1月のアジアカップでは8強に食い込んだ中国。いよいよ始まるW杯予選に向けて、名将リッピはどのようなチームに仕上げていくのか。(C)Getty Images

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 イタリア・サッカー界が誇る稀代の名将、マルチェロ・リッピが中国代表への熱い想いを語った。
 
 老舗男性誌『Esquire』のイタリア版に掲載されたのは、71歳になった指揮官によるモノローグ形式のインタビューだ。かつてユベントスを率いて数多のビッグタイトルを獲得し、イタリア代表監督としては2006年ドイツ・ワールドカップで世界一にも輝いた。2012年5月からは活躍の場を中国に移し、広州恒大でアジア・チャンピオンズリーグ制覇を経験。2016年10月には、圧倒的な支持を得て中国代表監督に就任した。今年1月、アジアカップ準々決勝でイランに敗れて一度は退任したが、後任で愛弟子のファビオ・カンナバーロのスピード更迭を受け、わずか4か月でポストに返り咲いたのだ。
 
 ただ、中国サッカーの現状について、リッピの意見はシビアである。
 
「いまだ中国では、フットボール文化が根付いていない。頑張って積み重ねているところなんだけどね。ここにやって来た当初は、本当に過酷なミッションだと感じたよ。ヨーロッパでは小さい頃からフットボールは身近にあり、夢中になってボールを蹴れる環境と文化がある。ところが中国では、まず子どもたちがフットボールをしていない。専門のスクールやユース育成のための施設など、まるで環境が整っていないからだ。必然的に選手たちは、年を取ってからプレーを始めることになる。小さい頃からフットボールをする文化が存在しないのだよ」

 
 リッピは発展のために不可欠なのは“国外”の力だと言い切る。
 
「そのような状況であるから、当然、能力の高い外国籍選手が1チームに3〜4人は必要になる。中国スーパーリーグの各クラブは資金が潤沢だ。だからいまは、有能な外国籍選手の獲得に莫大なカネをかけていて、まずはそれによってリーグ全体のレベルを上げ、代表チームの強化に繋げなければならない。でなければ、アジアで最先端を行く日本や韓国、イランといった強豪国とはとうてい渡り合えないだろう。だからこそ、わたしのような人間の力が必要とされているんだ。やりがいを感じているよ、ものすごくね」
 一方で、中国代表選手たちの変化にも驚かされているという。
 
 名将は「以前に比べて選手個々のプロ意識は間違いなく高まっているし、彼らは『勝てるチームとはどんなものか』を知りたいと思い、いまでは理解しはじめている。メンタル面の重要性をだ」と話し、「イタリアに戻っても監督はもうしないよ。ここでなすべきことをやって、また幕を閉じるまでさ」と自身の将来についても言及した。
 
 ロシア・ワールドカップのアジア最終予選は、グループAの6チーム中5位と低迷したが、今年1月のアジアカップでは堂々ベスト8に食い込んで見せた。リッピ監督は「着実に力を付けている。さらに面白いチームになっていくだろう」と、明るい展望を描いている。
 
 はたして、カタール・ワールドカップ予選で森保ジャパンと対戦することはあるのか。名将がキャリアの集大成と位置付けて強化している中国代表は、さらに侮れない敵となっていきそうだ。
 
構成●サッカーダイジェストWeb編集部