【昭和電工】初の抜本的な構造改革、個人の意識改革が最も重要だった

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 昭和電工の大橋光夫最高顧問は、1997年の社長就任以来、自社を“ぬるま湯体質”と語り、厳しい姿勢で経営再建に取り組んだ。その根底には一人ひとりに自覚を促す意識変革があった。次世代の企業人に求められるものを聞いた。

一人ひとりが企業の信用築く
 −社長就任後の企業改革の基盤となったものは何でしたか。
 「当時の昭和電工は生ぬるい雰囲気で、問題が起きても関係者のみで処理し情報を全社に公開しておらず、同じ過ちを繰り返していた。そこで、問題を起こした原因を個人まで降ろし、全ての情報を全事業部、工場で共有することにした。一見関係のないことでも、再発防止のヒントは全事業に必ず見つかるはず。罰するためではなく、再発を防止するための情報共有だ。法令順守はもちろんだが、社長に就任し、『企業倫理』と同時に『社会正義』も追及した。企業は社会に貢献して、初めて価値が認められる」

 「独占禁止法違反は最たる問題だ。当社も複数回、公正取引委員会の立ち入り調査を受けた。1人の企業倫理にもとる行いで、企業は信頼を失うのは一瞬だが、信頼を再構築するには10年かかる。企業への信頼は社員一人一人が日々の『自分がお客さまと接している“その時”に、一人ひとりの努力の総和で企業の信用を築いている』自覚を持たなければいけない。現代も同じだ」

会社は戦場
 −経営再建では、同業他社との事業統合も実施しました。
 「統合する際に譲らなかったのは『50対50の対等合併はやらない』ということ。対等合併は、社内の主導権争いで消耗し、建設的なエネルギーを社外に向けられない。若手社員の頃、実際に出向先でこの問題を経験した。主導権を明確にすると、少額出資側に不満は残るが、同じエネルギーなら社内に使わずに外に向けて努力する方が会社全体として必ず良い結果を出せる」

 −意識の変化を促すために、表現を工夫したそうですね。
 「わかりやすい言葉として、『会社は戦場、憩いは家庭で』と言ってきた。会社は楽しくてもいいが、甘えがあると成長しない。職場に入ったらムードを切り替え、自分を磨いてほしい。また『設備投資とゴルフは手前から』と説いた。ゴルフの難しいコースで、一か八か打てば、池やバンカーにはまる。短く手前から刻むといい。設備投資の際も、顧客からの需要予測の合計よりやや控え目に設備能力を新設することが鍵だ」

政治と経済はもっと近づく
 −当時とビジネス環境が変わった今こそ、必要なことは。
 「情報が瞬時に手に入る今は、経営者も新入社員も同様に、政治や国際情勢を含めた幅広い知識と洞察力が問われる。世界市場で戦うのだから、営業も自社製品の知識だけでは不十分で、特に海外投資には政治、経済、軍事など全ての分野に関心を持ち判断しないとミスを犯す時代に入った」

 −政治と経済の接近は現代の特徴です。
 「相互の関連性は更に深く広くなっており、今後もっと近づくかもしれない。その現実を捉えた上で、自分はどうするか考えるべきだ。ポピュリズムの蔓延も情報化時代のマイナス影響と見ている。情報だけに左右されない人間力を磨くため、歴史に関する本を幅広く読んでほしい。歴史から学ぶことは多い。現代はどのような職場にいても自分の知識や職務の遂行能力だけでなく、トータルとしての人間力が試される時代となった」

国土が狭いからできる

 −日本の景気は長期拡大傾向が続きました。
 「今の状態はむしろ、問題を先送りしているだけで、楽観的には見られない。最たるものが消費増税だ。財政破綻のリスク、社会保障の一体改革など、景気後退を恐れて問題を先送りしてきた。政治は、将来に責任を持ち、政策への国民の理解度を高めることが仕事だ。広大な中国や米国に比べ、国土の狭い日本なら、国民の知的水準を上げることは可能なはずだ。ポピュリズムとは異なる真の民主主義を定着させ、世界に範を示せると思う」