【FRaU編集部】クレジットカード使用9000円で「金融事故」。36歳会社員がローン却下された原因

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ローンを組むときの「審査」。たとえばクレジットカードで長期間にわたる未払いがあると、「金融事故」があったみなされ、ローンを組むことができない。

筆者は、クレジットカードの未払いはないはずだった。給与所得の範囲内で無理のない住宅ローンを組もうと考えた。しかし住宅ローンを組むことができなかった。一体それはなぜなのか。

その原因となったのが、住宅ローンを申請する1年前に使ったクレジットカードだった。前編「30代会社員が数年未使用のクレジットカードを使用して起こった「悲劇」」でお伝えしたように、長年使ってなかったクレジットカードを使ったことで、知らぬ間に金融事故を起こしてしまっていたのだ。

「日本クレジット協会」の調査によると、2023年のクレジットカードの使用額は、2013年に集計方法を変更してから過去最大額を記録している。そして「信用供与残高」は20兆891億円と、初めて20兆を超えている。クレジットカードとは「信用のもとにお金を借りている」ことを忘れてはならない。

後編では、その理由が明らかになったときのことをお届けする。大変恥ずかしいことではあるが、こんなこともあり得るのだ。なお、2007年の話なので、クレジットカードの仕組みや審査は多少変化している可能性もあることをご了承いただきたい。

金融事故を起こすと5年間はローンを組めない

ローンを申請する際、審査に落ちる原因のひとつに挙げられるのが、クレジットカードの未払いだ。残高不足で引き落とせなくとも、通知後すぐに支払えば大丈夫なのだが、3ヵ月以上滞納していると「金融事故」を起こしたとみなされ、支払い後5年間はローンを組むことはできないといわれている。クレジットカード引き落としの銀行をメインバンクと分けているときは注意が必要だ。

クレジットカードの未払いはないと思いこんでいた筆者は、住宅ローンの審査に落ちたことで、自分のしでかした大きなミスを知ることになった。

身分証明書などを持ち向かったのは、不動産業者から紹介された全国銀行個人信用情報センター(KSC)だった。ちなみに、信用情報機関には他にもCIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)などがある。

2024年の今、それぞれのHPを見てみると、現在はオンラインでの申告が基本となっている。マイナンバーカードで本人確認をし、クレジットカードやPayPayで手数料の支払いもできる(本人確認がマイナンバーカードだけなのか、という疑問は今は横に置く)。郵送でもできると書かれているので、調査したい方は是非HPを確認してほしい。2007年当時は急ぎで確認したい場合、直接現地に行く方がベストだと言われた。そして筆者の金融事故の内容が明らかになった。

それは、1年前、父が急に倒れて緊急帰国した時に久々に使ったクレジットカードの9000円ちょっとの金額の滞納だったのだ。なぜ? クレジットカードの引き落としはすべて同じ銀行にしているはずなのに……そう思いながら、その名前を見てハッとした。

クレジットカードは結婚前に作ったもので、旧姓だった。そして旧姓のまま放置していた銀行口座に紐づいたカードだったのだ。

メインバンクの変更、姓の変更…

筆者は結婚前、実家の近くにある銀行の口座と、会社の近くにある銀行の口座を持っており、ふたつの銀行に分けて給与を振り込んでいた。しかし就職後、実家を出て会社の近くに一人暮らしをすることに。会社の近くには実家近くにあった銀行もATMもなかったこともあり、給与振り込みをはじめ、使用する銀行を会社近くにある銀行に統一することにした。

その後結婚して姓を変えたのだが、当時銀行の口座名を変えるには戸籍謄本と身分証明書、旧姓の印鑑証明と代わった姓の印鑑証明、そして両方の印鑑を持って窓口に行かなければならなかった。印鑑証明を作ることやパスポートの名称変更など結婚に伴う手続きも多く、銀行の窓口でも長く待つことがほとんど。

給与振り込みをしている銀行の口座を変更するだけで精いっぱいで、「どうせ今は使ってないから、あの銀行は今はいいだろう」と、実家近くの銀行へは名前の変更に行かなかった。つまり、旧姓のまま、残高もほとんどない状態で口座を放置してしまっていたのだ。

しかも、旧姓のままのクレジットカードに登録されていた住所は、引っ越し前の住所のままだった。

2006年に使用したクレジットカードの代金は9000円ほど。つまりは、その引き落としが実家近くの銀行からはできず、残高不足の通知が送付されたのはすでに暮らしていない場所だったのだ。筆者は通常使用している銀行から引き落としがされていると思っていたので、無意識のうちに使い逃げをしていた。完全なる金融事故だ。

クレジットカードは旧姓のまま。それに気づかずに利用し、サインは結婚後の姓でしていた。サインはカードに書かれているものと違ったが、それは指摘されないままに使用することができた。たしかに、店頭でクレジットカードのサインを確認されること自体、あまりないし、客から「疑ってるのか!」と言われることもあるのかもしれない。使えたことに文句を言える筋合いもない。

怠慢が原因としかいえないのだが…

筆者が「金融事故を起こした」経緯をまとめると、以下のようになる。

1)  メインバンクを変更し、ほとんどそちらに貯金を移動させていた。

2)  結婚後、変更前の銀行の名前の変更申請や、そこに紐づいたクレジットカード銀行登録の変更や名前の変更もしていなかった。

3)  持っているクレジットカードの枚数などを明確に把握しておらず、名前の変更をしていないカードがある認識がなかった。

4)  旧姓のままのクレジットカードを使ってしまった。

5)  クレジットカードとは違う姓のサインをしていたが、使えてしまった。

6)  残高のない銀行口座に紐づいているので、引き落としができなかった。

7)  カードの住所変更をしていなかったので、引き落としできなかった連絡を受け取ることができなかった。

8)  他のクレジットカードの引き落とし明細の細かいチェックもしていなかったので、かつて買い物をした支払いができていないことに気づかなかった。

この後すぐにカード会社に連絡をして事情を伝え、引き落としできなかった金額を即座に振込んだ(とはいえ使用から1年以上経っている……)。住宅ローンを申請しなかったら、そのままになってしまっていたと考えるとゾッとする。自分がローンを借りられないということも残念だったが、払うべきお金を払っていなかったのだ。すべては姓の変更や口座の整理、カードのチェックをしていなかった筆者が悪いと心から反省した。

その後筆者が急ぎしたことは、クレジットカードを整理し、自分が認識できる枚数に絞ること。そして引き落としがされる銀行口座も統一した。さらに、その後明細を電子で受け取れるようになってからは、郵送ではなく電子版で受け取るようにも変更し、必ず内容を確認するようになった。2006年当時は郵送のみだったので、日本の夫の実家にしており、それをわざわざ転送してもらうこともしていなかったのだ。

しかし同時にちらっと、「姓を変えずに済んでいたらこうはならなかったかも」と思ったことも事実だ。役所に行き、銀行の窓口やパスポートの窓口に通い、結婚して姓を変えるとこんなに面倒なのか! と愕然とした。そういうわずらわしさもあって、情報をアップデートしないままの口座やカードを残してしまっていたという面も否めない。それはほんの一部で、カードの管理と確認をしていさえすれば問題はなかったのだが……。

とはいえ、最も大切なのは、カードの数を自分が確実に把握できるだけにして、住所なども含めてきちんと情報をアップデートすること。この騒動の原因は筆者の怠慢以外の何物でもないが、こういう金融事故もあり得るのだ。しかしクレジットカードは、使い方をきちんとすれば本当に便利なもの。今でも何枚か利用しているが、きちんと管理する重要性を身をもって学んだ。ちなみに、それから5年以上経ったあと、信用は回復している。

文/FRaUweb 新町真弓

30代会社員が数年未使用のクレジットカードを使用して起こった「悲劇」