【2075年】CO2排出量ゼロ実現に必要な日本の3つの技術
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の人工光合成開発プロジェクトは18年度、太陽光エネルギーによって水から水素を作り出す効率で、12・5%をたたき出した。非単結晶光触媒を使う水素生成の効率としては世界最高記録だ。
太陽光の働きでCO2と水からでんぷんと酸素を作る植物の光合成を模し、太陽光エネルギーでCO2を資源化するのが人工光合成の定義の一つ。
NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(三菱ケミカルなど)が開発を目指す人工光合成は、まず水中の光触媒に太陽光を照射し、発生した酸化力によって水を水素と酸素に分解する。次に水素を取り出し、CO2と合成してプラスチックの原料となるオレフィンをつくる。
30年ごろの稼働をイメージする商業プラントでは、降り注ぐ太陽光で水素を生成し、火力発電所や工場の排気から回収したCO2と合成してオレフィンを製造、化学メーカーに供給する。温暖化を招くCO2放出を防ぎ、プラスチック生産の化石資源の使用量も減らす脱炭素プラントだ。
実用化には効率向上が欠かせない。今回の12・5%は銅・インジウム・ガリウム・セレン系の光触媒による成果だ。当初から同じ材料だが、NEDOの小川宗成プロジェクトマネージャーは「微妙に組成比を変えた」と工夫の一端を披露する。
水素の発生で12・5%だが、酸素発生も含めたトータル効率は3・7%にとどまる。酸素発生用の光触媒も高効率化しないと実用化目安の10%に届かない。それでも12年度の研究開始当初の1%以下からは大幅に向上した。
「酸素側の光触媒となる材料も相当、探索した」(小川マネージャー)といい、トータルで10%の効率を射程に入れる研究を加速する。NEDOの人工光合成は世界的にも先頭を走る。日本発の脱炭素技術になり得る。
ペロブスカイト太陽電池 高い変換効率・低コスト
次世代太陽電池として本命視される「ペロブスカイト太陽電池」の研究成果が相次ぐ。中でも東芝とNEDOは6月、703平方センチメートルのフィルム型電池を製作し、光を電気に変えるエネルギー変換効率で11・7%を記録した。このサイズでは世界最高だ。
ペロブスカイトは結晶構造の名称。材料費が安く、シリコン系太陽電池よりも低コストだ。変換効率の世界最高値は現在、22・7%。シリコン系に迫るものの、手のひらに収まるほどの小サイズの記録だ。実用化には大面積化が避けられないが、大型化すると効率が減る。材料を塗るとすぐに膜ができるため、面積が広がるほど品質の均一化が難しい。
東芝は2回に分けて材料を塗布する方法を採用。1回目は反応を抑え、2回目の塗布後に反応を進める。膜ができる速度を制御でき、たわみやすいフィルムでも均質な大面積化のペロブスカイト太陽電池を作った。
東芝は25年の製品化を目指す。同社研究開発センターの天野昌朗主任研究員は、「シリコン系と競合しない、ペロブスカイト太陽電池ならではの用途で普及させたい」と話す。ガラス板を使うシリコン系は重く、設置場所が屋根や地面などに限られる。軽く柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池なら壁や窓、室内にも太陽電池の用途が広がり、脱炭素化社会が見えてくる。
