泉房穂は国政選挙に出馬するのか?「永田町の政治に染まった議員は全員差し替え」「経産省も文科省も総務省もなくす」恩師の遺思を継ぐ“救民内閣”構想とは?

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恩師である故・石井紘基衆院議員の遺志を継ぎ、「救民内閣」構想を掲げる泉房穂。国民に負担を強いる官僚主義政治を打破し、国民を救う政治へ転換する具体策とは。実現するまでに20年かかると想定する、壮大なシナリオを聞いた。

〈画像〉泉房穂が師匠と仰ぐ故・石井紘基氏

自民党総裁選で「企業献金の廃止」を掲げている候補者はゼロ

──9月27日に行なわれる自民党総裁戦で、注目している候補は?

いませんね。石破茂さんが裏金問題に踏み込むかと思ったけど、すぐにトーンダウンしたしね。腰砕けしたなあ。石破さんは自民党を離党して新党を作り、野党と一緒に対抗軸を作って総理を目指したらおもしろいと思ったけどね。まあ、その根性もなさそうやけど。

結局は与党も野党も官僚の言いなりだから、誰が自民党の総裁になろうが誰が立憲民主党の代表になろうが、国民が不幸な状況は変わりません。それをなんとかせなあかんのです。

──具体的には?

ポイントはふたつ。「金権政治からの脱却」と「国民負担増政治からの脱却」です。金権政治とは、お金をくれる人のほうを向いた政治のこと。国民から預かっている税金を団体にばらまいているからお金が足りなくなるんです。結果的に国民負担が増える。国民のお金を国民に使う政治に変えればいいだけです。

具体的には、企業・団体献金を廃止する。加えて食料品など生活必需品の消費税をゼロにする。こういったことを国民に訴えて選挙で勝利させてもらえれば、政治は変わると思います。自民党総裁選で「献金の廃止」を掲げている候補者はゼロ。国民負担の転換もゼロです。

金持ちや有力者よりも庶民の数のほうが多い

──他の国ではどうなんでしょう?

フランスは企業・団体献金を禁止したし、韓国もカナダもオーストラリアも、多くの国は禁止しています。

経産省みたいな役所も他の国にはありません。民間の経済活動や産業に官僚が過剰に干渉するなんておかしいじゃないですか。そんなんだから被災者支援で旅行クーポン券を発行するという、わけわからんことをするんです。経済産業省は廃止でいいと思っています。

災害対応で言うと、国土交通省も同じです。災害が起こるたびに被災地に仮設住宅を建てていますが、仮設に過ぎないのでいらなくなったら壊すことになります。このスクラップ&ビルドのサイクルで、建設業界に驚くほどの金が流れています。結局、災害を理由にして業界団体が金儲けをしているだけ。

総務省も文部科学省も、中央省庁が地方自治を所管して仕切るのはおかしい。これも他の国にはありません。中央省庁主義の日本の政治は異常です。

官僚主義政治から国民を向いた国民のための政治への転換は、今の日本の肝。恩師である石井紘基さんの遺志を継いで、私が今まさにやりたいと思っていることです。

──『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』でも言及している「救民内閣」構想ですね。

選挙で勝った瞬間に政治は変えられます。だから私はすごく前向きなんですよ。金持ちや有力者よりも庶民の数のほうが多いんだから、団体や有力者に媚を売らず、本気で庶民のための政治をやってくれる人だと思えば有権者は投票してくれます。シンプルな構造です。

かつては新聞やテレビの報道に流される人が多かったけど、今はSNSでいろんな情報を得られるし、発信もできる。大マスコミの情報だけに流されないツールを国民が手にしたと思うんです。SNSで世論を形成し、それが選挙につながれば勝てると思っています。

実際に、兵庫県の三田市市長選挙や埼玉県の所沢市長選、岩手県知事選だって、私が応援した候補は全員圧勝しました。

20年で日本を変える

──自身が国政選挙に出馬する考えは?

私が289人おったら政権交代できるけど、ひとりやからね。一国会議員になってもしょうがないんです。総理になれれば日本を救うことはできますよ。総理大臣は人事権を持っているから、内閣の布陣を替えられるし官僚も替えられる。予算だって増やすことができます。総理が本気になったら、日本を復活させられるに決まってます。

ただ、そこに至るまでの過程はそう簡単じゃない。まずは世論を高めて国民の味方となる人たちと大同団結し、候補者調整をし、衆議院議員選挙で過半数を取る。段階を踏まなければいけません。

──考えに賛同する人たちと「救民内閣」を実現するシナリオを描くことが、今の自身の仕事だと。

そうです。最初の政権で予算を通そうとしても、政権をとった側の国会議員の中にも財務省の言いなりの議員が数多くいて、財務省の意向に反する予算案には賛成しないでしょうから通りません。そこで解散総選挙をして、永田町の政治に染まった議員は公認せずに差し替えます。国民のための政治をする新人を擁立してひっくり返すんです。

そうして2回目の総選挙で勝ったら、関連法案を通すために2回の参議院選挙にも勝つ必要がある。その間にもう一度衆議院選挙があるので、方針転換を行なうまでに5回の選挙が必要になると考えています。

5回選挙で勝ったら、そこからが本当のスタート。経産省も文科省も総務省もなくす「中央省庁大改革」をして無駄金を省きます。さらに47都道府県と約1700の市町村を一体化する「廃県置圈」を実行。行政を3層構造から2層構造にすることで無駄なコストが省けるし、地域ごとの特性を生かすこともできると考えています。

まずは財務省に打ち勝てるくらいの理論武装がいるので、具体的に数字を出さないと。それを思うとやることがいっぱいあるんです。

「日本の官僚制度を打破して国民を救う」という、亡き恩師・石井紘基さんのやりかけの仕事を引き継ぐことは、そう甘くない。実現するには20年くらいかかるかな。でも20年あったら、実現できる自信はあります。

取材・文/松山梢

『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』

泉房穂

2024年9月17日

1,045円(税込)円(税込)

新書判/256ページ

ISBN: 978-4-08-721330-0

2002年10月、右翼団体代表を名乗る男に襲撃され命を落とした政治家・石井紘基(こうき)。当時、石井は犯罪被害者救済活動、特殊法人関連の問題追及等で注目を浴びていた。その弱者救済と不正追及の姿勢は、最初の秘書・泉房穂に大きな影響を与えた。

石井は日本の実体を特権層が利権を寡占する「官僚国家」と看破。その構造は、今も巧妙に姿を変え国民の暮らしを蝕んでいる。

本書第I部は石井の問題提起の意義を泉が説き、第II部は石井の長女ターニャ、同志だった弁護士の紀藤正樹、石井を「卓越した財政学者」と評する経済学者の安冨歩と泉の対談を収録。石井が危惧した通り国が傾きつつある現在、あらためてその政治哲学に光を当てる。