【清水 芽々】「DV夫」と離婚したのに復縁した女性…自分の代わりに暴力を受けるようになった「義母を見捨てられなかった」
群馬県在住の針谷元子さん(仮名・81歳)は、実の息子のDVに20年以上耐えてきた。ひとり息子の誠さん(仮名・40歳)が15歳の時に父親がガンで他界。素行不良が目立つようになり、高校卒業後から母親へのDVが始まった。
誠さんは31歳のときに、4歳下の由香里さん(仮名・現在36歳)と結婚。由香里さんは元子さんが働いていた児童養護施設の出身で、昔から娘のように可愛がってきた女性だ。結婚を機に、ようやく誠さんのDVは収まるかと思ったが……。
前編記事『嫁と一緒に「息子のDV」に耐える80歳女性…暴力が始まった「きっかけ」とその後の「地獄の日々」』より続く。
顔は腫れあがり、腕や足は痣だらけ
やがて由香里さんから懐妊の知らせがあり、元子さんはお祝いを口実に誠さん宅を訪問する。だが、そこで1年ぶりに会った由香里さんの姿に驚愕する。
「顔は腫れあがり、腕や足は痣だらけ……かつての私の姿がありました。聞けば、悪阻がひどくて、家事や夜の相手ができない由香里に誠が腹を立てて暴力をふるっていたと言うんです」(元子さん、以下「」内は同)
実の娘のように思っている嫁とお腹にいる孫までも身の危険にさらされていると知って、元子さんは由香里さんを自宅に連れ帰った。
「その日のうちに誠が乗り込んで来ました。逆上した誠が何をするかわからないので、あらかじめ、近くに住んでいる親戚に集まってもらいました」
多勢に無勢とあってはさすがの誠さんも強気に出られず、「子どもが生まれて落ち着くまで由香里はこっちで預かる」という元子さんの申し出に従わざるを得なかった。
「誠はしばらく通い夫のような感じでした。由香里が男の子を出産すると、誠はウソのように我が子を可愛がるようになり、私や由香里に対する態度も優しくなったので『ようやく母や妻の偉大さに気づいたのか』と由香里と一緒に胸を撫で下ろしていたんです」
やがて離婚が成立したが…
「お喰い初め」を済ませ、育児にも慣れたことで由香里さんと赤ん坊は誠さんのもとに戻った。だが、間もなく誠さんの転勤が決まり、由香里さんと子どもも一緒に県外へ転居することになった。
「そこが電車とバスをいくつも乗り継がなきゃいけないような場所だったんです。私は膝を悪くしていて思うように動けず、行くことができませんでした」
「3年近く顔を合わせる機会がなかった」という元子さんと由香里さんは、折に触れ、LINEでメッセージや写真などのやりとりをしていたそうだが、次第に元子さんは違和感を抱くようになる。
「画像が子どものものばかりで由香里の顔が写ってないんです」
ある日元子さんは送られて来た画像の中にとんでもないものを見つけてしまう。
「子どもの写真にわずかに写り込んでいた由香里の手首に痣があったんです。背景には壁に穴が開いた室内の様子も写り込んでいました。間違いなく誠のDVが始まっていると確信しました」
すぐに元子さんは知り合いの便利屋と共に由香里さんのもとへ駆けつけ、由香里さんと孫を連れ帰った。
「私が由香里を助け出したのはこれで2回目です。誠が『子どもの相手ばかりして俺のことを蔑ろにしている!』と由香里や息子に暴力をふるっていると聞いて、完全に堪忍袋の緒が切れました」
弁護士に間に入ってもらい、間もなく誠さんと由香里さんの離婚は成立したのだが、「離婚がバレて会社に居づらくなった」という誠さんが退職して実家に戻り、元子さんとのふたり暮らしが始まると、DVの矛先は再び元子さんに向けられるようになった。
「早い話が、私のせいで離婚になったという逆恨みみたいなもんですね。由香里と子どもに未練たらたらの息子は、ある時は殴る蹴るの力ずく、またある時は泣き落としで由香里たちの居場所を聞き出そうとしましたが、私が口を割らないので逆上するんです」
「私も義母を見捨てられない」
ある日、誠さんはボロボロになって床に横たわる元子さんの姿を撮影し、元子さんのスマホを使って由香里さんに送信。元子さんが、以前の自分と同じような状況に置かれていることを知った由香里さんは、かつて元子さんがそうしたように、元子さんを助けに行った。だが、元子さんが同行を拒んだため、由香里さんはやむなく誠さんと復縁を果たす。
それから2年……現在、元子さんと誠さん一家は同居生活を送っている。元子さんが子育てや家事を担当し、由香里さんは誠さんにかかりきりなのだが、誠さんはちょっとでも気に入らないことがあると暴れ出すため、「どこに地雷が埋まっているかわからない」綱渡り生活だという。
「バカなんですよ、由香里は。私のことなんか放っておけばいいのに、私を心配してわざわざDV夫と復縁するんですから。私さえいなければ由香里と孫は自由になれるのにと申し訳なくて、何度死のうとしたかわかりません。でも由香里と孫が心配で死ぬに死ねないんです。いったいどうすればいいんですかね……」
嘆きが止まらない元子さん。筆者は由香里さんにも話しを聞いた。
「義母は私が義母の犠牲になっていると思っているようですけど、実際は義母が私をかばってDVを受けていることが多くあります。私は中学の時に養護施設に引き取られてから義母には本当にお世話になりましたので、親子にしてもらえて、可愛い子どもを授かったことで幸せなんです。義母と子どもと3人で逃げ出そうと思ったこともありますが、義母は誠の仕返しを恐れて一緒に行こうとしないし、私も義母を見捨てられないので、結果的にここに留まっています。これから先のことはなるようにしかならないと思っています」
僭越ながら、筆者は元子さんに知り合いが運営するシェルターを紹介した。元子さん、由香里さん、お子さんの3人に安心・安全な未来が訪れることを願っている。
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