リスク選好の雰囲気の中、ドル円は方向感なく上下動 前日のFOMCを再評価=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、全体的にはドル安の動きが見られた中、ドル円はボラティリティは高かったが、方向感はなかった。市場では前日のFRBの大幅利下げを再評価する動きが出ていた。前日はパウエル議長が利下げを急がない姿勢を強調したことからドル買いも見られていたが、今後の利下げが米経済を景気後退から守るというソフトランディングへの楽観的な見方に繋がっていた模様。市場にはリスク選好の雰囲気が広がっていた。

 パウエル議長は今年の追加利下げを示唆したが、段階的な利下げを示唆していた。しかし、市場は利下げへの見方を強め、短期金融市場では年内あと2回のFOMCで計0.75%ポイントの利下げの可能性を織り込み始めている。それは11月と12月のどちからでの大幅利下げを意味する。

 明日の日銀決定会合への警戒感が出ている可能性もありそうだ。今回は据え置きとの見方で一致しており、焦点は植田総裁の会見のトーンとなる。日銀は物価と経済データが目標に達した場合、金利を引き上げる可能性を強調している。

 それでも、米国債利回りは依然として日本国債よりも遥かに高水準で推移しており、それがドル円を下支えしているが、大きなトレンドは下向きとの見方は根強く、上値での戻り待ちの売りを推奨する声も少なくない。FRBが利下げに舵を切った中で、ドル円が145円を突破し、再び150円を目指す展開になるとは考えにくいようだ。

 ユーロドルは買いが優勢となった。NY時間に入って伸び悩む場面が見られたものの1.11ドル台はしっかりと維持している。ただ、ユーロ圏の景気の先行きに関しては不透明感も根強い。特にドイツ経済に不安が増している。本日は独連銀が月例報告を公表していたが、ドイツ経済は第3四半期に再び停滞もしくは若干のマイナス成長に転じると予想している。

 経済政策に対する不確実性の高まりが投資活動を抑制する一方で、資金調達コストの上昇が企業に依然として影響を与えていると分析した。賃金交渉により賃金上昇率は大幅に上昇し、労働市場の見通しは比較的安定しているものの、個人消費には勢いが見られていないという。また、インフレも再びやや上昇すると報告書では述べている。

 同国経済は第2四半期に前期比0.1%のマイナス成長を記録したが、第3四半期に再びマイナス成長を記録したとしても、エコノミストはまだ長期的かつ広範囲な景気後退は予測していない。

 きょうのポンドドルは一旦1.33ドル台まで上昇したものの、NY時間に入って伸び悩む動き。ただ、21日線の上を維持し上向きの流れは継続。一方、8月に付けた直近高値を上回って来ていることもあり上値での売りオーダーも出るようだ。

 きょうは英中銀の金融政策委員会(MPC)の結果が発表になり、予想通りに政策金利を据え置いた。ベイリー総裁は利下げについて、急ぎ過ぎず、過度に行わない方針を示唆したこともあり、結果発表直後のポンドは買いの反応を示していた。一部からは、名目と実質の金利差縮小が有利に働くことから、ポンドは今後数カ月に渡りドルに対して上昇を続けそうだとの見方も出ている。政策委員の投票行動は予想通りに分かれたが、利下げを支持した委員は1人だけだった。

 採決は前日のFOMCの結果発表前に行われていたようだが、英中銀の声明からはハト派な雰囲気は全くない。ベイリー総裁のコメントは十分に長く景気抑制的な政策を続けることの必要性を強調しており、大半の委員は漸進的なアプローチが必要とみなしていた。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美