石破茂氏

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焦りの色を隠せない麻生副総裁

 9月27日に投開票の自民党総裁選。今、自民党が直面するのは、「石破茂」か「小泉進次郎」かという究極の選択だという。すでに総裁選の決選投票先が両者に絞られると見越して、水面下ではさまざまな動きが――。【前後編の後編】

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【写真】「わぁ、こんなにきれいな人がこの世にいるのか!」 対抗馬・石破氏は慶大時代、妻・佳子さんにひとめぼれしたという

 前編【「進次郎氏は“経験不足の天才子役”」「石破氏は“仲間のいない政策通」 総裁候補筆頭二名の戦局の行方は】では、決選投票に残る可能性が高い小泉進次郎元環境相(43)、石破茂元幹事長(67)の二名の人物評について、専門家の意見を交えて紹介した。

石破茂

 支援する小泉氏の勝利に向けてさまざまな手を打つ菅義偉前首相(75)の攻勢を横目に、焦りの色を隠せないのが麻生太郎副総裁(83)その人だ。

 8月27日、自派閥の河野太郎デジタル相(61)を支持すると打ち出したものの、河野氏は党員票、議員票ともに支持の広がりを欠き、決選までは残れそうもない。

麻生氏と石破氏は「ほとんど口も利かない間柄」

 結果、麻生氏も究極の選択を迫られるという。

「つまるところ、麻生氏は小泉氏と石破氏、どちらに乗るのかということです」

 とは政治部デスク。

「小泉氏が新総裁の座に就けば、その流れをいち早く作った菅氏がキングメーカーとなります。後から麻生氏が小泉氏に乗り換えても遅い。かといって麻生氏は、石破氏を蛇蝎のごとく嫌っていることでも有名。2009年に自民党が下野する直前、麻生内閣の末期に、石破氏が率先して“麻生降ろし”に出たからです。以来、二人はほとんど口も利かない間柄になりました」

 しかしここにきて、変化の兆しがあるという。

「麻生氏は最近、石破氏について“総裁選に5回も出るなんて、そこは大したもんだな”と周辺に語っています」(政治ジャーナリストの青山和弘氏)

「天敵・麻生さんにだって頭を下げる覚悟」

 麻生氏が石破氏を褒めそやす。一体、どういう風の吹き回しか。それはズバリ、保身のためだった。

「麻生氏はお膝元の福岡県で武田良太元総務相(56)と覇を競い、両者は不倶戴天の敵同士。よりによって、その武田氏と菅氏は親密な関係なのです。小泉政権が誕生して菅―武田ラインが党内で力を持つと、引退もささやかれる麻生氏は、自身の福岡での後継者選びを武田氏に邪魔されかねない。麻生氏はこの際、遺恨を水に流してでも、石破氏に賭けるしかないのです」(自民党関係者)

 石破氏にとっては渡りに船だ。というのも「菅氏のほか森喜朗元首相(87)の支援も得ている小泉氏に対して議員票で劣勢」(同)にあり、応援団は喉から手が出るほど欲しい。

 石破陣営の選対本部長である岩屋毅元防衛相(67)にこの点を問うと、

「2回目の投票になった場合は、各陣営の皆さまから幅広く支援を得ないと勝利することができないので、あらゆる方面に働きかけをしていきたいと思います」

 と述べるにとどまったが、石破陣営のある議員ははっきりこう言い切った。

「今回は、過去4回敗れている石破さん自身が明言している通り“最後の戦い”になる。彼はどなたにでも頭を下げる覚悟を持っています。もちろん、天敵と言われてきた麻生さんにだって頭を下げますよ」

「プラスになることは何でもやります」

 石破氏本人にも他陣営への働きかけについて聞いた。

「当然、やっていますが、自分自身は詳しく把握はしていません。ただ、ご支援いただいている方々に“あの人にもう一回電話しなさい”“(相手のもとへ)行って頭を下げなさい”と言われれば“はい、分かりました”と」

“小泉対石破”の決選は究極の選択、と言われるが。

「申し訳ないことですね。それは、私にも足らざるところは沢山あって、そう思われてしまうので。今からでも直せることがあれば、直しましょう、ということじゃないでしょうか。候補者は、批判に口答えしても仕方がないのでね」

 麻生氏に支持を求めるかと聞くと、こう答えた。

「プラスになることは何でもやります」

自民党議員にとって、どちらでもいいんじゃないですか」

 対する小泉陣営。こちらは9月6日の記者会見を前にして、ある問題が持ち上がっていた。

 小泉陣営の議員が言う。

「国民目線を意識して裏金問題に厳しく言及するのか、それとも党内の融和路線を重視して深く立ち入らないほうがいいか。陣営内でも議論が割れたのです」

“子役”の振り付けに四苦八苦というわけだ。政治アナリストの伊藤惇夫氏が喝破する。

自民党議員にとって、実際は小泉氏でも石破氏でも、どちらでもいいんじゃないですか。双方とも国民的人気は高いわけですから。首を挿(す)げ替えて支持率が上がった瞬間、すぐ解散に踏み切れば、裏金問題がどうあれ選挙では負けない。少なくとも彼らはそう考えているのでは。無責任体質は変わらないままに……」

 総裁選は15日間の長きにわたる。国民にとって、ではない。それ以前に、当の自民党にとってさえ「足らざる人物」を担ぎ出す催事に、われわれは延々と付き合わされるしかないのだ――。

前編【「進次郎氏は“経験不足の天才子役”」「石破氏は“仲間のいない政策通」 総裁候補筆頭二名の戦局の行方は】では、決選投票に残る可能性が高い進次郎氏と石破氏二名の人物評について、専門家の意見を交えて紹介している。

「週刊新潮」2024年9月12日号 掲載