岡山空港から車で片道1時間。そんな場所に、お盆の最中の8月13日・14日、帰省客をはるかに上回る人々が集結した。ロックバンド「B'z」のボーカル・稲葉浩志(59)の故郷・岡山県津山市である。人々の熱き鼓動の果てにあったものとは――。

【画像】稲葉浩志が登場して即重版された『anan』の表紙


津山市市民栄誉賞も受賞した稲葉浩志(B'z公式SNSより)

◆◆◆

重版分の売れ行きも好調の稲葉

 9月23日には還暦を迎える稲葉。昨年でデビューから35年が経ったが、今もなお日本の音楽シーンを牽引している。

「9月30日から放送が始まるNHKの朝ドラ『おむすび』の主題歌をB'zが手掛けることも発表されました。朝ドラ主題歌を担当するのは初のこと。稲葉個人としても、6月に10年ぶりとなるソロアルバムをリリース。精力的な活動を続けている」(音楽関係者)

 最近は出版界も賑わせている。7月、女性週刊誌『anan』(マガジンハウス)の表紙に初登場し、即重版。翌8月には月刊誌『GOETHE』(幻冬舎)の表紙を飾り、こちらも2度の増刷となったのだ。

「通常より多めの部数を印刷しましたが、情報リリース日にいきなりネット書店で軒並み完売、店頭でも高い販売率を記録したため、発売翌日に重版を決定しました。重版分の売れ行きも好調です」(マガジンハウス営業部)

2日間で延べ1万6000人超のファンが駆けつけ…

 稲葉効果は雑誌だけに留まらない。冒頭で触れたお盆の2日間、稲葉は7年ぶりとなる凱旋ソロライブを開催した。会場は、津山市内の津山文化センター。収容人数は1000人だったが、2日間で延べ1万6000人超のファンが駆けつけ、会場の外で、わずかに漏れてくる音に耳を傾けた。

 市内の有志で立ち上げられた「津山おもてなしプロジェクト」実行委員会事務局の松本宏光氏が明かす。

「今回のライブによる津山市内への経済波及効果は、1億3800万円と算出されました。たった2日で、地方自治体がこれだけの経済効果を得られるイベントはなかなかありません」

一際大賑わいの稲葉の実家、「イナバ化粧品店」

 そんな津山市内で一際大賑わいだったのが、稲葉の実家でもある「イナバ化粧品店」。母・邦子さんは、87歳を迎えた現在も店に立つ。「ライブの前後には1日に3、400人ものファンが来店した」(店のスタッフ)。平時も客足は途絶えず、信用調査会社の企業レポートによれば、ここ数年の売上高は1億円超を記録している。

 店舗の公式インスタグラムでは、邦子さん自ら化粧品の紹介やライブ配信を行う姿も。そんな名物ママに小誌記者も話を聞くべく取材を申し入れたものの、

「ごめんね、喉が痛くってとても無理」(邦子さん)

 なんともバッドなコミュニケーションである。それではと、化粧品店の代表取締役を務め、市内で和菓子店「くらや」を経営する稲葉の実兄・伸次さんに話を聞いた。化粧品店の繁盛ぶりについては、

「うちは特殊な事情がありますから。地方から来るお客さんでもリピートしてくださる方が多くて。普通じゃありえないですよね」

 和菓子店では稲葉にちなみ、「178」の焼印が入ったどら焼きセットも販売されている。

「せっかくたくさんの方に来てもらうので、お土産になるものを、と。今年の夏は特に買っていただけた」

唯一、貢献度「ZERO」なもの

 地元でも稲葉効果は絶大だが、唯一、貢献度「ZERO」なものが。津山名物のB級グルメ・津山ホルモンうどんだ。じつは伸次さん、「津山ホルモンうどん研究会」の副代表でもある。過去の取材には、ホルモンうどんを宣伝する曲の制作を稲葉にお願いしたとも語っている。結局、どうなりました?

「作ってもらえてないですね(笑)。なので独自で作りましたよ」(伸次さん)

 今後PRソングの制作予定はあるのか、稲葉の所属事務所に尋ねてみたものの、

「予定はございません」

 と断固拒否。

 ゼンブは無理でも、イチブだけでもお願いしたい。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年9月19日号)