東京・南青山の青山通りと六本木通りを結ぶ「骨董通り」は、クラフトマンシップ溢れるショップやギャラリーなどが立ち並ぶエリアだ。約900mある通りの真ん中ほどに、日本の伝統技術を持つ作家や職人との共創を目指したカフェ「松葉屋…

東京・南青山の青山通りと六本木通りを結ぶ「骨董通り」は、クラフトマンシップ溢れるショップやギャラリーなどが立ち並ぶエリアだ。約900mある通りの真ん中ほどに、日本の伝統技術を持つ作家や職人との共創を目指したカフェ「松葉屋茶寮」が2023年12月にオープンし、話題となっている。日本文化と伝統技術を体感できるカフェの魅力をお届けしたい。

創業117年の老舗「縄屋 忠右衛門」のしめ縄がお出迎え

「松葉屋茶寮」に着くと、まずその店構えに驚く。入口には、神聖な場であることを表すしめ縄がシンボリックに飾られ、何とも言えない荘厳な空気を放っている。しめ縄は、明治40(1907)年創業「縄屋 忠右衛門」(東京都江戸川区)が手がけたこだわりのもの。内装は、日本の自然素材や古道具を取り入れ、伝統と現代の融合を反映したデザインに仕上げている。

「縄屋 忠右衛門」のしめ縄

店の奥には、6人まで腰掛けることのできるカウンターの茶席があり、その手前には盆栽や現代アート、器などの展示を行う「方舟ギャラリー」を併設している。侘び寂びを感じる静寂な空間の中、手仕事によって生み出されたものたちと対峙する、とっておきの時間を楽しもう。

ギャラリーを抜け、御簾をくぐると茶席が広がる

おススメは「二茶二菓」4000円、お茶を点てる光景を眺めながら過ごす

カウンターではお茶を淹れる光景を間近で観賞できるのがうれしい

「濃茶(こいちゃ)」や「季節の玉露」、「ほうじ茶」などのお茶と菓子、こだわりの酒などが堪能できる茶席にぜひ立ち寄ってみてほしい。おすすめは、2杯のお茶と2種の菓子が味わえる「二茶二菓」(4000円)だ。お茶は日本全国の生産者から直接取り寄せた有機栽培の7種の茶葉の中から、好きなものをセレクトできる。

香りを確認しながら茶葉を選んだら、お点前を楽しもう

目の前でお茶を点てる光景を眺めながら過ごすひとときは、いつもとひと味違う極上の時間。茶葉本来の風味を引き出すため、温度や抽出時間などにこだわって丁寧に淹れた一杯を、じっくり味わうことができる。

香りを確認しながら茶葉を選んだら、お点前を楽しもう

話題の菓子ブランド「OKASHIYA」のスイーツ

菓子は伝統的な「季節の和菓子」や「練り切り」をはじめ、今までにない驚きと幸せを感じる和洋菓子を届けることをコンセプトとした話題の菓子ブランド「OKASHIYA(オカシヤ)」のスイーツが選べる点にも注目だ。

香り高く、滋味深いトリュフクッキーに、フレッシュなバタークリームを目の前で搾り上げて仕上げる「OKASHIYA」の「トリュフバターサンド」は、一度食べたら病みつきになること間違いなし。ひとつひとつの素材の味の輪郭が際立ちながらも、一緒に口に含むと絶妙なハーモニーを奏でる、いちおしの逸品である。

お茶とセットにできる「OKASHIYA」の「トリュフバターサンド」

テイクアウトできる「OKASHIYA」の「日本のクッキー」(5枚入り1250円、13枚入り2800円)は、仕事先や友人への差し入れにもぴったり。香ばしい味わいの「古代小麦クッキー」や、大豆の風味が力強い「きな粉クッキー」、青のりの独特の風味が凝縮された「青のりクッキー」など、ユニークな素材を主役にしたものが豊富だ。

手土産にもおすすめの「日本のクッキー」

「TRADMAN’S BONSAI」の盆栽を愛でる極上の時間

ティータイムを満喫したら、展示された骨董品や現代アーティストが手がけた器をゆっくりと鑑賞しよう。商品はどれもスタッフが作家の元に出向いて目利きした、趣深いものばかりだ。

骨董品や現代アーティストが作ったオブジェ

「この展示や販売を通して世代を超えて受け継がれてきた技術を継承し、職人たちの価値向上を図っていくことができたらと考えています」と、「松葉屋茶寮」の店舗責任者。

さらに、ギャラリーではなかなか見られない、盆栽も鑑賞・購入できる。いずれもアパレルショップやハイブランドとコラボレーションを行い、既成概念を超えた盆栽を発信し続けるアーティスト集団「TRADMAN’S BONSAI(トラッドマンズ盆栽)」を運営する「松葉屋」(東京都荒川区)の小島鉄平社長が手がけたものだ。

凛とした佇まいの盆栽

日本の伝統文化の奥深さを知る

「ここでは日本の伝統的な文化や美意識、職人の手仕事を伝え、それを通じて訪れるすべての方にその奥深さを体感していただくことを目指しています。実際に訪れるゲストは海外の方もいらっしゃいますが、日本の方にとっても日本人としてのDNAが呼び覚まされるような、価値ある体験ができる場になっていると思います」と、店舗責任者。

手仕事で作られたものの美しさとストーリーを尊重し、過去の知恵と技術を未来へと繋ぐ「松葉屋茶寮」。古来の美意識に改めて触れることで、今まで気づかなかった日本の魅力を再発見できるかもしれない。

洗練されたギャラリースペース

「松葉屋茶寮」
[住所]東京都港区南青山5-4-27 「Barbizon104」1階
[営業時間]10時〜 20時
[休日]不定休
[交通]地下鉄銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅 から徒歩7分
https://www.instagram.com/matsubayasaryo

文・写真/中村友美