中国のiPhone、iPodの液晶パネル製造工場、蘇州聨建科技有限公司(以下、聯建科技)でこのほど、従業員47人が慢性中毒の症状を訴え、病院で治療を受けていることが分かった。慢性中毒の原因は、中毒性の高い薬物の違法使用によると見られるが、会社側の対応は不透明だ。毎日経済新聞などが伝えた。

 入院中の従業員によると、同工場では、パネルの製造過程で、中毒性の高い物質、ヘキサンを違法に使用しており、これまでに47人が慢性中毒を訴え、入院する騒ぎが起きている。そのうち10人はすでに退院したが、20人以上は現在も治療中で、中には入院生活が9カ月にも及ぶ従業員もいるという。

 工場で使用されたヘキサンは、無色透明の液体で、独特のにおいを持つ。揮発速度がアルコールよりも速く、液晶面のふき取り効果が高いことから使用されたと見られる。しかし中毒性が高く、長期的な吸入などで、頭痛、めまい、四肢末梢(まっしょう)の知覚まひなどの症状が出ることから、使用を禁止されているという。

 同社の戴志豪管理部課長は、工場が過去に中毒患者を出したこと自体は否定しなかったが、現時点で作業中にめまいを訴え、工場内の医務室に運び込まれる従業員はいないと説明、工場内の環境改善を強調した。しかし、現場からは今なお、「作業中に倒れる女性工員がいても、工場側は『ダイエットのせいだ』などとして無関係を強調する」との声も上がっており、工場の対応には不透明さが目立つ。

 中国では、広東省に工場を持ち、同じくiPhone製造を手がける「富士康(Foxconn)」社の従業員が、契約問題を苦に相次いで自殺する問題が大きく取り上げられている。今回の問題も、「iPhone製造商」という同じ業種から出たとあって、事態の今後の展開に注目が集まっている。(編集担当:金田知子)



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