はじめに

 今回のテーマは,MLBにおけるリリーフ投手の故障事例を見てみようということで,白羽の矢が立ったのが,ニューヨークメッツ所属のペドロ・フェリシアーノ選手です。2005年にはソフトバンクに所属していた経験もあり,覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 この選手をピックアップした理由は,前回の分析でデータを整理した際,2008年から2010年にかけて3年連続80試合超の登板を記録していたからです。これは,2000年以降のMLBのリリーフ投手の中でもかなりのハイペースといえる成績です。

 さらに,Wikipediaによれば,2011年にヤンキースへと移籍しましたが,そこで肩痛を再発させ,2011・2012年の2年間は登板記録がありません。

 これは,2008年から2010年までの無理が祟った結果と考えるのが自然だと思います。それでは,2008年から2010年において,危険な兆候は見られなかったのだろうか?ここでストップしておけば……というポイントをデータで確認することはできないだろうか?というのが今回のテーマとなります。

 今回は,特に奪三振率,与四球率,被本塁打のデータを見ていきます。


分析データ

 ニューヨークメッツ在籍時代の,2006年から2010年までのペドロ・フェリシアーノ選手の記録を登板した1試合ごとに集計しました。データはFANGRAPHSを参照しています。


登板記録

 まずは,ペドロ・フェリシアーノ選手の登板記録を以下の表1に示します。

表1

 基本的にはリリーフ専門の投手といって良さそうです。


データの集計

 それでは,ペドロ・フェリシアーノ選手の奪三振率,与四球率,被本塁打のデータを1試合ごとにまとめ,試合数が蓄積されていくことでどのように変化していくかを見ていきたいと思います。

 ただし,各試合の成績をそのまま反映した場合,先発投手ではないので,たった1つの与四球が非常に大きく評価されてしまう場合もあり,このままデータをまとめると,非常にノイズの大きいデータとなってしまいます。そこで,前後の3試合を含む7試合分のデータを元に成績を計算しました。データの例を以下の表2に示します。

表2

 このような感じでシーズンごとにまとめたものを以降に示していきます。


登板試合数の蓄積と成績の変化

 まずは,2006年から2010年までの成績の推移を以下の図1-1から図1-3に示します。

図1-1

図1-2

図1-3

 被本塁打については,本塁打を打たれる頻度がそもそも少ないので,あまり参考にならない結果だと思います。

 奪三振率と与四球率については,2008年以降の成績のみを示したものを以下の図2-1と図2-2に示します。

図2-1

図2-2

 多少データが見やすくなったのではないかと思います。


3つのデータに故障の前兆は見られるか?

 これら奪三振率,与四球率,被本塁打のデータは,野手の守備力の影響を受けない指標でもあるので,投手自身のパフォーマンスを測るには適した指標です。では,これらの成績に,何か故障の予兆となるようなパフォーマンスの変調はないだろうかとデータを見ると,2010年は80試合を超えたところで,奪三振が減り,与四球が増えていることがわかります。

 これが3年間に渡る登板の蓄積によるものなのか,単年の登板の蓄積によるものかはわかりませんが,明らかに問題のあるパフォーマンスの変化といえます。

 できればこのようなパフォーマンスの変化が起こる前に,何事か予兆は窺えないかとデータを見ても,残念ながらそれらしい傾向は確認できませんでした。どうやら,この3つのデータから問題の予兆を見出すことは難しいのかもしれません。

 この見解は,私の所見であって正解ではありません。データを見てもらって,何か思うところなどあればコメントをいただけると助かります。

 とりあえず,他のデータも見てみようということで,次回は3つのデータ以外のパフォーマンスに着目してみたいと思います。



おわりに

 どうもお久しぶりの更新になります。あれこれやることが増えてしまって,なかなか更新することができないのですが,ぼちぼち更新していく予定です。のんびりとお付き合い頂ければと思います。

 野球の分析は最近していないの?といわれると,そんなことはなく,DELTAのメールマガジンにて,毎週データ分析をしています。いったいどれくらいの人が読んでくださっているのかよくわからないのですが,興味のある方はそちらもどうかよろしくお願いします。