※写真はイメージです。以下同(Photo by Adobe Stock)

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 文化庁が発表した『宗教年鑑』によると、日本には180,544もの宗教法人があるという(数字は2020年12月31日までのもの)。近年、宗教信者数は減少傾向にあるようだが、それでもこれだけ多いからか、トラブルの話はよく聞くところだ。

 宗教団体によっては、信者たちに献金や勧誘の実質的な「ノルマ」が存在しているとも言われているが、その手法や口説き文句については疑問視せざるを得ないケースもある。

◆非行に走る息子に恐怖「いつか殴られるかもしれない」

 専業主婦のA子さんは約10年前、生活上のある悩みを抱えていたころ、某宗教団体の勧誘を受けたという。

「その頃、当時高校1年生だった1人息子が不良グループに所属してしまい、私は精神的にかなり追い詰められていたんです」

 小・中とおとなしかったA子さんの息子。だが、高校入学後に仲良くなった友達の1人が不良グループと付き合っており、彼の交友関係も変化してきたという。

「最初は門限を破るレベルでしたが、息子の机の引き出しからタバコが出てきたんです。そのことを注意すると、今までになかったくらい激しい口調で罵倒されました」

 A子さんは「いつか殴られるかもしれない」と恐怖を覚えた。高校生とはいえ、やはり腕力では敵わない。それ以来、彼の言動をとがめることができなくなったという。そして、状況は悪化する。

◆パート先の同僚から「どうしたの?」

「深夜の公園で爆竹花火をしたり、土手でタバコを吸ったり、コンビニの前でお酒を飲んだり、ケンカをしたり。何度も補導され、そのたびに警察署に出向きました」

 当時、A子さんの夫は単身赴任で地方に住んでおり、子育ての悩みを1人で抱えなければいけなかったそう。当然、精神は不安定になっていく。

「息子が遅くまで帰ってこないと、『また何か悪いことをしているのでは?』と不安になり、一睡もできないことがよくありました。食欲もなくなり、顔もかなりやつれていたと思います」

 そんなA子さんの唯一の相談相手が、彼女が当時パートをしていた飲食店の同僚女性だったという。

「私に元気がなかったからなのか、向こうから『どうしたの?』と声をかけられ、悩みをすべて話したんです。その後は、何度も息子の相談を聞いてもらっていました」

◆「私の味方になってくれる人だ」と心から思った

 そして、何度目かの相談の後、同僚女性から「息子さんを更生させることができるかもしれない。ある先生を紹介したい」と言われたのだ。

「思わず『ぜひ紹介してください!』と即答しました。そのときの彼女の姿は、まるで後光が差しているようでした」

 数日後、同僚女性と喫茶店に向かったA子さんは、白髪の中年男性と会うことになる。落ち着き払った紳士然とした佇まいで、「人を安心させる雰囲気があった」と彼女は話す。

「私が抱えていた息子の悩みを洗いざらい話しました。彼は終始、おだやかな笑みをうかべながら相槌を打ってくれていて、『私の味方になってくれる人だ』と心から思ってしまいました」

 A子さんが「おかしいな」と思ったのはお金の話がでてきたころ。当初は、更生プログラムの費用かな? と思ったそうだが、そうではなかった。

◆入信しなければ「息子の将来が終わるぞ」

「男性から、『お金はどれくらいご用意できますか?』と聞かれたので金額を言うと、『それじゃあお香かなぁ?』と、2人で相談し始めたんです。そして、『部屋全体を浄化するお香をお譲りします』と言われたんです」

 明らかに、息子の更生とは関係のない話である。だが、いつもよき相談相手となってくれていた職場の同僚女性から「部屋全体の気の流れさえ整えれば、息子さんの心も浄化される」と言われて初めて、A子さんは宗教の勧誘だということに気づいたのだ。