なぜ「要約」は、すべての科目に通じる勉強法なのでしょうか(作画:ひなた水色)

偏差値35から奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏。そんな彼にとって、東大入試最大の壁は「全科目記述式」という試験形式だったそうです。

「もともと、作文は『大嫌い』で『大の苦手』でした。でも、東大生がみんなやっている書き方に気づいた途端、『大好き』で『大の得意』になり、東大にも合格することができました」

「誰にでも伝わる文章がスラスラ書けるうえに、頭もよくなる作文術」を『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』にまとめた西岡氏の最新作『マンガでわかる東大勉強法』から、勉強の効果が最も高まる「要約勉強法」を紹介します。

「要約」こそ最強の勉強法だ

みなさんは、東大で毎年のように出題されていて、東大生ならみんなやったことがあると語る勉強法をご存知ですか?


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答えは「要約」です。短い文字数で内容をまとめ、いったい何が言いたいのかを一言でまとめる訓練。

授業で教わったこと、本で読んだこと、資料に書いてあったことや国語の文章を、短くまとめて「要約」するという勉強法が、実は非常に学習効果が高い勉強法なのです。

今回は、拙著『マンガでわかる東大勉強法』のマンガの一部をみなさんに読んでもらってから、要約勉強法についてご紹介したいと思います!



「授業を獲りに行く」とはどういうことか





要約力は「慣れ」次第で誰でも身につけられる



いかがでしょうか? 要約についてご理解いただけましたでしょうか?

ここから、漫画の内容を踏まえて「なぜ要約が最高の勉強法なのか?」「どうすれば簡単に要約ができるのか?」をご説明させていただきます!

頭がよくなるのは「インプット」?「アウトプット」?

まずみなさんにご質問なのですが、頭がよくなる瞬間っていつだと思いますか?

授業を受けているとき? 参考書を読んでいるとき?

実は両方違います。正解は、「アウトプットしたとき」です。

授業を受けたり、参考書を読む行為は「インプット」と呼ばれます。情報を「頭の中に入れる」ことですね。

逆に、情報を「頭の中から取り出して、外に出す」ことをアウトプットと呼びます。そして勉強においては、インプットよりもアウトプットのほうが重要なのです。

いちばんわかりやすいのは、「問題を解く」ことですね。問題に対して、自分の頭にある知識を取り出して解くわけですから、問題を解くのはアウトプットの1つです。

それ以外にどんなアウトプットがあるか、わかりますか?

身近なものでいうと、「質問をする」というものがあります。自分の頭で考えて、疑問を見つけて、それを聞く。これも立派なアウトプットです。

そして最後にして最大のアウトプットが、「要約」です。他人に対して、学んだことをかいつまんで説明すること。これができる学生は、必ず成績を上げることができるのです。

どうしてアウトプットをすると成績が上がるのか?

アウトプットをすると、なぜ成績が上がるのでしょうか?

これは、漫画の中で先生が言っていた「授業は獲りに行け」という言葉に理由があります。授業や本というのは、ただインプットしているだけでは流れていってしまうものです。流れないように自分のものにするのは、自分がどういう態度で勉強しているかが重要になります。

みなさんは、「授業を受ける」を英語で言うとなんと言うか知っていますか? 「listen(聞く)」でも「hear(聞く)」でも「accept(受ける)」でもありません。「take a class」といいます。「take」=「取る」、つまりは能動的な行動です。

いくらいい本を読んでも、いくらいい授業を受けても、みなさん自身が「授業から何かしらを学ぼう」とする姿勢がないとうまくいきません。みなさん自身がただ聞いているだけで能動的に何かをしなければ、つまり「取りに」行かなければ、結果にはつながらないのです。

ちょっとした笑い話ですが、大学の教授に「アクティブラーニングについてどう思いますか?」と質問したら、こんな答えが返ってきました。

「ちゃんちゃらおかしいよ。アクティブラーニングって、まるで勉強がアクティブ(能動的)ではない時代があったみたいな言い方じゃないか」と。つまり、有史以来勉強というのは能動的なものであり、能動的に勉強していないと成績が上がらないのは厳然たる事実なのです。

そして、能動的な姿勢というのが、簡単に言ってしまえば「アウトプットすること」なのです。

ただ情報を吸収しているだけでは受動的な姿勢のままですが、アウトプットをしようとすると、自分の中でその情報をかみ砕いて理解して、自分できちんと納得する必要が出てきます。受け身のままではいられなくなるのです。能動的な姿勢が求められるものだからこそ、アウトプットというのは大切なのです。

「人に説明する」のも「要約」の1つ

そして、そんな「アウトプット型の勉強」の中でも、「要約」というのは頭一つ飛び抜けて効果のある勉強法です。

例えば以前の記事(東大生が断言!「作文」こそ一番本質的な勉強だ)でもご紹介したのですが、東大生の多くは「人に説明する」勉強法を実践していました。自分が勉強したことを誰かに説明したり、先生のように講義をしてみたり、人から質問を受けたりして、友達に学びを共有するのです。

その中で、友達にうまく説明できなかったり、友達が「それはよくわからない」と言ったポイントに関しては、完全には理解できていない弱点である可能性があります。そしてその弱点を克服すればより成績も上がる。インプットしきれていないことを、アウトプットすることでもう一度覚え直すことができるのです。

そして、説明のために東大生がやっていたのが、要約です。授業の内容をいちいち全部は聞いていられないですし、一言一句違わず説明することなんて不可能ですよね? それよりも、ポイントだけかいつまんで、「要するに一言で言ったらどういう授業だったのか」を教えてもらったほうが、聞く側にとってもわかりやすいと思います。

だからこそ学内で話していても、「一言で言うと、今のってどう言うこと?」とよく質問されますし、ノートを見ているといちばん最後に「まとめ」と書いて自分が重要だと思ったことをまとめている学生も多いです。「要するに」を徹底するのは東大生の特徴の1つだと言えるでしょう。

そして、この「短くまとめて説明する」というのは、すごくいい勉強なんです。

人間というのは、「一言で言うと要するに何なのか」を頭の中で組み立てられた瞬間、一気に頭への残り方が変わるものです。例えばマンガでも小説でも、登場人物全員が物語の中心にいるということはありませんよね? 重要人物である主人公がいて、一度しか登場しないモブキャラもいる。

要約というのは、主人公を見つける行為です。主人公もモブキャラも対等に見ていたら忘れてしまいますが、誰が主人公で、重要な人物なのかをしっかり理解できれば頭への入り方が違います。「このモブキャラはどういう人物なんだろう?」と考えて物語を読むのもそれはそれで面白いものですが、しかしそれでは物語全体の趣旨はつかめません。

要約というのは「主人公を見つける」ことにほかなりません。主人公を見つけて、その主人公の動向に注目することで、物語の内容が理解しやすくなるのです。

要約をするためには「主人公」=「重要なポイント」は何かを押さえる必要が生じます。それを理解することで事柄をより理解しやすくなるのです。

東大の入試問題は「要約」が必須!

「要約力」という力は、入試でも非常に重視されます。例えばこんな問題を見たことはありませんか?

「次の1〜4のうち、文章のまとめとして適切なものを選べ」

古今東西、こういう「文章のまとめとして適切なものを選べ」「この文章にタイトルをつけるならどれ?」という系統の国語・英語の長文問題って非常に多いですよね。

これは、「要約ができる人間は、その文章を読めていることが多い」ということを意識しているのです。「文章のまとめ」ができる人間ならば、文章も読めているとみなされるのです。要約問題は、先ほど言った「主人公」が見極められる人ならば解けるのです。

こういう「要約」を非常に多く出題する大学の代表例が、実は東京大学です。東大の問題は、国語や英語はもちろんのこと、それ以外の科目もこの能力をガンガン問うてきます。

例えば日本史では長い文章や資料を課して「この資料を要約せよ」という問題が頻出となっています。

また世界史は8つのキーワードを与えて「キーワードを使って論述せよ」という問題が毎年出題されています。この世界史の問題はキーワード同士のつながりを考えて要約する問題で、この問題を解くためにはキーワードがその時代においてどういう役割を担ったのかを考える必要があります。これはその時代の「主人公」を知っていると解きやすい問題なのです。

実は数学でも同じことが言えます。東大の数学の問題の文章は他大学と比べても異常なほど長く、その文章の中から問題を解くうえでのヒントとなる「主人公」を探さないと解けません。数学でも、そのヒントを「主人公(起点)」として問題を解いていく、という要約力が必要なのです。

僕はこの国語・要約力の大切さに気づかず、要約できないままで成績が上がらず2浪してしまった人間です。要約力もないし、読解力もない。だから落ちました。しかし、2浪して要約の訓練をすることで成績が急上昇し、東大にも合格しました。

「要約から始めるべきだったんだ……」

そのときになってはじめて、僕はそう気づいたのです。

では、要約がどうしていい勉強なのかを知ってもらったところで、実際にどうすればいい要約ができるのでしょうか。最後に、そのテクニックをご紹介します。

さて、要約をするために必要な最初にして最大のテクニックを共有します。

「何度も出て来ている人物を怪しんでください」

とても簡単に言ってしまえば、出現している回数がいちばん多い人物が主人公です。

「登場回数が多い言葉」を主人公としてまとめる

小説でも漫画でも、主人公が1回しか出てこない話は存在しないと思います。何度も出てきているということは、それだけ著者が大切だと考えているということです。そのポイントをきちんと押さえておく必要があるわけです。

「でも、同じ言葉ばっかり出てくる文章ばかりではないのでは?」「キーワードがわかりにくい文章もあると思うけど……」と思った方もいると思います。たしかに、何度も何度も同じ言葉が出てきているようには見えませんよね。

でも、実際には出てきているんです。私たちが気づかないだけで、主人公は変装しながら文章の中にいます

例えば、今みなさんが読んでいるこの記事でいちばん印象に残っていて、いちばん出現頻度の高いキーワードはなんだかわかりますか?

「要約」ですよね。

僕はこの記事で「要約」という言葉を何度使ったかわかりません。

しかし、中には「え? でも『アウトプット』も語っていたよね」「『説明』っていうのもキーワードじゃないの?」と考えた人もいるでしょうが、それは実はトラップです。実はそれらのワードは、「要約」という主人公が何度も何度も変装して現れている姿なんです。

例えば、今回僕は「人に説明する」には「要約」が必要だと言いましたが、これは「説明」という言葉を、要約という主人公が変装している姿だと解釈することもできると思います。

また、「アウトプットの勉強法としていちばんいいのが要約なんだ」と言いましたが、これも「アウトプット」という言葉が要約の変装だと考えることもできると思います。


キーワード自体は変わらなくても、キーワードのバリエーションでどんどんいろんな言葉が出てくることはあるのです。そして、そのバリエーションがほかの話をどんどん持ってきて、1つのお話になっている。

「インプットとアウトプット」の話も、「アウトプット=要約」と考えるとわかりやすいと思いますし、「説明は東大生の多くがやっている勉強だ」という話も、「説明=要約」と考えると理解しやすいのではないでしょうか?

このように文章の中で何度も出てくる言葉や、そのバリエーションを探すことで、主人公というのは簡単に見つけられるのです。これを使って要約を作ってみてください。

いかがでしょうか? 要約をやってみる気になっていただけましたでしょうか? 要約というのは、やればやるほど精度が上がっていくものです。読んだ本の内容や授業や講演会、なんなら漫画でもゲームでもいいので、どんどん要約していくようにしましょう!

(作画:ひなた水色)