『スパイダーマン2』ピーター・パーカーと自己犠牲 ─ 人生を生きるか?ヒーローの運命を受け入れるか?再考
あの興奮と感動をもう一度。2026年7月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷にてサム・ライミ監督作『スパイダーマン2』(2004)がされる。今回の特別上映はTHE RIVERによる初の劇場連動企画の「REVIVAL by THE RIVER」第1弾だ。
© 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: © & 2021 MARVEL.トビー・マグワイア演じるピーター・パーカー/スパイダーマンが活躍するサム・ライミ版『スパイダーマン』3部作だが、その魅力はピーターが二重生活を送る上での葛藤を見事に描いたところにあるだろう。
『スパイダーマン2』が今も観客の心を掴み続ける理由の一つは、ピーター・パーカーが背負う「2つの人生」にある。大学生のピーター・パーカーはいわゆる苦学生だ。アルバイトで口に糊する日々を過ごし、アパートの家賃は滞納。唯一の家族であるメイおばさんは金銭的理由で家を失うことになる。
その一方で、スパイダーマンとしては大人気で、彼に憧れる子どもは多い。しかし、それはすべてピーターの人生という犠牲の上に成り立っている。スパイダーマンとしてニューヨークを守ろうとすればするほど、彼の人生はボロボロになっていく。
アルバイトのピザ屋からはクビを言い渡され、大学の講義に参加できずに落第寸前。親友のハリー・オズボーンからは「父親(ノーマン・オズボーン、またの名をグリーン・ゴブリン)を殺した悪人と仲良くしている」と責められギクシャクしている。そして、愛するメリー・ジェーン・ワトソンの演劇を観に行けず、彼女の心は離れてしまった。
ピーター・パーカーという人物にとって、スパイダーマンは十字架なのだ。ベンおじさんの「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という有名な言葉の通り、ピーターはスパイダーマンという重たい責務を背負いながら生きている。その結果、精神的に限界となった彼は蜘蛛の力を失ってしまうのである。
蜘蛛の糸のように絡みつく スパイダーマンという運命悩み抜いた末、ピーターは“スパイダーマン”を辞めるという決断をする。それにより、彼の人生は好転し、大学の講義には遅刻せず出席できるようになり、MJの舞台を観劇し、彼女へ想いを伝えられるようになる。重い荷を下ろしたことで、ピーターは自分の人生を生きられるようになったのだ。
しかし、スパイダーマンという“大いなる責任”はピーター・パーカーの人生に蜘蛛の糸のように絡みつき、簡単には離してくれない。そもそも、ピーターは蜘蛛の力を得たとき、罪も一緒に背負ってしまっている。ベンおじさんを失った原因の一端は、自分の傲慢さにあったのだ。
ピーターはいじめられっ子だった現実から蜘蛛の力で抜け出せると思ったとき、自分の力を私利私欲のためだけに使ってしまった。その傲慢な行いは巡り巡って、それによりベンおじさんが撃たれることにつながり、怒りを抑えられなかった彼は、犯人とされる人物に復讐をしてしまう。
ピーターにとっての贖罪だったスパイダーマン。一度はスーツを捨て、もう罪は償い終えた、もう十字架を背負って生きるのは耐えられない、もう自分の人生を生きてもいいのではないか--夢でベンおじさんに告げるピーターだったが、メイおばさんからは子どもたちにとってスパイダーマンが憧れの存在になっていると知らされる。
ピーターはスパイダーマンを、自らの罪を償うための役割だと思っていた。しかし市民たちは、彼を過去に縛られた罪人ではなく、未来へ進むための希望として見ていたのである。もう、“スパイダーマン”はピーター・パーカーという1人が背負うものではない。気がつけば、彼はニューヨーク市民に支えられていたのだ。
博愛精神のヒーロー・スパイダーマン再びスーツを身にまとい、ニューヨークのビルの谷間をスウィングするスパイダーマン。彼と市民の関係性を象徴するのが、『スパイダーマン2』の名シーンでもある電車を止めるシーンだろう。ビルに糸を何本も貼りつけ、暴走する電車を止めるスパイダーマンの姿は十字架に磔にされたイエス・キリストを思わせる。
そして、ボロボロになったスパイダーマンを市民たちが運び、マスクが取れた本当の姿を目撃する。そのとき、「まだ子どもじゃないか」と言われ、ニューヨーク市民たちは自分たちを守っていた親愛なる隣人があまりにも幼い存在だと知るのだ。
市民たちはスパイダーマンの正体を知っても誰にも明かさないと誓い、その身柄を引き渡すように要求してきたドクター・オクトパスに立ち向かう。このシーンはピーター・パーカーが背負ってきた“スパイダーマン”という重荷の一端を、市民たちと分かち合ったことを表現していると考えられる。
迫力のあるバトルシーンとして語られることが多い『スパイダーマン2』の一連の電車シーン。これは物語冒頭から続くピーター・パーカーという青年の自己犠牲が実り、市民と二人三脚で前に進んでいくヒーロー“スパイダーマン”になったシーンでもある。スクリーンで希望の光のもとで人々の心が1つになる姿を観るのは、今の時代にこそ響くものがあるかもしれない。
映画『スパイダーマン2』(2004)はヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)にて2026年7月3日(金)より1週間限定上映。上映開始時刻は全日18:10より。

