ドル円、146円台半ばまで上昇 2つの追い風が下支え=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、ドル円は買い優勢の展開が見られ146円台半ばまで上昇した。自民党総裁選前の直近高値に顔合わせし、リバウンド相場の流れに復帰している。2つの追い風がドル円を下支えしたようだ。

 1つは、総裁選前は日銀の利上げ姿勢を支持していたと考えられていた石破首相が「現在は追加利上げするような環境にない」と否定的な見解に変化したこと。そして2つ目は、パウエルFRB議長が週初の講演で緩やかな利下げペースを強調し、11月の大幅利下げ期待が後退していることでドル買いが優勢となっていることが挙げられる。

 前日はイランがイスラエルにミサイル攻撃を行ったことで、中東情勢が緊迫化している。いまのところ中東情勢については市場も情勢を見守っている状況。イスラエルの報復措置はほぼ確実と見られているが、この問題が今後大規模な衝突にエスカレートして行くのか、それとも4月の時のように鎮静化するのか、行方を見守っている。

 きょうもユーロドルは売りが優勢となり4日続落。一時1.1035ドル付近まで下落し、21日線を下放れる展開が加速した。ドル買いのほか、市場がECBの10月利下げへの期待を強めていることがユーロを圧迫。短期金融市場では90%超の確率で織り込んでいる状況。

 来週フランスの予算案の詳細が発表されるが、それに向けて仏独国債利回りのスプレッドが抑制された状態が続けば、ユーロは恩恵を受ける可能性があるとの見方が出ている。バルニエ仏首相がきょう、25会計年度に約600億ユーロの歳出削減と増税を計画していると発表した。首相は拡大する財政赤字削減と投資家の信頼回復を目指している。

 来週はその初期段階の詳細が発表されるが、これらの計画に左派政党からは反対が出る可能性があるものの、議会最大与党である右派および国民戦線には受け入れられやすいものになるだろうと述べている。計画が議会で承認される見通しが高まっており、それはフランス国債とドイツ国債の利回りスプレッドが小幅ながらも縮小していることに反映されているという。

 ポンドドルも一時1.32ドル台半ばまで下落。21日線が1.3235ドル付近に来ており、その水準をブレイクするか注目される。中東情勢への懸念が高まっており、リスク回避の雰囲気がポンドを圧迫している。

 本日は英中銀が9月に開催した金融安定化委員会(FPC)の議事録を公開していたが、同時に半年ごとに金融機関に実施しているシステミック・リスク調査も公表していた。その調査では、地政学リスクを懸念する英金融サービス企業の割合が08年の金融危機以来の高水準に達していることが明らかとなった。

 英金融セクターにとって地政学上のリスクが主要な脅威であると考える金融機関の割合は93%に達し、前回から8%ポイント上昇。サイバー攻撃への懸念も高まり、海外または世界的な景気後退による脅威を挙げた企業の割合も33%と前回から2倍以上となった。55社を対象とした同調査は、中東情勢が緊迫化する前の7月23日から8月12日にかけて実施された。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美