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現在、宇宙ビジネスは、打ち上げコストの低下や衛星の小型化などを背景に急速な発展を見せています。衛星通信サービスは「Starlink」を筆頭に拡大し、世界中で本格的に普及が進んでいるようです。大きな成長が期待できる市場として注目される宇宙ビジネスの今後について、東京海上アセットマネジメントが解説します。

加速する“宇宙ビジネス”の発展

1981年に初打ち上げが成功したスペースシャトルの打ち上げコストは、約65,400米ドルでした。その後、ロケット開発が進み、ロケットの再利用等により打ち上げコストは急速に低下し、大型ロケット「ファルコンヘビー」では、約1,500米ドルとスペースシャトルと比べ約44分の1まで低下しています。

さらに、現在、スペースXが開発中の新型ロケット「スターシップ」では、打ち上げコストの大幅な低減を目指しており、今後、打ち上げコストはさらに低減する見込みです。


また、宇宙産業では、技術進歩により手のひらサイズの超小型衛星が登場するなど、衛星の小型化が進んでいます。衛星の小型化に伴い、衛星の打ち上げ数が大きく増加しており、稼働中の衛星数は2013年の1,187基から2023年の9,115基となり、約7.7倍に拡大し、通信や観測用途での利用が増えています。


近年、ロケットの打ち上げコストの低下や衛星の小型化等を背景に、地球低軌道帯を中心に巨大な衛星網が構築されており、このような宇宙インフラが商業分野での宇宙データの利活用をさらに推し進めると考えます。

[図表1]主な大型ロケットの地球低軌道への打ち上げ価格/衛星の小型化・低コスト化 出所:各種資料を基に東京海上アセットマネジメント作成

小型衛星の打ち上げ数が7.2倍に…衛星通信サービスの普及進む

スペースXの衛星インターネット事業「Starlink」と衛星インターネット事業者OneWeb(英)による打ち上げ数が2020年以降急増し、世界の小型衛星の打ち上げ数は、約7.2倍(2018年対比)に拡大しています。

2023年に打ち上げられた人工衛星のうち、約97%が小型衛星の打ち上げとなっており、商用目的での小型衛星の利用が進んでいます。

[図表2]世界の小型衛星の打ち上げ数の推移(2014年〜2023年、年次) 出所:BryceTech「Smallsats by the Numbers 2024」

世界最大の衛星通信網となったスペースXの「Starlink」

スペースXは現在、約100ヵ国に「Starlink」を提供しており、世界の加入者数は、300万人を超え、「Starlink」が利用する人工衛星は6,000基を超えているといわれています。

「Starlink」は、ウクライナの一部地域でインターネット接続を維持するための重要な役割を担っていることで知られ、遠隔地やインターネット接続が途絶した被災地でも通信手段を確保できるため、世界で注目が高まっています。

現在、スペースXのほか、中国政府やAmazon.comも衛星通信サービスを計画しており、今後、世界で衛星通信サービスの本格的な普及が見込まれ、衛星通信の新時代が始まろうとしています。
 

[図表3]世界最大の衛星通信網「Starlink」の衛星数と加入者数(2019年〜2024年、年次) 出所:各種資料を基に東京海上アセットマネジメント作成※加入者数は2021年より表示

“黎明期”の宇宙ビジネス、今後も成長続く見込み

宇宙ビジネスは、インターネットが普及し始めた1990年代半ばのIT産業のような黎明期にあるといわれています。宇宙ビジネスは、国家主導の時代から、技術革新と起業家精神に支えられた民間主導の新時代へと移行し拡大しており、中長期にわたって成長することが期待されます。
 

[図表4]宇宙の過去・現在・未来 出所:McKinsey & Company、Space Foundation、BryceTech、スタティスタ、各種資料を基に東京海上アセットマネジメント作成※積載量1kgあたりの打ち上げコストの過去の()内は、スペースシャトルの初打ち上げ年、現在はファルコン・ヘビーの初打ち上げ年を示す。※スタートアップ企業数の現在は、参考情報として使用した資料の発行年を示す。※衛星開発コストの過去は、政府の大型衛星、現在は地球低軌道の商業衛星、未来は地球低軌道の商業衛星の費用を示す。また、過去と現在は、参考情報として使用した資料の発行年を示す。※上記は、宇宙の過去・現在・未来の傾向について理解を深めていただくためのもので、すべてを網羅するものではありません。

今後の見通し

2024年7月に欧州宇宙機関(ESA)が新型主力ロケット「アリアン6」の初打ち上げに成功しました。各国の打ち上げ競争において、欧州の打ち上げ能力が向上することで、さらなる宇宙ビジネスの拡大が期待されます。

また、11月の米大統領選は不透明感を強めているものの、ドナルド・トランプとカマラ・ハリス両候補ともに、政策は異なりますが、トランプ、ハリス両氏は米国の防衛・宇宙の強化について意欲的であることから、宇宙関連企業にとってポジティブであると考えています。


Space Foundation(宇宙財団)によると、2023年の世界の宇宙ビジネスの市場規模は前年比+7.4%の5,700億米ドル(約83兆円※)となり、成長しています。

※1米ドル=144.8円(2024年8月末時点)で円換算

世界の宇宙ビジネスの市場は、民間企業による参入により、ビジネスの裾野が広がっていくことが期待され、宇宙分野の商業化の拡大によって将来にわたり成長すると予想しています。

[図表5]世界の宇宙ビジネスの市場規模(売上高) 2015年〜2040年 出所:SIA、Morgan Stanley Research、Thomson Reuters、Space Foundation(宇宙財団)、各種資料より東京海上アセットマネジメント作成※2030年以降は、Morgan Stanleyによる予測値。2040年までに世界のインターネット普及率が100%になるものとして算出した数値です。※世界の宇宙ビジネスは、人工衛星の製造・運用に加え、地球の観測事業、テレビ・ラジオ・携帯通信・高速通信サービスなどの人工衛星を利用したサービスが含まれます。なお2030年以降は、超音速飛行ビジネスの市場規模(売上高)を含みます。

東京海上アセットマネジメント

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「宇宙新時代」人工衛星が10年で7.7倍に…期待高まる“宇宙ビジネス”市場、予想される今後の展開』を参照)。