誰がこの男を止めるのか―


この男とは言わずもがな、びわこ大のエース・松田力(3年・立正大淞南)のことである。


並外れた身体能力とシュートレンジの広さを武器に現在16試合で19点。驚異的なペースで得点を量産している、いま関西で最も危険な男。


 


そんな松田に待ったをかけるのがリーグ最少失点の堅守を誇る桃山学院大。昨年のリーグ王者は現在勝ち点35で2位につけており、勝ち点差5でそれを追う3位のびわこ大を何とかここで叩いて差を広げたいところである。得点ランク首位の松田と最少失点の守備陣、そんなマッチアップが期待された上位対決。


 


“松田を如何にして抑えるか” というこれまで幾多のチームが取り組み、失敗してきた難題について、桃山学院が用意した答えは実にシンプルなものであった。「(松田のことは)特に意識はしていない。」とあっさり語る楚輪監督。エースを封じるマンマークという策を講じるのではなく、持ち前の組織力で対抗した。


 


谷口功(4年・鹿児島実業)と朴斗翼(4年・神戸科学技術)がチャレンジ&カバーを徹底。また縦パスに対してしっかりと身を寄せることで起点を作らせず、ボランチが素早くプレスバックしてボールを奪う。13分に得意の堅守速攻から道上隼人(3年・セレッソ大阪U‐18)のゴールで幸先よく先制を果たすと、62分にも水頭廉(3年・サンフレッチェ広島ユース)がエリア中央で右足を一閃。放たれたシュートがネットに突き刺さり、追加点を奪う。終了間際には立て続けに決定機を献上するも、試合を通してエースに仕事をさせず、見事完封勝ちを収めた。


 


第2試合で首位の阪南大が勝利したため順位に変動はないが、二連覇に向けて着実にその背中を追走している。


 


この日も失点を0に抑え、堅守を見せつけた桃山学院。過去に関西選抜にも名を連ねた谷口や朴といったリーグ屈指の両CBの持つ能力は確かに大きいが、「最終ラインの顔ぶれは優勝した昨年から大きく変わっておらず、その関係性が非常に良い。」と谷口は話す。また、全日本選抜に名を連ねるGK、圍謙太朗(3年・大津)の存在も大きい。この日も安定したセービングを見せ、チームの完封勝利に大きく貢献している。試合後に圍が「最終ラインの選手が頑張ってくれたので僕はなにもしていない。」と語れば、CBの谷口は「謙太朗が後ろにいるから安心できる。」と語り、両者の関係も良好だ。桃山学院の堅守のなによりの秘訣はこの信頼関係にあるのかもしれない。


 


【writer】

長谷川顕三


【プロフィール】

1992年生まれ。大学に通いながら関西の大学サッカーや育成世代を追うフリーライター。将来の目標は育成世代の専門誌を創刊すること。


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