オールシーズンタイヤは冬道でも本当に大丈夫? スタッドレスタイヤと実際どこがどう違う?

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そもそも「オールシーズンタイヤ」ってなに?

 最近、日本でもよく聞かれるようになったタイヤのジャンルが「オールシーズンタイヤ」です。

オールシーズンタイヤの実力はどんなものなのだろうか?

 オールシーズンタイヤとは、春/夏/秋のドライ路面、ウエット路面だけではなく、冬のスノー路面も走行できるという特徴があり、1年中履き替えの手間がいらないということで、とくに普段あまり雪の降らない都会派のドライバーから支持されているといいます。

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 スタッドレスタイヤと同様に冬用タイヤのため、降雪時の高速道路で冬用タイヤ規制が入ってもオールシーズンタイヤを履いていれば走行することが可能です。

 その実力はどんなものなのでしょうか。ダンロップのオールシーズンタイヤ「オールシーズンMAXX AS1」の試走会が、長野県・白馬のスキー場をベースに開催されました。

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 じつはオールシーズンタイヤの歴史は長く、いまから40年以上前の1977年、グッドイヤーが北米で「Tiempo(ティエンポ)」という世界初のオールシーズンタイヤを発売しています。

 日本では、2008年からグッドイヤーが「ベクターフォーシーズンズ(ベクター4)」を発売したのが最初です。以来、ベクター4のみの時代が続きましたが、2018−2019年シーズンにはミシュラン、ファルケンブランドからオールシーズンタイヤが発売されていました。

 そして翌2019−2020年シーズンから、ついに国産ブランドから本格的にオールシーズンタイヤが登場しました。トーヨータイヤ、ダンロップ、ヨコハマと、大手メーカーではブリヂストンを除きすべての国産タイヤブランドから発売されました。

 ダンロップのオールシーズンMAXXは、2019年8月に発売されたオールシーズンタイヤで、いまでは13インチから20インチ、45シリーズから80シリーズまで全41サイズと、豊富にラインナップしているのが特徴です。また商用車用として「オールシーズンMAXX VA1」も3サイズ用意しています。

どんな人にオールシーズンタイヤは向いている?

 まずは195/65R15 91Hサイズを装着したトヨタ「プリウス」で、長野県・白馬五竜スキー場周辺を走行します。

ダンロップ「オールシーズンMAXX AS1」を装着したトヨタ「プリウス」で雪道を走行

 今シーズンは全国的に降雪量が多かったといわれますが、ここ長野でも同様だったといいます。3月前半だったのにもかかわらず、試走会前日にもかなりの雪が降りました。スキー場周辺の一般道は除雪車が入り、どこもきれいな圧雪路になっていました。

 そんななか、ダンロップ・オールシーズンMAXXを装着したプリウスは、とにかく何事もなく走行できます。発進・加速、そして減速・制動。制限速度内で走るぶんには、ヒヤッとすることもなければタイヤを意識することもありません。

 ただし、一般道ではさまざまな路面が存在します。コーナーリング中、アイスバーンになっている場所で横に滑り、プリウスのVSC作動ランプが点灯しました。それほど速度も出ていないため、ヒヤッとすることはありませんでしたが、スタッドレスタイヤ装着ならば普通に走れるようなところです。

 午後は215/60R16 95Hサイズを装着したホンダ先代型「ヴェゼル」で走ります。

 朝は氷点下だったのですが、この日の日中の気温は10℃を超え、路面状況もみるみる変化していきます。朝方プリウスで通った圧雪路が、午後には完全にドライ路面になっていたほどです。ヴェゼルでは国道148号を中心に走りましたが、路面はドライもしくはウエット路が中心でした。

 ドライ路面では、オールシーズンMAXXはほとんどタイヤのクセを感じません。オールシーズンタイヤでありがちな「シャー」というパターンノイズもあまり目立ちませんし、ハンドリングもシャープでもなく、かといってダルくもなく、感覚的にはスタンダードなエコタイヤに乗っているイメージです。

 実際に長期間走って試したわけではないので、転がり抵抗性能や高速性能などはわからないのですが、たしかにこれならば、春/夏/秋とそのまま装着していても、ネガティブな印象は受けないと感じました。

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 全体的に好印象だった試走でしたが、ぶっちゃけオールシーズンタイヤはどんな人に向いているのでしょうか。

 オールシーズンタイヤのメリットは、その名のとおり1年中履き替えなしで装着できることです。これにより年2回のタイヤ交換の手間がなくなりますし、外したタイヤの保管場所に苦労することもなくなります。

 日本の冬道で一番過酷なのは、アイスバーンと呼ばれる凍結路です。日本においてスタッドレスタイヤは、こうした凍結路でいかに短い距離で止まるようになるのか、進化し続けてきた長い歴史があります。オールシーズンタイヤは、アイスバーンでの制動距離はスタッドレスタイヤにはまったく敵いません。そういった意味では、降雪地域のユーザーは冬にオールシーズンタイヤを履くのはオススメできません。

 かといって、オールシーズンタイヤが都会派ユーザーだけのためのタイヤかというと、じつはそうでもありません。いつもは雪の降らない都会でも、雪が降ると裏道などでは1週間ほど凍結する場所があります。こうした凍結路が発生しやすい場所の近くに住むドライバーは、冬はスタッドレスタイヤ、夏はサマータイヤを装着するほうが良いと思います。

 一方、降雪地域のドライバーでも、夏タイヤの代わりにオールシーズンタイヤを選ぶという選択肢もあります。こうすることで、季節はずれの突然の雪にも対応できます。自分のライフスタイルに合わせたタイヤ選びをしたいところです。