江戸時代「西洋医学塾」の“仁”を受け継ぐ順天堂大学の現在
―建学の精神である“仁”はどのように受け継がれていますか。
「仁は、他者を思いやる心のことだ。現代は先進医療の導入が進む。しかし、どんなにデータ重視になっても、臨床では医師やコメディカル(医療従事者)が患者の人生にどのような役割を果たすかを忘れてはいけない。『患者目線に立つことが医療の原点だ』と伝えている」
―研究環境の整備で取り組むことは。
「当校の本部は都心に位置し、スペースがコンパクトだ。そのため、学内の『研究基盤センター』に実験機器を集約した。各講座・研究室の研究者が集うため、自然と情報交換の場になっている」
―財政基盤の強化はどうでしょう。
「教育、研究、診療の3本柱を高いレベルに保つためには、財政的基盤が必要だ。財の独立なくして学の独立はない。科学研究費助成事業などの獲得と、付属病院の収益は大きく、研究や教育の充実のために活用している。しかし収益を上げること自体が病院の目的にはなり得ない。患者中心の医療を提供することが本質だ」
―学生にとっての魅力はどこにあるでしょうか。
「世界の大学ランキングでは日本の大学が苦戦している。大きなポイントは国際化の壁だ。本学では入学直後と秋の2回、全学部の1年生にTOEFLテストを受けてもらう。試験のスコアは、学生の海外留学のチャンスを広げる効果がある」
「また、本学は海外から多くの留学生を受け入れている。学生が英語力を身に付けると、留学生との交流から視野が広がる。医療格差の大きい北米などの医療制度について議論することで、社会的視点が養われる。こうした経験は卒業後の多様な進路につながる」
(聞き手=安川結野)
【略歴】あらい・はじめ 79年(昭54)順天堂大医学部卒。同年同大医学部脳神経外科入局。88年講師、93年助教授、02年教授、08年同大医学部付属順天堂医院院長、11年同大大学院医学研究科長・医学部長、16年同大学長。医学博士。東京都出身、62歳。
