オモロー山下氏


 お笑いコンビ「ジャリズム」の解散、うどん店「山下本気うどん」開業時の借金1000万円――。「世界のナベアツじゃない方」と呼ばれた“じゃない方芸人”だったオモロー山下氏は、決して順風満帆とはいえない道のりを歩んできた。そんな山下氏が50歳を過ぎてから投資を始め、資産を大きく増やした。だが、その方法は一発逆転を狙う投機ではない。iDeCo、NISA、特定口座をどう使い分け、限られた資金をどう育てていくのか。投資初心者がまず押さえておきたい「負けない資産形成」の基本を同氏が紹介する。

(*)本稿は『借金1000万円から億り人』(オモロー山下著/KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

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投資の入口で迷う初心者へ、税金20%をゼロにする口座選び

 投資の入口って、とにかく選択肢が多すぎるんです。投資をする商品選びに入る前に、証券口座を開く段階で迷ってしまいました。

 大きく分けて、「iDeCoで始める」「NISAで始める」「特定口座で始める」という3つの選択肢があったのです。

「iDeCo?NISA?それとも特定口座?……いや、何がどう違うねん!」専門用語のオンパレードで頭が混乱しました。でも、YouTubeや本で勉強するうちに、「税制優遇を使える口座にしないと損する」ということが分かってきました。

 そもそも、投資で得た利益には通常20.315%の税金がかかります。例えば、100万円の利益が出たら、約20万円が税金で持っていかれるんです。

「えっ、20万円も取られるの?」

 これを知ったときはめちゃくちゃ驚きました。まあ、ギャンブルの税金と比べたらマシかもしれませんが、それでも20%は痛すぎます。

 ところが、国が用意した制度を賢く使えば、この税金をゼロ、あるいはそれ以上に「お得」にできるんです。「だったら、使わない手はないじゃないか!」と思った僕は、これらの制度をフル活用するため、仕組みの違いを勉強しました。

 それぞれの特徴を見ていきましょう。

節税効果のバケモノ「iDeCo」が持つ3つのメリット

 まず、iDeCo(個人型確定拠出年金)とは何かを一言で言えば、「自分で作るオリジナルの年金制度」です。

 毎月決まった額を積み立てて、自分で選んだ投資信託などで運用し、老後(60歳以降)に受け取るという、すごくお得な仕組みです。

 iDeCoは、「3段重ねの税制メリット」を持っています。

メリット1:掛け金が全額「所得控除」になる(手取りが増える!)
メリット2:運用中に出た利益が非課税
メリット3:受け取るときも税金が安くなる(退職所得控除など)

 一番インパクトが大きいのが「メリット1」です。

 僕のような個人事業主の場合、月額最大6.8万円(年間81.6万円)までiDeCoで投資できます。この81.6万円がそのまま所得から差し引かれるので、翌年に納める所得税と住民税がガツンと減るんです。

 仮に所得税が20%、住民税が10%だとすると、年間で約24万円の節税になります。

「81.6万円を積み立てるだけで、24万円の税金がほぼ確定で戻ってくる」……これを利回りに換算すると約30%です。

 株で確実に30%のリターンを出すなんてプロでも至難の業ですが、iDeCoなら制度を使うだけでこのリターンが確定します。高収入な人だと所得税率が高くなるので、ますますiDeCoのメリットが大きくなっていきます。

 ただし、iDeCoには1つだけ最大の注意点があります。それは、「原則60歳まで引き出せない」こと。

 これがiDeCoの唯一にして最大のデメリットです。だから、今月の生活費が心許ない人や、近々まとまったお金が必要な人には向きません。そういう人は、いつでも引き出せるNISAのほうが使いやすいです。

使い勝手バツグンの非課税神口座「NISA」最大の強み

 次に「NISA(少額投資非課税制度)」とは、国が用意した、「投資の利益に一切税金がかからない特別な口座」のことです。

 2024年から「新NISA」として制度が劇的に進化し、この特別な口座に生涯で1800万円まで非課税で投資できるようになりました。つまり、投資したお金が1800万円に収まるなら、そこでいくら儲かっても税金はタダ、という神口座なんです。

 NISAの最大の特徴は以下の2点です。

メリット:運用益(利益)がずっと非課税になる
最大の強み:いつでもペナルティなしで引き出せる

 NISAにはiDeCoのような「掛け金の所得控除(毎年の節税)」はありませんが、圧倒的な流動性(使い勝手の良さ)があります。

 結婚資金、子供の教育費、マイホームの頭金など、「60歳より前に必要になるかもしれないお金」を育てるなら、NISAはかなり役立ちます。

あぶれた資金の受け皿「特定口座」は源泉徴収ありの一択

 特定口座は、普通の課税口座です。特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」から選択できますが、結論から言うと「源泉徴収あり」が絶対におすすめです。

 というのも、源泉徴収のない特定口座で運用すると、自分で税金の申告や納税をしなくてはならないから。僕はそんな面倒くさいことはしたくない(というかできない)から、特定口座「源泉徴収あり」一択です。

特徴:利益に対して20.315%の税金がしっかりかかる
メリット:「源泉徴収あり」を選べば、証券会社が代わりに納税してくれて確定申告の手間がかからない

節税効果がもっとも強い「iDeCo」を最優先

 投資を始めるときに迷いがちなのが、NISAとiDeCo、特定口座をどんな順番で行えばいいのか、ということです。

 この選択を間違えると、余計な税金を払う羽目になってしまったり、使いたいときにお金が引き出せなくなったりします。口座選びは地味に見えますが、生涯で何百万円、下手したら何千万円の差を生む、めちゃくちゃ大事なポイントなんです。

 いきなり結論ですが、投資をするなら、この順番で投資枠を埋めていくのがおすすめです。

STEP1:iDeCo(年間最大81.6万円の積立 ※自営業の場合)
STEP2:NISA・つみたて投資枠(年間最大120万円の積立)
STEP3:NISA・成長投資枠(年間最大240万円の投資)
STEP4:特定口座(それでも余った資金でインデックス投資)

 この順番を守るだけで、国が用意してくれた税制優遇を限界まで使い倒し、最も効率よく資産を増やすことができます。それぞれの使い分けのポイントを解説しましょう。

STEP1:節税効果がもっとも強い「iDeCo」を最優先

 なぜiDeCoが最優先なのか。節税効果が飛び抜けて最強だからです。

 僕は個人事業主なので、月額6.8万円(年間81.6万円)までiDeCoを使って投資できます。この金額が「全額所得控除」──つまり、税金の計算のもとになる所得から丸ごと差し引けるのが最大の強みです。

 1年のトータルで数十万円だから、10年、20年と続けたら、生涯でみるとかなりの税金を減らせます。これはもう、やらない理由がありません。

 しかも、今後iDeCoの上限額はさらに引き上げられる予定です。2027年1月の引き落とし分から、自営業者(第1号被保険者)の上限は月額6.8万円→月額7.5万円(年間90万円)に拡大されます。

 会社員はもっと引き上げ幅が大きくて、なんと現在の月額2.3万円から、一気に月額6.2万円へと約2.7倍に跳ね上がります(企業年金のない会社員の場合)。

 ただし、iDeCoには一つ大きな注意点があります。iDeCoに入れたお金は、原則60歳まで引き出せません。文字どおり「ロック」されます。

 僕の場合は生活費の不安がないので上限いっぱいまで突っ込んでいますが、「生活費がギリギリ」「近々、結婚や子育てでまとまったお金が必要になるかも」という人は、iDeCoは少額にとどめて、いつでも引き出せる「NISA」を優先してください。

新NISAで月7.5万円積立、複利の力で「億り人」になる試算

STEP2&3:一生売らない覚悟で埋める「NISA」

 iDeCoの次に検討したいのは、NISAです。

 NISAは、投資で得た利益に税金がかからない制度です。通常、株や投資信託で利益が出ると約20%の税金を持っていかれますが、NISAの枠内で投資していれば、その税金がゼロになる。生涯で1800万円まで非課税で投資できる、まさに「神制度」です。

 この威力を数字で見てみましょう。仮に1800万円を年利7%で20年運用したら、約7000万円に増えます。利益は約5200万円。

 普通の口座なら、ここに20%の税金がかかるので約1000万円が持っていかれる。でも、NISAなら税金ゼロ。1000万円がまるまる浮くんです。

 例えば、20年間にわたって資産形成を継続したとしましょう。NISA枠で月7.5万円(20年で非課税枠1800万円を完走)、iDeCoで自営業の方なら月6.8万円、合計で月14.3万円を機械的に積み立てるとします。

 S&P500(米国の代表的な企業500社の株価をもとに算出される株価指数)の過去100年(1926年〜2025年)の年率平均リターンは約10.4%です。これを踏まえ、年利10%で運用できたと仮定して試算すると、20年後の資産額はなんと1億円を超えます。

 もちろん、これだけの金額を毎月積み立てるのは簡単ではありません。しかし、iDeCoやNISAといった国の制度をフル活用し、複利の力を味方につければ「億り人」になることは決して夢物語ではないのです。

 ただし、iDeCoと同じように、NISAにも多くの人が見落としている「落とし穴」があります。NISA口座では「損益通算」ができないんです。

 損益通算というのは、投資のプラスとマイナスを相殺する仕組みのこと。普通の口座(特定口座)なら、「A株で100万円の利益が出た」「B株で100万円の損失が出た」という場合、この二つを合算して利益ゼロとみなし、税金をチャラにできます。

 ところが、NISA口座の中で損を出しても、その損失は「なかったこと」として扱われます。他の利益と相殺することもできず、ただ非課税枠を無駄に消費しただけで終わってしまう。NISAは利益が出たときに役立つ仕組みですけど、損したときの救済措置がないんです。

 だからこそ、NISAの枠内では「上がったり下がったりを繰り返して損切りする可能性のある個別株」ではなく、「長期保有が前提のインデックスファンド」をメインに入れるべきなんです。NISAは「一生売らない」くらいの覚悟で、どっしり構えておくのが基本です。

余剰資金で勝負!特定口座をハイリスクな「個別株」に使う理由

STEP4:あぶれた資金で攻める「特定口座」

 iDeCoの枠も、NISAの年間360万円の枠もすべて使い切った。それでもまだ投資に回せる余裕資金がある。そういう人は、最後に「特定口座」を使いましょう。

 特定口座は、iDeCoやNISAのような税制優遇がない、いわば「普通の投資口座」です。利益に対してしっかり20.315%の税金がかかります。

 でも、銀行に預けて1%にも満たない利息(利息にも20.315%の税金がかかります)をもらうよりは、税金を払ってでもS&P500で回したほうが圧倒的にマシです。

 さらに、特定口座には、NISAではできない「損益通算ができる」というメリットがあります。

 特定口座を使えば「もし失敗しても、他の利益と相殺して税金を減らせる」とある程度は割り切れます。だからこそ、特定口座はハイリスク・ハイリターンな個別株などの売買、つまり「オフェンス(攻め)」をするのに向いているんです。

 NISAのインデックスでガチガチの守りを固めつつ、特定口座で攻めの個別株ポートフォリオを組む。この「二階建て」の考え方が、資産が増えてきたときに強烈な力を発揮します。

 まあでも、ほとんどの人は、iDeCoとNISAをインデックス投資でしっかり使えばそれで十分だと思います。それ以上に攻めた投資をしたくなったら、そこで初めて特定口座を使うことも検討すればいい。

 大事なのは、順番を間違えないこと。いきなり特定口座で取引していたら、税金分を損してしまいますからね。

【オモロー山下】
1968年10月29日生まれ、香川県出身。本名は山下栄緑(しげのり)。1992年に大阪NSC10期生の同期である渡辺あつむ(現・桂三度)とお笑いコンビ「ジャリズム」を結成。解散と再結成を繰り返した後、ピン芸人として「オモロー山下」に改名。2012年に「山下本気うどん」を開業し資産1億円に到達。その資金を元手に投資を始め、現在は2億8000万円まで資産を増やしている。

(オモロー山下著/KADOKAWA)


筆者:オモロー山下