【佐藤 大輝】「給料泥棒」と罵声を浴びせる、退職届を破る…話題の退職代行企業が明かす「ヤバい会社の実態」

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退職代行サービスの勢いが止まらない。昭和の企業戦士の方々や、筆者のように会社を相手どって訴訟までした経験者からすると、人の力を借りて退職をするというのは想像がしづらいのだが……。市場では女性向けの代行サービスや、弁護士による代行サービスが始まるなど、独自のカラーを打ち出す業者が乱立している。

このような退職代行戦国時代の中で、連日メディアに引っ張りだこの話題の企業がある。「退職代行モームリ」を運営する株式会社アルバトロスだ。退職代行を利用する人や、利用される側の会社の実態について、同社に話を聞いた。

聞き手:佐藤大輝(ブラック企業と2回裁判した人)

相談件数が急上昇している「退職代行」

「退職代行モームリ」の利用料金は、正社員なら税込み2万2000円。アルバイトなら1万2000円。24時間365日いつでも連絡、即日対応が可能。労働環境改善組合と提携しているため、労働条件その他の労働問題について、会社側と交渉することが可能……。

このような特徴のあるサービスだが、筆者がまず興味をいだいたのは、そのサービス名だった。

――なぜ、「退職代行モームリ」というサービス名にしたのですか?

代表である谷本慎二がドライブ中、ふとした瞬間に「モームリ」というワードが浮かびました。日常生活で「もう無理」というワードは頻繁に使用されます。身近でキャッチーなサービス名であれば、多くの方々に覚えてもらえる。退職代行の認知を広めることができるとも考えました。

――御社の利用者データを、可能な範囲で教えていただけますでしょうか。

2024年度のご利用者様は、5月25日時点で4695名です。2023年度は年間で4334名でした。月単位の場合、直近の5月は25日時点で1508名。4月は約1400名のご依頼がありました。

1日単位の相談件数ですと、最高だったのは今年の5月7日で、合計174名(正社員123名、パートアルバイト23名、契約社員17名、派遣社員11名)の方からご依頼がありました。2022年3月のサービス提供開始から、累計1万5000人近い利用者数になります。

ご依頼者様で多いのは20〜30代の方で、弊社の相談数の内、全体の約60%を占めています。なお、新卒1年目の方の割合は、相談数全体のおおよそ15%です。

――依頼者の方は、なぜ退職代行を利用するのでしょうか。理由をいくつか教えてください。

サービス利用者の退職理由トップ5を挙げると、1位は各種ハラスメントを受けている。2位は退職を止められる。3位はサービス残業がある。4位は勤務外での仕事がある。5位は有給が使えない……以上となっております。

ご依頼者様から退職理由を聞く限り、劣悪な労務環境や、違法な労働を強いる企業が散見されます。こういった企業が存続する限り、退職代行サービスが無くなることはない、そう私たちは考えております。

「退職代行を使われる会社」の特徴とは?

――世に言うブラック企業問題が、今も日本社会には根強く残っているということですね。

印象的なエピソードですと、退職届を目の前で破られた方や、退職する際に上司から「陰陽師代として120万円を支払え」と請求された方がいました。暴言を受けた方も多く、「ぶっ殺すぞ」「給料泥棒」「おい童貞」といった言葉を浴びせられた方もいました。

――1万件の依頼を受けてきて、退職代行を「使われる会社」の共通点のようなものは感じますか?

第一に、労務管理が適切であれば、ほとんど当社に依頼はありません。何かしら労務関係に不備があり、その土台の上で、人間関係での悩みが発生している会社が多く、この部分は共通しているように感じます。

弊社から退職連絡をした際に、「当社の従業員がお手数お掛けして申し訳ない」「今後の改善のために、退職理由や詳細を詳しく伺いたい」など、退職の事実に真摯に向き合っている企業様は、退職代行を再び利用されるケースはほぼありません。

しかし、当社や依頼者に対して高圧的なスタンスの企業様は、同じようなご依頼者様が繰り返し現れている印象があります。

――ちなみに退職代行業務でトラブルなどはあるのでしょうか。

退職代行を利用したからトラブルになると言うより、元々会社とのトラブルがあった状態でご依頼された結果、話が進まないといったケースはあります。退職をスムーズに行うためにも、そういったトラブルは解決した上で、ご依頼いただくことをお願いしてます。

――退職代行サービスを通して、「Z世代の特徴」のようなものを感じることはありますか?

たしかに昔と比べると、簡単に退職を選ばれている方が増えている印象を受けます。ただし日本企業、あるいは日本社会を取り巻く環境が変わってきているので、時代に合わせて、企業側の考え方も変えていくべきかなと。

――たしかにそうですよね。

本音を言えば、私たちのような退職代行サービスは、社会から無くなることが一番だと思うんです。

けれど現状は、Z世代の方を含め、多くのビジネスパーソンが退職に伴い、苦しんでいる。我々としては、困っている人を少しでもサポートできるよう、引き続き活動していきたいと考えております。

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後編記事〈電話一本で行なわれる「退職代行」の「やり取りの中身」…会社側とは一体何を話しているのか?〉では、実際に退職代行でどのようなやり取りがされるのかなど、引き続き、「退職代行モームリ」(株式会社アルバトロス)に話を聞いていく。

電話一本で行なわれる「退職代行」の「やり取りの中身」…会社側とは一体何を話しているのか?