台湾料理研究家に教わる「台湾薬膳」の世界。簡単レシピを3つお届け!
教えてくれた人
台湾料理研究家/ペギー・キュウ(邱 珮宜)
台湾国家試験調理師資格を持ち、日本語・英語・中国語で教える台湾料理教室「ホジャ・キッチン」を台北で主宰。2019年に料理教室とカフェを融合した「ホジャ・キッチン・東京」をオープン(現在休業中)。著書に『日本の調味料と食材で作る ペギーさんのおいしい台湾レシピ』(KADOKAWA刊)。
台湾薬膳(養生料理)とは?
日本でも注目を集めている台湾料理は、普段の食生活や、体調を整えるための方法としても自然に薬膳が取り入れられています。ペギーさんによれば、台湾では、薬膳料理は本格的に漢方薬を使ったもので、季節や体調に合う食材の特性を活かした料理を養生料理と呼んでいるそうです。
「漢方薬を使ったものは味が独特で香りも強く食べにくいと感じるかもしれませんが、食材の特性を生かした養生料理は、身近にある食材を使うので日本人にも食べやすく比較的簡単に作ることができますよ」
台湾では日常的に取り入れられている
「台湾では日常的に取り入れられています。家庭料理と同じくらい、気軽に食べる料理なんです」
それでは実際にどんな料理があるのでしょうか。日本のスーパーの食材で作れる薬膳レシピを3つ、教えていただきます。
1. 野菜の甘さが引き立つ「根菜とコーンの豚軟骨スープ」
「薬膳で頻繁に使われるナツメは、スープに使われることが多い食材です。女性の気の流れを改善し、顔色が良くなると台湾では古くから言われています。消化にも良いので便通の乱れや肌荒れをしているときに取り入れる人もいますよ。
また、とうもろこしやにんじんなどの黄色い食材は、脾臓の働きを助けると言われており、季節の変わり目によく使われます」
材料(4人分)
・豚軟骨(または豚スペアリブ)……200g
・ごぼう(2cm厚さで斜め切り)……150g
・とうもろこし(2cm幅の輪切り)……1本
・山芋(ひと口大にカット)……200g
・にんじん(ひと口大にカット)……1/2本
・ナツメ……4個
・しょうが(薄切り)……5枚(15g)
・水……800~1,000cc
・酒……大さじ2杯
・クコの実……大さじ1/2杯(4g)
・塩……適量
・白こしょう……適量
「骨のまわりから出汁が出るので、必ず骨付き肉を使いましょう。豚肉ではなく、骨付きの鶏肉を使ってもOK。生姜は、2~3日干してから使うと風味が増します。
材料は大きめに切るのが台湾流。とうもろこしの芯の部分から旨味が出るので芯ごと使うのがおすすめです。料理酒よりも泡盛や辛口の日本酒を使うと、より台湾の味に近づきますよ」
下準備
・ 豚軟骨は湯通し、流水でよく洗う。
・野菜をそれぞれカットしておく。
・ごぼうのアクが気になる場合は水にさらす。
作り方
1. 材料を鍋に入れて煮込む
鍋に豚軟骨(またはスペアリブ)とごぼう、とうもろこし、にんじん、ナツメ、しょうが、水、酒を入れて強火にかけ、沸騰したら弱火にして20分ほど煮込みます。
2. 山芋を入れてさらに煮込み、味を調えて完成
山芋を入れてさらに15分ほど火にかけます。クコの実と塩、白こしょうを入れて味を調え、5分ほど煮たら完成です。
2. 香ばしさがたまらない「クコの実とくるみのチキン炒め」
「メイン料理にもなるこちらは、美容や目に良いと言われているクコの実を使います。クコの実はナツメと同じように薬膳料理に頻繁に登場しますよね。
また、台湾では夏に黄色や赤色のものを食べると良いと言われています。いろいろな野菜を使って色鮮やかに仕上げるのがおすすめです」
材料(4人分)
・鶏むね肉(皮なし)……1枚(約160g)
・ローストしたくるみ……50g
・黄パプリカ(2cm角切り)……1/2個
・青ねぎ(3cm幅に切る)……1本
・にんにく(薄切り)……1かけ
・しょうが(薄切り)……5枚(10g)
・クコの実……大さじ1杯
・酒……大さじ1/2杯
・塩……適量
・白こしょう……適量
A 酒……大さじ1/2杯
A 砂糖……少々
A 塩……小さじ1/4杯
A 片栗粉……小さじ1杯
A 白こしょう……少々
A ごま油……少々
「くるみは生のまま使うと、油をすってしまい食感が悪くなるので、ローストしていないものは初めに軽く炒っておくと良いです。
野菜はお好みですが、台湾には長ねぎがないので、青ねぎ(わけぎや九条ねぎなど青い葉の部分が多いねぎ)を使っています。パプリカの代わりに、セロリを使うこともありますよ」
下準備
・パプリカ、青ねぎ、にんにく、生姜をカットしておく。
・ひと口大に切った鶏肉とAの材料をボウルに入れてよく混ぜ、下味を付ける。
・クコの実は酒につけて戻しておく。
・くるみが生の場合は油で軽く炒る(1~2分程度)。
作り方
1. 鶏肉、青ねぎ、にんにく、生姜を炒める
フライパンで鶏肉を炒め、焼き色がついたら取り出します。フライパンの油をキッチンペーパーで拭いてから、油大さじ1/2杯(分量外)を入れて中火にかけ、青ねぎの白い部分、にんにく、生姜を入れ、香りが出るまで炒めましょう。
2. フライパンに材料をすべて入れて炒め、味を調えたら完成
香りが出たところにパプリカと鶏肉を加えてよく炒めます。パプリカと鶏肉に火が通ったら青ねぎの青い部分とクコの実を入れ軽く炒め合わせ、最後にくるみと塩、白こしょうを加えて味を調えたら完成です。
3. やさしい甘さに癒される「ナツメときくらげのデザートスープ」
「素材の味が楽しめるシンプルな味付けのデザートスープです。キクラゲは、肺に潤いを与え、便秘や美肌に良いと言われています。台湾では便秘改善が期待され、キクラゲドリンクを売っているほど。
日本ではあまりデザートとして食べることはないと思いますが、やさしい甘さで癒されること間違いなしです!」
材料(2~3人分)
・乾燥白きくらげ……10g
・ナツメ……5個(1cm角程度の大きさに切る)
・水……600cc
・氷砂糖(三温糖)……大さじ2杯
・クコの実……大さじ1/2杯(4g)
「台湾の家庭でよく使う砂糖は、艶を出すための氷砂糖やすっきりした甘さのグラニュー糖です。私が日本で作るときはやさしい甘さの三温糖を使います。本場の味に近い甘さが引き出せますよ」
作り方
1. きくらげを切り分け、フードプロセッサーにかける
ぬるま湯で戻したきくらげをよく洗い、ハサミで硬い部分を除きます。 やわらかい部分を1/3ほど取り分け、残りをフードプロセッサーでとろみが出るまで混ぜましょう。
2. 鍋で煮込んで蒸らし、味を調えたら完成
鍋に全量のきくらげ、ナツメと水を入れて中火にかけます。沸騰したら弱火にして、きくらげがやわらかくなるまで30~40分ほど煮込みます。火を消したらフタをして20分ほど蒸らしましょう。
クコの実と三温糖を加え、フタをせず弱火で5~10分ほど煮たら完成です!
台湾薬膳で体の内側から元気に
スーパーの食材で、こんなにも手軽に薬膳料理が作れるのはとても意外でした。台湾の人々の日常に寄り添った台湾薬膳は、 日本に昔から伝わる“食べ物には体を癒す効能がある”という考え方にも似ていますよね。季節の変わり目や少し元気が出ないときに、ぜひ台湾薬膳(養生料理)を取り入れてみてください。
取材・文/神山彩子