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派手さのない57歳の新CEO

豊富な経験を持ちながらも目立たない存在だったルノー・グループの重鎮、フランソワ・プロヴォスト氏が、昨年7月にルカ・デ・メオ氏の後任として突然CEOに就任した。それまで彼が、よく知られたデ・メオ氏のスター性や、メディアの注目を集めるための話題作りを真似ようなどとは、誰も予想していなかった。

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デ・メオ氏が、欧州各地で自動車メーカーの再生を指揮し、自らの功績を確固たるものしてきた、いわば吟遊詩人のような自動車業界のトップだったのに対し、プロヴォス氏はより静かで、派手さのない人物のように見えた。公式写真に写る彼は、背が高く眼鏡をかけた、明らかに温厚そうな57歳の男性で、大学学長か牧師のような風貌だった。


ルノー5 ターボ3Eのプロトタイプに乗るフランソワ・プロヴォストCEO    AUTOCAR

プロヴォスト氏は、自動車業界から高級ファッション業界へのデ・メオ氏の急な転身に戸惑うフランス国民に対し、ルノーに必要なものを理解していることを早々に示した。彼は「継続型のCEO」となるつもりだったのだ。

2021年初頭に発表された6年・3段階のグループ再生計画「Renaulution」の立案者の1人であり、これを着実に実行していくと約束した。彼の深い知識と冷静さにより、シームレスな引き継ぎが実現した。

しかし、トップに就いてから最初の10か月間で、プロヴォスト氏は自身のやり方で物事を進める姿勢もはっきりと示した。自動車市場がますます厳しくなっていることを見据え、「Futuready」という名の下、独自の改革策を次々と打ち出しているのだ。

経営体制を一新したルノー

Futuready計画はルノー・グループの経営体制を簡素化し、モデル開発コストを40%削減するものだ。ルノーの主要部門には新たなリーダーが就任し、旧モビライズ(Mobilize)とアンペア(Ampere)の各部門は、コスト削減と人材再配置のため再統合された。2030年までに全ブランドで36の新モデルが投入される予定だ。

また、インド、韓国、ラテンアメリカ市場へさらに注力していく方針で、これらの市場は、プロヴォスト氏が以前活躍していた地域でもある。


新CEOの下、ルノーは経営体制を改めつつ事業拡大を目指している。

これらすべてが斬新な発想と迅速な行動によるものであり、AUTOCAR UK編集部は新CEOとのインタビューを最優先事項として、早々に取材依頼を行った。通常、企業のCEOは落ち着いた快適な場所、つまり慣れ親しんだ豪華な空間で記者と面会し、秘書が部屋の外を見張っているものだ。しかし、プロヴォスト氏の場合は少し違った。

取材依頼の後、ルノー本社の上層部から、パリ南西部の秘密のテストコースでプロヴォスト氏と7時間を過ごすという提案があったのだ。まず、発売間近のモデルや開発途中のモデルなどを1時間にわたって見学し、その後、彼が乗用車やバンをテストする場に立ち会うというものだ。テストは、コース上での高速走行や静止状態での評価、主要な競合製品との比較など多岐にわたる。

見たり、歩いたり、運転したりしながら、話し合うことになるのは明らかだ。筆者は、市場に出るまでまだ数年を要する新製品を目にすることになる。それについてはある程度言及できるものの、詳しい説明はできない。

最も重要なのは、最高経営責任者が自社の新製品についてどのような決定を下すのか、真横で見られることだ。彼はデザイナー、エンジニア、ディーラー、あるいは顧客として振る舞うのか? それともそのすべて?

開発車両の試乗・視察に同行

爽やかで美しい日の朝8時に集合し、まずは屋外で軽くコーヒーを飲みながら、広大なスキッドパンの舗装面に配置された展示車両を眺める。テストコースでの経験が窺える厚手のコートを羽織ったプロヴォスト氏は、筆者を含め全員に同じように親しげな挨拶を交わした。

今日、わたし達にはデザイナーや部門長からなる20名のチームが同行している。その中には、ルノー・グループのデザイン責任者ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏や、ルノーブランドの責任者兼最高事業成長責任者ファブリス・カンボリーヴ氏といった取締役も含まれている。


フランソワ・プロヴォストCEO(右から3人目)と筆者(中央)    AUTOCAR

プロヴォスト氏からは威厳あるオーラが漂うが、本人はそれを誇示する気はないようだ。「これは共同作業です」と彼は言う。途中で最終的な決定を下すこともあるかもしれないが、それはチーム内でメンバー全員が意見を述べた後でなければ実行しない。これは良い意志決定に至るための素晴らしい方法のように思える。誰でも意見を述べることができ、人数も少ないため1つの議論に集中できるからだ。

わたし達は3台の新モデルに向かって歩く。デザイン責任者のヴァン・デン・アッカー氏がクルマのプロポーションをじっくりと鑑賞してほしいと望んだため、あまり近づきすぎず、距離を保つ。どこから話を切り出せばよいか分からず、筆者はプロヴォスト氏に、長いキャリアの初期にあるエンジニアリングの経歴について質問し始めた。

「わたしはエンジニアリングの専門家というわけではありません」と彼は控えめに微笑みながら言った。その英語は、少なくとも筆者と同じくらい流暢だった。

デザインにも積極的に発言

「必要とあれば、言われたことに異議を唱えられる程度の知識はある、といったところでしょうか。ただ、クルマの組み立て工程については豊富な経験があります。かつては、バンパーについて1時間も話し合うことができたものです。しかし今では、eアーキテクチャー、バッテリー技術、パッケージング、効率といった、当社の能力が試される大きな課題があります。重要な事柄に時間を割かなければならないのです」

このCEOにとって、議論が一週間の大部分を占めていることがわかった。月曜日は通常、経営上の意思決定で埋め尽くされている。木曜日は、グループの広大なテクノセンターで過ごし、開発の最新動向を把握する。その合間を縫って、会社の運営が行われるのだ。


ルノー・ラファール(現行型)    AUTOCAR

わたし達は、すでに開発開始から2年近くが経過している2つのモデル、2028年頃発売予定の『セニック』と、その弟分である『ラファール』に近づく。両車は主要なデザイン要素を共有している。デザイナーたちは、新しいセニックの堂々としたリアデザイン案を紹介し、全員がこれを気に入った。このデザインは市販車に採用されることになる。

2つのモデルが似すぎているかどうかについては議論があり、大多数はそうかもしれないと考えている。あるモデルのフロントフェイスが「ドイツ車っぽすぎる」という指摘もあり、ルノーのダイヤモンドロゴが十分に際立っていないという意見もある。改善が必要だ。

プロヴォスト氏は、提案されたフロント部のデザイン変更には数百万ユーロのコストがかかると筆者に語ったが、彼はその費用を惜しまない構えだ。ルノーのデザイン部門(責任者は就任からわずか4か月のアレクサンドル・マルヴァル氏)は、議論された方向性に沿ってモデルを迅速に調整し、再提示することに同意した。この2車種の承認を得るため、全員にプレッシャーがかかっている。

インド市場向けモデルにも注力

次に、ダチア(ルノー・グループ傘下のルーマニアの低価格車ブランド)の新型『サンデロ』を視察する。欧州におけるダチアのベストセラー車であり、購入者の70%がリピーターであるため、極めて重要なモデルだ。SUVの『ダスター』や『ビッグスター』からの影響が見られ、(相変わらず)驚くほどコストパフォーマンスに優れている。

次に目を向けるのは、ルノーの新型『ブリッジャー』のコンセプトモデルだ。プロヴォスト氏のFutuready計画における旗手と言えるだろう。今年3月に発表され、事業拡大を図るインド市場向けに開発されているからだ。背が高く堂々とした印象だが、プロヴォスト氏は全長が『クリオ(日本名:ルーテシア)』と同じ4.0mしかないと指摘する。


ルノー・ブリッジャー・コンセプト

「インドでは、あらゆるものを倍にしなければなりません。彼らはもっと豪華で、大きく、広々としたものを求めています。ですので、大きく見えるのは利点になります」とプロヴォスト氏は言う。

筆者は、この堂々とした小型SUVなら、フロントにダチアのエンブレムを付けて欧州でもヒットするのではないかと提案した。プロヴォスト氏がこれまでも何度も同じ話を聞かされてきたのは明らかだが、彼はこのブリッジャーの最初の使命は「インドで、インド人のために」あると主張する。

他のパワートレインや市場を絡めて複雑化することは避け、できるだけ早く市場投入したいとの考えだ。アフリカ、中東、南米で10万台以上売れるかもしれないという筆者の提案には半ば同意しつつも、これほど高いポテンシャルを持つモデルに対しては極めて慎重な姿勢を崩さない。

(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます。)