大山志保=記者の前で涙を流すも、しっかりと質問に応える姿には感動!(写真/田辺安啓=JJ)

写真拡大 (全10枚)

全米女子オープンは、昨季の賞金女王ロレーナ・オチョアに競り勝ったクリスティ・カーの優勝で幕を閉じた。通算10勝目、メジャー初優勝を決めた瞬間、カーは思わずグリーン上にしゃがみこみ、うれし涙を流した。表彰式でトロフィーを抱き上げたときは、列をなすカメラマンたちに向かって、にっこり笑顔。その笑顔は充実感と満足感に溢れた素敵な笑顔だった。

実を言えば、今日、もう一人の女性の涙を見た。大山志保の涙だ。3日間、大活躍を続け、リーダーボードに名を連ねてきた大山。一時は2位タイまで浮上し、最終ラウンド開始前には「トップ10に入りたい」と小声で、しかし語気を強めて囁いた。だが、ボギー先行の最終ラウンドは、寄せに2度も失敗し、ダブルボギーを叩いた15番がトップ10入りの願いを封じる決定打になってしまった。通算6オーバーで22位タイ。

だが、大山の涙は10位に入れなかったがゆえの悔し涙ではない。悔しさはもちろんあるだろうけれど、こらえていた感情が堰を切って溢れ出す引き金はキャディの囁きだった。「僕は志保を誇りに思う。志保は自分を誇りに思うべきだ。ホントによくがんばったね」。涙が止まらぬまま、アテストエリアにやってきた大山は、途切れ途切れの涙声ながら気丈に話をした。「キャディの言葉を聞いたら、うれしかったのと、自分はがんばったんだなという思いと、両方が溢れて……」。だが、彼女はこんな言葉も付け加えた。「気持ちに弱い部分があった。その弱い部分が第3ラウンドと第4ラウンドで出た」。大山が指摘した通り、最終日に崩れかけた調子を立て直せないうちにダブルボギーを叩いたという展開は、精神的な弱さによるものだったのかもしれない。しかし前日に大山自身が「コースが選手を強くする」と語ったあの言葉は、4日間を通して彼女を強くしたのではないか。「はい、強くなれたと思います。まだまだ(自分には)可能性もあるし、手ごたえもつかめた」。そう、キャディだけではなく、大勢の日本のファンが大山を誇りに思っているだろう。

昨日のこのコーナーで「ゴルフは4日間の勝負」という宮里藍の言葉について書いたが、最終日の宮里は、まさに自身のこの言葉を現実化するプレーで10位タイに食い込んだ。「トップ10に入るチャンスはあると信じていた」。飛距離が出る大山や横峯さくらが上位を走る傍ら、あまり飛ばない宮里はなかなか浮上できず、苦しい戦いを強いられていた。だが、ネバーギブアップの精神と米ツアーを主戦場としてきたこの1年半の蓄積が、最後には宮里を10位へ押し上げた。思えば、1年前のこの大会のとき、「小技のショットバリエーションが不足している」と言った宮里。グリーン周りがキーポイントだったパインニードルズで飛ばない彼女が好成績を出せた理由は、その小技の上達だ。「速いグリーンに対してスピンで止められるようになった。それ1つだけを取っても(この1年半は)大きな前進です」。藍ちゃんスマイルは輝いていた。

初出場で大山と同じ22位タイになった横峯は同組の選手たちの笑顔を見て、「余裕がないと笑顔は出ないんだなと思った。私には余裕がなかった」。しかし、そう言いながら見せた笑顔には、予選通過を果たし、それなりの手ごたえを得たという自信が感じられた。

チャンピオンに輝いたカーの涙と笑顔。大山の涙。宮里の笑顔。そして横峯の笑顔――女の笑顔と女の涙が交錯した女の戦いは、見ごたえ十分だった。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)