このブログとしてはまさかの、2日連続でのアフリカ野球ネタです。もうこの際「国際野球狂の詩」にタイトル変更すっか?(笑)でも、常連さんには「欧州〜」で覚えていただいてるわけですし、やっぱり自分にとっては、ヨーロッパ野球が一番面白い世界でもあるので、このスタイルのまま行こうかと思います。

 さて、今回はアフリカ大陸からやってきた、あるプロ野球選手について取り上げてみたいと思う。もっともらしく「ある」とわざわざ言ってみたところで、タイトルを見れば誰のことかモロバレなんだけどね。そう、2005年に四国リーグの香川オリーブガイナーズに入団し、ジンバブエ初のプロ野球選手となった、シェパード・シバンダ内野手だ。Twitterで募ったリクエストで、このテーマを提案してくださったtakumix28さん、ありがとうございます。

 時はさかのぼって1992年、青年海外協力隊員としてジンバブエを訪れた、村井洋介さんから指導されたことをきっかけに、野球と出会ったシェパード。その後13年にわたって現地で指導を受け、日本では2006年から3年間、日本の独立リーグでプレーした。俺自身は、残念ながら彼のプレーを見る機会には恵まれなかったけれど、粗削りながら身体能力が非常に高く、特に長打力には目を見張るものがあったそうだ。しかし2008年9月2日、一身上の都合で BCリーグの福井ミラクルエレファンツを退団した後、彼の消息は分からなくなってしまった。

 実は、俺も今回調べてみて分かったんだけど、厳密に言うとシェパード・シバンダ「内野手」という表記は、実は間違い。正しくは「元内野手」だ。というのも、彼は福井を退団した後、現役を引退していたから。現在まだ25歳の彼は、今は母国ジンバブエの隣国・南アフリカ共和国のヨハネスブルグに住み、建設関係の会社で働いているんだという。

 彼が所属しているumnotho wamazwe社は、南アの黒人オーナーが所有する会社。主な事業は建設業のほか、商社と黒人企業専門のコンサルタントなどだそうだ。2006年に創設されたばかりの、まだ若い会社らしい。この会社の中で、シェパードがどの事業部に属しているのかは分からないけど、少なくとも会社員として、毎日多忙な日々を送っていることは確かだろうと思う。

 ちょっと、ここからは若干堅い話を。実際に、Wikiなどにそうした記述があるわけではないけど、おそらく彼が退団した「一身上の都合」というのは、母国ジンバブエで起きたハイパーインフレに、その背景があるんじゃないかと思う。彼が福井を離れた2008年の5月には、ジンバブエでは1億ジンバブエ・ドルと2億5000万ジンバブエ・ドルの、新紙幣が発行されている。日本人の俺達からすると、とてつもない額面の数字だけど、世界最悪のインフレ水準を持つ国にとっては、こんなのは序の口。さらに50億、250億、500億と、新紙幣の額面はどんどん大きくなっていって、7月には当時世界最大となる、 1000億ドル札が作られた。その後もさらにインフレが加速したので、通貨単位を一気に引き下げるデノミを行い、さらに新紙幣を作るなんてこともあったそうだ。

 こんなことをやってたら、国の経済が破綻するのは至極当然の話。当然、その影響はシェパードの家族にも及んだだろう。これはあくまで想像だけど、シェパードは母国からそうした一方が届いた後も、何とか家族を助けたい一心で、日本で野球を続けた。家族もその思いを組んで、苦しい中でもそれを容認した。ただ、残念ながら母国の経済状況はどんどん悪化していって、息子を外国に行かせ続けられるような状態ではなくなった。そして、退団する直前についに抜き差しならない状態になって、泣く泣く母国に帰った。この時期の、シェパード自身と母国の状況を重ね合わせると、そんなストーリーが思い浮かぶ。