アジアで味わった初めての敗北から5年あまり。初々しさも残っていた高校生DFは、たくましさを感じさせるキャプテンになった。Jリーグで実績を積み上げ、日本代表という高みにも触れて、新シーズンからは日本最大の予算規模を誇るクラブへと籍を移すことにもなった。新たなシーズンを前にしたアジアでの戦いは、自らの過去をすべて洗い流すための戦いでもあったのだろう。キャプテンとして日の丸を背負うプレッシャーもあった。準決勝のイラク戦に勝利してリオ行きが確定すると、その頬を熱いモノが伝っていったのは自然なことだった。「この大会に臨むにあたっても、うまくいくのか不安になるところはあった」というキャプテンはしかし、「ずっと負けていた悔しさもありましたし、『アジアで勝てない世代』と言われていた部分があったので、負けていた悔しさもあった」と振り返った。

 そして決勝、韓国戦。言ってみれば、“アジアで勝てない世代”にとっての総決算の戦いとなる。「あとはホント、韓国に勝つだけ」と言い切った遠藤は、「アジアで優勝したことはもちろんないので、しっかり勝って監督を胴上げしないと」と言って微笑んだ。準決勝終了時にも監督の胴上げは一瞬考えたが、「まだ早い」と結論づけた。「俺たちは優勝するためにここへ来た」のだから、その結論は当然だった。

 最後の相手が因縁深い韓国になったことは紛れもない“縁”である。世界大会に行けなかったコンプレックスも、アジアで勝てなかった屈辱の記憶も、そのすべてをアジアのファイナルマッチで終止符を打つ――。ここで韓国に勝って、リオ五輪世代につきまとってきた負の歴史を終わらせる。断固たる決意を持って、若きサムライたちが運命の日韓戦へ挑む。

文=川端暁彦