自分の選んだ自治体に寄付をすると、税金の控除を受けられるふるさと納税。しかし、その仕組みや手続きをよくわかっていないと、かえって損をしてしまうこともあります。12月は駆け込みでふるさと納税が増える時期です。あわてて損をしないように、ふるさと納税でよくある失敗例について解説します。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体などに寄付をする制度です。2,000円を超える部分について、一定額まで所得税や住民税が控除されます。たとえば、年収500万円の独身の人が、5万円のふるさと納税をして手続きをすると、48,000円が所得税や住民税から控除となり、寄付のお礼として地域の名産品などを受け取れる楽しみもあります。

税金から控除になる金額の上限は、年収や家族構成などによって異なります。所得税と住民税の基本分、特例分から計算されます。計算が複雑なので、ふるさと納税の各ポータルサイトから上限額のシミュレーションを行って、2,000円の自己負担で寄付できる金額の目安を確認しておきましょう。

ポータルサイトでシミュレーションして寄付したにもかかわらず、自己負担額が2,000円をオーバーしてしまったという話も聞きます。なぜオーバーしてしまったのか、ここからは失敗例で学びましょう。

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よくある失敗例その1…控除額が変わった!

ふるさと納税は、1月1日から12月31日までに寄付をすると、所得税はその年の納税分から、住民税は翌年度の納税分からが控除される仕組みです。そのため年内に寄付の申し込み手続きが完了しないと税金の控除を受けることができません。せっかく申込みをしたのに手続きの完了が次の年だった、ということがないように余裕を持って手続きを行いましょう。

また、前年と収入や各種控除の額が大きく変わったという人は注意が必要です。以下、ふるさと納税の控除額に注意した方がよい人について整理しておきます。

(1)住宅ローン減税を受ける人

2021年に住宅を購入して住宅ローン減税を受ける人は、年末のローン残高の1%が払った税金から控除されます。ただし、住宅ローン減税の控除分だけで所得税がゼロになる人の場合、ふるさと納税は所得税からの控除は受けられません。

(2)iDeCoを始めた

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は、税金を計算するもとになる課税所得から差し引くことができます。たとえば、年間の掛金が12万円なら課税所得から12万円を差し引けるため、ふるさと納税の控除額も若干減ります。

(3)保険料控除や医療費控除などの所得控除がある

保険料控除、医療費控除など所得控除の対象となる金額が多くなるほど、課税所得が減り、その分控除額の上限も減ります。ほかにも自営業者の人であれば小規模企業共済や国民年金基金などに加入している場合は注意しましょう。

各種控除が心配な人は、必ず各ポータルサイトの詳細シミュレーションに各控除額を入力して、上限一杯ではなく少しゆとりを持った金額をふるさと納税に当てましょう。

また、12月になれば1年間の収入や控除額の目安も付けやすくなります。年内に源泉徴収票が出る会社であれば、2021年の源泉徴収票を手元にシミュレーションするのが確実でしょう。

よくある失敗例その2…手続きを忘れた!

返礼品に気をとられて必要な手続きを忘れると寄付金控除を受けられません。控除を受ける手続きにはワンストップ納税と確定申告の2つの方法があります。

(1)ワンストップ納税

確定申告が必要ない給与所得者で、1月1日から12月31日までの1年間の寄付先が5自治体以内の人は、ワンストップ納税の特例で手続きができます。ポータルサイトからワンストップ納税にチェックを入れ、自治体から「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を送ってもらいます。もしチェックを忘れた場合は、直接自治体に送付を依頼することもできます。また、ポータルサイトや総務省のサイトから申請書をダウンロードすることも可能です。

必要事項を記載してマイナンバーカード等のコピーと一緒に、翌年の1月10日までに寄付先の自治体に郵送します。同じ自治体に複数回寄付をした場合は、その都度申請書を自治体に郵送しなくてはなりません。

(2)確定申告

自営業者や確定申告を行う給与所得者、6自治体以上に寄付した場合など、ワンストップ納税の特例を受けられなければ、ふるさと納税を行った次の年の2月16日から3月15日までに確定申告を行います。

給与所得者で確定申告を行うのは、年収2,000万円以上の人、20万円を超える副収入がある人、2ヶ所以上から給与を受け取っている人などです。医療費控除を受ける人や住宅ローン減税を初めて受ける人、公的年金が年間400万円を超える人も確定申告が必要です。

よくある失敗例その3…領収書や寄付金受領証明書をなくした!

確定申告をする場合は、寄付金受領証明書といった証明書類が必要です。なくしてしまうと確定申告ができず、寄付金控除を受けることができません。年の初めごろにふるさと納税を行った場合は忘れがちです。医療費の領収書など確定申告に必要な書類をまとめて保管しておきましょう。

また、令和3年度分の確定申告から、寄付ごとの受領証明書に代えて、国税庁長官が指定した特定事業者が発行する年間寄付額を記載した「寄付金控除に関する証明書」で申告できるようになりました。

よくある失敗例その4…税金を払っていないのにふるさと納税をした

働いていない人やパートで税金を払っていない人が、配偶者の代わりにネットショッピング感覚で返礼品を申し込んで、ふるさと納税をしてしまった場合です。もちろん純粋にその自治体に寄付をしたいということであればかまいません。

ただし、そもそも納税していない人がふるさと納税を行っても、控除される税金そのものがなく、返礼品は全額自己負担となります。2019年6月からは、返礼品の調達額は寄付金額の3割以下と定められています。得したつもりが高額なお買い物になってしまうので、気を付けたいところです。

よくある失敗例その5…寄付をした人とクレジットカードの名義人が違っていた

ふるさと納税は自治体に対する寄付ですので、寄付申込者とクレジットカードの名義が一致するように申し込まなくてはなりません。

しかし、中には返礼品は寄付者名義で、決済は配偶者名義のクレジットカードで行ってしまったという失敗談もあります。寄付申し込み後は原則キャンセルできませんので、受領証明書が発行される前に速やかに自治体に相談するようにしましょう。なお、家族カードであれば、妻名義のクレジットカードでも申込者の口座から決済されるので問題ありません。

まとめ

ふるさと納税の仕組みと失敗例について見てきました。ふるさと納税は返礼品の楽しみと、税金の控除を受けられるメリットから年々申し込む人が増えています。しかし、せっかく納税するのであれば、返礼品だけでなく各自治体のふるさと納税の使い道や、本来のふるさとを応援するという気持ちを忘れずに、寄付をしていきたいものです。

参考サイト
総務省:ふるさと納税ポータルサイト
国税庁:国税庁長官が指定した特定事業者(令和3年11月12日現在)
参考にしたシミュレーションサイト:ふるさとチョイス
その他さとふる・楽天など