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恐らく最上級にエレガントなXJ-S

往年のビッグ・ジャガー、XJ-Sのルーフラインを後ろまで伸ばしたら? 後方へ広い荷室を備える、魅惑的なフォルムのシューティングブレークが完成する。恐らく、最上級にエレガントなXJ-Sではないだろうか。

【画像】魅惑的なフォルムのシューティングブレーク リンクス・イベンター XJを名乗ったジャガーたち 全141枚

英国のコーチビルダー、リンクス社は、1982年から2002年にかけて、合計67台のイベンターを作っている。非常に貴重なモデルといえるが、今回の車両は更に特別。トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)によって、唯一のチューニングを受けている。


リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

シューティングブレークは、上流階級の趣味人が狩猟を楽しむ装備を運び、獲物を自宅へ持ち帰るための、オープンボディの馬車が起源にある。1890年代に誕生したといわれるが、1960年代には忘れ去られたボディスタイルになっていた。

しかし、アストン マーティンを率いたデイビッド・ブラウン氏は、愛犬と移動できる実用的なDB5を欲し、ボディ後半を延長して限定的に製作。その魅力へ気付いたボルボは1800ESを開発し、ランチアはベータ HPEを提供するに至った。

XJ-Sのスパイダーも製作したリンクス

1975年にV型12気筒エンジンのXJ-Sが発売されて以降、ステーションワゴンの必要性を唱えた人もいたようだが、ジャガー上層部はサルーンやクーペにこだわった。そこで技術力を発揮したのが、リンクス・エンジニアリング社だ。

同社はグレートブリテン島南部、イースト・サセックス州に拠点を置き、ジャガーCタイプとDタイプのレプリカで名が知られていた。XJ-Sのルーフを切断した、リンクス・スパイダーも1981年から提供していた。


リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

リンクス社に当初から務め、25年間も取締役を担った、クリス・キース・ルーカス氏が振り返る。「自社のスパイダーでガソリンスタンドに立ち寄った際、偶然ジャガーの技術者から、実験部門のスタッフですか?って声をかけられたことがありました」

「自分の所属を答えると、しまった、余計なことを話したって、漏らしていましたね。しかし後日、開発中のXJ-SCを待ちきれない顧客がいると、ジャガーから電話で相談があり、コンバーチブルを数台提供しています」

シトロエン・アミのガラスがピッタリ

ジャガーは、コンバーチブルのXJ-SCを1985年にリリース。正規版が登場したことで、リンクスはシューティングブレークの開発へ即座にシフトした。スタイリングを担当したのは、クリス・イーストウッド氏という、審美眼を持った知人だった。

ボルボのようにボクシーなフォルムや、ドイツ風のステーションワゴン、クラシカルなオースチン・アレグロ風のものまで、複数のルーフラインを彼は提案した。だが最終的に採用されたのは、クーペのXJ-Sのルーフラインを自然に伸ばしたアイデアだった。


リンクス社のワークショップで製作されるイベンター

「すぐに試作が始まりましたが、課題はリアウインドウ。テールゲートへ収まるガラスを、型紙を作り工業団地を巡って探しました。偶然見つけたのが、シトロエン・アミ・デラックスのガラス。ピッタリの大きさで、入手しやすく、渡りに船でしたね」

「挑戦でしたが、成果は誇れるもの」

とはいえ、作業は難航したとルーカスが続ける。「燃料タンクにリアのバルクヘッドとフェンダー、ルーフの大部分を、一度取り外す必要がありました」

「当初は、フロント側のルーフを残す計画でしたが、きれいな曲面では仕上げられなかったんです。半分は神頼み、といったところでしたが、最終的には驚くほど高度な仕上がりになったと思います。挑戦でしたが、成果は誇れるものだと思います」


リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

ご登場願ったダーク・レッドのリンクス・イベンターも、彼らによって美しく仕上げられた1台。初代オーナーは、自身の名を冠した紳士服ブランドを立ち上げた、サー・モンタギュー・バートン氏を父に持つ、実業家のレイモンド・バートン氏だ。

彼は、1964年のアルペン・ラリーへACエースで参戦。コースアウトし、45mほど崖を転落しながら、軽症で済んだという幸運の持ち主でもある。

6.1L化で385psへ上昇したV12エンジン

そんなレイモンドが、クーペのXJ-Sを受け取ったのは1986年10月。V12エンジンが発揮する289psは物足りないと、早々に感じたらしい。その月末には、TWRのワークショップへ彼のジャガーは持ち込まれた。

まだ創業から10年も過ぎていなかったTWRだが、欧州ツーリングカー選手権へグループA仕様のXJ-Sで参戦。ジャガーのチューニングで、一目置かれる存在になっていた。


リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

5.3LのV12エンジンは6.1Lへ拡大され、ハイカムと専用コンロッド、鍛造ピストンが組まれた。吸排気系や点火系、燃料噴射システムも改良され、最高出力は385psへ上昇。サスペンションとブレーキも強化され、増大したパワーを受け止めた。

この続きは、リンクス・イベンター(2)にて。