大量の家具を運び出し、被災者を支援するボランティア(宮城県丸森町で)

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 台風19号の洪水被害で町の中心部一帯が浸水した宮城県丸森町で、ボランティア不足が深刻化している。鉄道の運休で交通が不便なことに加え、被害が複数県にまたがり広範囲のためボランティアが分散し、地域住民からの依頼に応えられていない。寒さの本格化で「ボランティアの足が遠のくのではないか」と現場は不安を募らせている。同町災害ボランティアセンターは今月から、最寄り駅から臨時のバスを走らせるなど環境を整備し、ボランティアの参加を呼び掛けている。(高内杏奈)

 流入した泥水が渇き、砂ぼこりになって吹き荒れる。目が開けられず、車は一日で茶色に染まる。

 現在も断水している同センターは、住民の依頼を受け付ける他、ホームページで全国からボランティアを募り、現場に派遣している。同センターは10月19日から受け付け、これまでに482件(5日時点)の依頼があった。しかし応えられたのは3割程度にとどまる。

 ボランティアの主な仕事は住宅の家具の運び出しと泥かきで、1案件で3日〜1週間かかる。毎日15件ほど依頼が増え続け、追い付かない。同センターの谷津俊幸代表は「なかなか集まらず、作業が進まない」と頭を抱える。

参加増へバス手配


 参加者が集まらない理由の一つに、谷津代表は交通の便の悪さを挙げる。仙台市から同町への移動で不可欠な鉄道・阿武隈急行は、ホームの流失などで運転を見合わせている。

 JRが連絡する槻木駅から丸森駅までは臨時バスが走るが、本数に限りがある。さらに丸森駅から同センターまでは3キロ以上と、徒歩40分はかかる。

 同センターは1日から丸森駅からマイクロバスを運行し、送迎している。谷津代表は「道路整備とともに、山間部の依頼が今後増える見通し。できるだけ来てもらえる環境を整え、早期復旧を目指したい」と語る。

 「避難所でも新たな問題が出てきた」と話すのは、同町で水稲50ヘクタールを手掛け、避難所生活を送る大内喜博さん(36)。自宅が浸水し、10月13日から避難している。「寒さが本格化してきた。特に朝が冷え込み、手が冷たくなる」と訴える。

 同町近くの蔵王山では5日、初雪が観測された。同町の7日朝の気温は3・1度と冷え込み、避難者の体力を奪った。大内さんが生活する避難所には約20人がいる。エアコン、ストーブがあるが、隙間風が容赦なく入り込む。毛布を4枚重ねにしても体温が奪われるという。「防寒着や布団の上に掛けるものがほしい」と要望する。

 全国の避難者(8日時点)は2802人で、宮城県は449人。同町は193人で43%を占める。