夏休みもあと残りわずか。そろそろ新学期が始まりますが……(写真:Fast&Slow/PIXTA)

【質問】

小5と小3の子どもがいます。夏休みが終わりに近づくにつれて心配事が増えています。例えば、起床や就寝時間、夏休み限定で延ばしたゲームや動画の時間といった生活習慣の問題、2学期になって周囲の子たちと勉強で差がついているのではないかといった学習面の心配です。どこも同じだと思いつつも、我が子のことになると、やはり不安になってきます。9月に向けてどのような対応をしたらよいでしょうか?

仮名:伊東さん

夏休みモードから平常へどううまく戻すか

北海道や東北の一部では、すでに夏休みが終わって新学期が始まっているところもありますが、多くの都道府県ではまだ夏休み中です。しかし、あと1週間もすると、子どもたちの学校生活がまた始まります。

この時期になると、生活リズムを元に戻すことに不安を感じる親御さんも少なくありません。不登校気味だった子の場合、果たして学校にしっかり行ってくれるだろうかという相談が全国からいくつも来るのもこの時期です。

文科省のデータによれば、不登校数が増えるのは新年度が始まる4月、5月が最も多いですが、9月、10月もそれに次いで増加する時期のようです。長期間の休みによって、心身ともに休日モードに慣れてしまっているため、平日モードに戻し切れないことがあるということかもしれません。

また、中学受験、高校受験を来春に控えている子がいる場合は、「夏が受験の天王山」などと言われるため、夏で相当差がついてしまっているのではないかと心配になる親御さんもいます。もちろん夏に頑張った子はそれなりに力がついていることは確かですが、夏に頑張りすぎて9月以降失速する子もたくさん見てきました。

ですから、夏で受験が決まるというわけではなく、受験日まで徐々に高めていく子の方が受験に向けて大きすぎるストレスを抱えることなく自然に乗り切ると筆者自身は捉えていたりもします。

いずれにせよ4月の新学期にも増して、9月の新学期は心配事が多い時期なのです。

さて、ここからが本題となります。夏休みから新学期に向けて最も大きな課題となるのは、「休日モードに慣れ切った生活リズムを、いかに早く元に戻せるか」ということです。

土日2日間の休日を終えての月曜日ならまだしも、30〜40日も休日モードであった後の平常モードへの転換ですから、それは容易ではありません。

そこで、必要な対策としては、新学期が始まる前に“助走期間”を作ることだと考えています。

調整は学校が始まる1週間前から

筆者はこれまで多くの子どもたちを指導してきましたが、この時期に必ず伝えていたことがあります。それは、「学校が始まる1週間前から調整する」ことです。

1週間あれば月曜から金曜の平日パターンをすべて予行練習することができます。すると新学期が始まったときにスムーズに新しい生活パターンに移行できます。

さて、以上を前提として伊東さんには、次のような提案をしたいと思います。

(1)起床時間と就寝時間について

もともと学校に行く日は7時に起きていたのが、夏休み中は8時に起きていたとしましょう。それを元に戻すために調整をしていくのですが、残された夏休みの1週間でいきなり、元の7時起床にはしません。新学期に向けて「徐々に近づけていく」、つまり、7時半起床にしていくなどとします。

もちろん、夏休みギリギリまで休日モードで過ごして、学校が始まる日になっていきなり平常モードにすることも可能です。しかし、段階を経ながら身体を慣らしていく方が自然であり、大きなストレスが子どもにかかりません。時差ボケを徐々に解消していくイメージです。

なお、なかなか起床・就寝時間が変えられない場合は、起床時間から変えていきます。すると夜が早く眠くなるため、早寝早起きができるようになっていきます。

(2)ゲームや動画など余暇について

学校があるときもゲームや動画は楽しんでいたと思いますが、特に夏休みはいつも以上に時間が増えていたのではないでしょうか。

一旦増えた時間を減らすことは簡単ではありませんが、幸いにして学校に行っているときはゲームも動画もできません。ですから学校に行きさえすれば自然と時間は減り、平常モードに戻っていきます。さらに学校が始まったら、夏休み中とは異なるルールになることを子どもは暗黙の了解として理解していると思います。

したがって、ゲームや動画についてはこれまで家庭で決めたルール通りに進めていくことをお勧めします。夏休みが終わるまでの残り1週間で時間調整することなく、規定通りに進めていくということです。

もし、夏休み中にもかかわらず、徐々にゲーム・動画時間を減らすことや、学校がもうじき始まるという理由で夏休みルールを突然破棄することを親が一方的に行うと、親子の信頼関係が崩れていく可能性がありますので注意が必要です。

(3)学習について

学習に関しては一般論ですが、新学期になって大きな差がついているということはあまりありません。もちろん、夏休み中に最低限の課題をやっていることが前提となりますが、受験生を除いて、夏休み中に猛烈に勉強していたという子はほとんどいないと考えています。

ただし、算数について、ほとんど手をつけていなかったとしたら、差がついている可能性があります。算数は筋トレに似ており、一定期間やらないと計算力含め鈍っていきます。もちろん9月以降に取り戻すことは可能ですが、9月になると学校は学習内容を先に進めるため、新しい学習をしながら力を取り戻していくことになるため負担が増えていきます。

ただし、伊東さんのお子さん含め、ほとんどの小学生は夏休みの宿題+α程度は行っており、算数をほとんどやっていないとは考えにくいため伊東さんが心配するほどの差はついていないと考えられます。

適切な伝え方でモード転換を促すことが大切

以上をまとめると、この時期の大切なキーワードは、「生活時間のモード転換を行う」になります。その中でも核となるのが、起床時間です。これでリズムを1週間程度で戻していきます。

最後に大切なことを1つお伝えします。それは「伝え方」についてです。

上記のことを、親が主導で行うわけですが、子どもの同意なく、また理由を子どもに伝えることなく一方的に進めることだけは避けてください。

例えば、「もうじき学校が始まるんだから、早く起きる練習しておかないとね!」という言葉は、一見丁寧に伝えているようにみえますが、現実的には一方的な命令に近い言葉になっています。このような言い方では子どもは全く反応しないと思います。なぜなら理由がないことと、実行することのメリットが感じられないからです。

そのような命令的表現ではなく、「身体のリズムを元に戻すのに1週間はかかるみたいだから、学校始まる1週間前から調整をしていくのはどうかな。そうすると学校が始まるとき、とても楽になるみたいだよ」と提案と伝聞形で話をしてみてください。そして、子どもがこの提案を受け入れたら、夏休みモードから学校モードへ調整するプランを子どもと一緒に立ててみてください。すると初めから新学期のリズムに乗ることができると思います。

以上、参考になれば幸いです。


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)