「日本は負けている」という声が、国内外で静かに広がっている。自動車産業のシェア、インフラ受注、東南アジアでの存在感。数字だけ見れば、確かに中国の躍進は目を見張るものがある。
 
実業家のマイキー佐野氏は、こうした「日本敗北論」に正面から向き合いながら、単純な勝ち負けの図式では見えてこない実態を丁寧に読み解いていく。中国が過剰生産した製品を低価格で輸出し、政府系融資を惜しみなく投じて東南アジアで存在感を高めてきたのは事実だ。受注量やスピード感では、日本は明らかに押されている。1970年代から東南アジアで経済構造の整備に貢献してきた日本が、21世紀に入って根本から競争の構図を塗り替えられつつある。
 
ただ、佐野氏が着目するのはその先だ。中国主導のインフラ案件が完成まで数年単位で遅延し、建設コストが大幅に膨らんだ事例がある。急速な融資攻勢が相手国を財政的な苦境へ追い込むリスクも、現実のものとなりつつある。一方で日本は、技術水準の高さと「裏切らない」という信頼感において、米中を上回る評価を受けている。防災技術や気象観測機器など、地政学的・環境的条件から磨かれてきた固有の強みも健在だ。脱炭素分野においても、日本が主導する取り組みが東南アジアで着実に進んでいる。
 
国際的な決済システムの分野でも、日本は静かに動いている。人民元決済を拡大する中国に対し、日本は複数国の財務省を巻き込む形で新たな枠組みの設計に着手している。佐野氏はこうした取り組みが国内でほとんど報じられていない現状を問題視する。
 
ODAや海外投資が「ばらまき」と批判される背景にも、佐野氏は明確な見解を示す。投資回収までは日本のサプライチェーンが優先されるといった仕組みが存在するにもかかわらず、政府の説明が圧倒的に不足しているというのだ。経済安全保障上の目的も、重要鉱物の確保という狙いも、国民が理解できる言葉で語られていない。
 
「表面のニュースで騒ぐのではなく、勉強すれば日本の強いところはいっぱいある」と佐野氏は語る。数字の見えやすい敗北ではなく、見えにくい勝負が続いている、というのが佐野氏の視点だ。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営