地球最接近:小惑星『アポフィス』視点の動画

Alexis Madrigal

サンフランシスコ発――まだ発見されていない無数の地球近傍天体(NEO)が、いつの日か地球に突進してくるかも知れない。サンフランシスコで開催された米国地球物理学連合(AGU)の会議では、そんな天体の追跡について盛んに議論がなされた。ただしこれまでのところ、近い将来、地球に衝突するおそれが少しでもある天体は1つしか発見されていない。

その天体は、地球近傍小惑星『アポフィス』(推定直径270メートル)だ。アポフィスは、このような天体の観測が始まって以来、地球の最も近くを通過するとされた天体だ(日本語版記事)。

一時はトリノスケールが4と評価されたが、これは地球近傍天体として過去最大だった。[トリノスケールは地球近傍天体が地球に衝突する確率、及び衝突した際の予測被害状況を表す尺度で、0から10まである。1996年イタリアのトリノで開催された国際天文連盟の会議で採択された]

2004年のクリスマスイブに発表された観測報告では、アポフィスが2029年に地球に衝突する可能性は2%を超えるとされた。その後、より詳細な観測により地球衝突の確率は25万分の1に引き下げられた。しかしこの騒ぎで、小惑星の探知と防衛の研究分野は一気に注目が高まった。

衝突する気はないようだとはいえ、アポフィスは2029年4月13日(米国時間)、現在わかっている地球近傍天体としては最も地球に接近し、地表からわずか2万9500キロメートルの上空を通過する。[静止軌道の距離は3万5786キロメートルであり、それより内側。視等級は3.3となり、ヨーロッパ、アフリカ、西アジアにおいては肉眼でも容易に観測できるようになる]

冒頭の動画は、アポフィスからみたアポフィス地球接近のアニメーションで、米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)が制作した。とにかく、かなりの接近だとわかる。

[2008年4月15日、ドイツの13歳の少年により、アポフィスが2029年の接近時に1個または複数の人工衛星と衝突する可能性があり、それによって次の接近時(2036年)に地球と衝突する確率が上昇することが指摘された。少年の算出した、アポフィスが地球に衝突する確率は450分の1であり、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は少年の計算が正しいと認めたが、NASAはこの計算は誤りだと反論している。

JPLのサイトでは、今後数十年にわたるアポフィスの軌道のアニメーション画像を見ることができる。画像は、アストロアーツ社の安喰修氏の『OrbitViewer』を、JPLの研究者が拡張したもの]

WIRED NEWS 原文(English)

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