椅子に座っている時、気が付いたら足を組んでしまう癖がある人は多いはず。「脚を組むと背中を痛める」「膝や股関節に負担がかかる」「静脈瘤(りゅう)の原因になる」など、足を組むことは体に悪いとする説もありますが、果たして本当に足を組むことは体に悪いのかどうかについて、シドニー工科大学で理学療法の上級講師を務めるジョシュア・ペイト氏らが解説しました。

Is sitting with your legs crossed actually bad for you?

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子どもの頃に足を組んで座っていると、「ちゃんと座りなさい」「背筋を伸ばしなさい」といった注意を受けたことがあるかもしれません。ペイト氏らは、長らく「正しい座り方」が規律や自制心、品行方正さを表わすものとされていたため、正しく座ることがまるで健康にもいいかのように言われるようになったと考えています。

長時間足を組んで座ったままでいると、体がこわばったり、一部が圧迫されているように感じたり、体を動かしたくなったりするのは事実です。しかし、これはあくまで「体勢を変えるべき合図」に過ぎず、「体がダメージを受けている」という意味ではないとのこと。

ペイト氏らは、「足を組むことは本当に体に悪いのでしょうか?ほとんどの人にとって、答えはおそらく『いいえ』でしょう」と述べ、足を組むこと自体が健康問題を引き起こす可能性は低いと主張。「背中への影響」「股関節や膝への負担」「静脈瘤のリスク」など、足を組むことで生じるとされる健康問題について説明しています。



◆背中への影響はあるのか?

足を組むと体がねじれるような姿勢になるため、背中に負担がかかって腰痛などを引き起こすという説があります。しかし、姿勢と腰痛に関する研究では依然として、「すべての人を保護する理想的な座り方」や「確実に体へ害を及ぼす日常的な姿勢」などは見つかっていません。実際、さまざまな国の理学療法士に「最適な座り方」を選んでもらった研究では、専門家の間でも理想的な座り方が大きく異なることが判明。研究者らは、理想的な座り方の考えは科学的根拠だけでなく、伝統や専門職の文化にも左右されると結論付けています。

ペイト氏らは、「姿勢は依然として重要ですが、背中は丈夫で柔軟性があり、さまざまな姿勢に耐えられるようにできています。通常、より大きな問題は足を組んだり、背筋を伸ばしたり、ノートPCに向かってうつむいたりといった姿勢にかかわらず、同じ姿勢を長時間続けることです」と述べました。

◆股関節や膝への負担は?

足を組むと股関節や膝関節がすり減るという主張もありますが、実際のところは階段を上ったり、走ったり、ジャンプしたりする方が股関節や膝への負担は大きいとのこと。確かに足を組むことで関節の角度は一時的に変わるかもしれませんが、それが関節炎や長期的な損傷を引き起こすという証拠は乏しいとペイト氏らは述べています。

一般的な臨床ガイドラインで股関節や膝への負担について言及する際は、身体活動・筋力・健康的な体重・関節への全体的な負荷といった点に重点が置かれ、特定の座り方を避けるように指示されることはないそうです。また、股関節を人工のものと交換する人工股関節置換術を受けた患者には、早期脱臼のリスクを避けるために足を組むのを避けるように指示されることがありますが、ある臨床試験ではこうした予防措置が早期脱臼の発生率に影響しないとの結果が示されています。

◆静脈瘤のリスクは高まるのか?

静脈瘤は何らかの原因で静脈内の弁が正常に機能しなくなり、血液が滞留して血管が拡張するというものです。静脈瘤のリスクは年齢・家族の病歴・妊娠・肥満・長時間立ちっぱなしの労働といった要因と関連しています。しかし、足を組んで一時的に血流が変化することと、静脈瘤のリスクとの関連性について裏付ける証拠はないとのことです。



多くの人々は長時間同じ姿勢で座っていると、一時的に手や足がしびれたり、違和感を覚えたりすることがあります。しかし、これはあくまで体勢を変えるべきだという合図であり、ちょっと体を動かせば違和感は解消されます。

ペイト氏らは、「姿勢の完璧さよりも、動作の多様性の方が重要です。体は選択肢が多い方が調子が良いものです。楽に感じるなら足を組んで座りましょう。それから足をほどいたり、体重を移動させたり、後ろにもたれかかったり、立ち上がったり、散歩に出かけてみたりしてください。多くの場合、最も健康的な座り方は『同じ姿勢を1時間続けないこと』です。もっと体を動かして姿勢を変えてください。そして、自分の体が思っていたよりも丈夫なものだと信じてください」と述べました。