっていない。しかし、取引の際にマイナンバーの登録を義務づければ、課税対象にすることができる。そんなバカげたことはあり得ないと思われるかもしれない。しかし、道路上でナンバープレート情報を自動的に読み取るNシステムも、導入時には交通渋滞対策にしか使わないという触れ込みだった。しかし、現実にはいつの間にか警察の取り締まりに活用され、オウム事件の時には大活躍をしたのだ。同じようなことが起きる可能性は否定できないだろう。

 さらに恐ろしいのが、マイナンバーの民間への流出だ。すでに我々の情報は、名簿情報業者の手によって、相当程度収集されている。勤務先や趣味、乗っている車まで情報蓄積されているのだ。いまは、氏名と生年月日で管理されているこれらのデータが、もしマイナンバーという唯一無二の番号で管理できるようになれば、個人の特定がさらに容易になり、我々のデータは生涯にわたって、きっちりと管理されることになってしまうのだ。マイナンバー制度は、そうしたリスクも含めて、もう少し慎重な議論が必要なのではないか。