【スギ アカツキ】「アメリカ」スターバックスの客離れが止まらない…いま絶好調な「日本」でも、起こりうるかもしれない事態

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9月は日本スタバのアニバーサリー

9月は日本のスターバックスコーヒーにとって特別な月であることをご存知でしょうか? 1996年8月に海外初店舗として日本1号店が東京・銀座にオープン。その周年を祝うタイミングとして毎年9月が記念月となっているのです。今年は4日から創業53周年を記念した「アニバーサリーコレクション」としてタンブラーなどの限定グッズが登場し、スタバファンを中心ににぎわいを見せています。そうです、日本においてスタバは国内でのカフェ店舗数1位に君臨し、季節のフラペチーノや話題グッズが登場早々に完売するなど、好調を維持しています。

しかしながらスタバをグローバル規模で見ていくと、日本と同じような状況ではないことがわかります。私はスタバマニアとして国内外のスタバをリサーチしていますが、業績や人気は国によって大きく異なります。例えばイギリスやイタリアなどの欧州においては必ずしも存在感が強いわけではありません。

そして今、アメリカ本国Starbucks Corporationは業績不振によって正念場を迎えています。日本法人であるスターバックスコーヒージャパンは現在米国本社の完全子会社になっていますから、今後の状況によっては日本での人気にかげりが出てくる可能性も……。そこで今回は、今アメリカのスタバでどのようなことが起こっているのか、今後日本におけるスタバ人気はいつまで続くのか、について考えてみたいと思います。

新CEOがプライベートジェット通勤で批判

米国スターバックスの事業低迷を救うべく、今月9日から新会長兼CEOに就任するのが、ブライアン・ニコル氏。ニコル氏はこれまでメキシコ料理のファーストフードチェーン「Chipotle(チポトレ)」の会長兼CEOであり、就任後の売上はおよそ2倍、利益はおよそ7倍伸長し、株価は800%上昇させるなど、“ファーストフード業界の修理屋”と称賛される実績を持っています。ところが、就任前に“ある批判”で注目されることに。それは、彼のカルフォルニア州ニューポートビーチの自宅とシアトルオフィスを往復するための社用プライベートジェット機を提供するという待遇についてでした。

ニコル氏の基本給は160万ドル(約2.3億円)、契約金が1000万ドル(14.6億円)であることに加え、このプライベートジェット特典が注目されることに。スタバはプラスチックの使用量を減らすために新しいカップを導入するなど環境に優しい企業を掲げている環境に配慮する企業理念を掲げているにも関わらず、プライベートジェットの使用がCO2排出の大きな原因になることは、スタバの企業姿勢その理念に矛盾を生じている生じさせていると指摘されたのです。ある報告書によれば、乗客1人当たり1マイルあたりの燃料消費量は商用ジェットに比べて10倍になるそう。

スタバの決定について、環境保護団体のグリーンピースはSNS上で、スタバが決定したニコル氏へのプライベートジェット使用についての待遇を受け入れられないと投稿。同氏のプライベートジェット禁止を求める懇願へのリンクを貼付したのです。この動きに共感を示したアメリカ国民が少なからずいるということは、CNNによる報道インパクトからも推測ができます。

米国スタバは2年間でCEOが4人も交代

このようにアメリカではスタバは業績不振に陥っており、2四半期連続で売り上げが減少しています。顧客の不満としてまずあげられるのが、ブランド力の低下や価格の高さです。スタバは1971年にワシントン州シアトルのパイク・プレイス・マーケットにスターバックス コーヒー1号店がオープンしたところから歴史がはじまりました。

その後の1983年、イタリアのエスプレッソに注目しスターバックスラテを販売したことをきっかけに、アメリカにおける新たなコーヒー文化を牽引することに。今では世界中に店舗が広がるグローバルブランドに成長を遂げたものの、当時のような個性や流行感はすっかり薄れ、「スタバの6ドルもするアイスコーヒーにはお金は払いたくない。スタバは高すぎる」という残念なイメージにまで落ちぶれてしまっているといいます。

スランプに陥ったまま抜け出せない状況にいるのか、この2年間でCEOの交代はすでに4人目。業績不振の要因は前述以外にも具体的に指摘されています。例えばアプリでの受け取り注文の遅さや他のファーストフード店にもありそうなサンドイッチや焼き菓子に限定される食事メニューへの不満など。従業員にとっても労働条件や賃金、福利厚生への不満も出てきており、課題は山積みであることは間違いありません。そしてアメリカでの不人気が今後日本のスタバにも影を落とす可能性は大いに考えられるのです。

新たなメニューイノベーションはあるのか?

今夏にアメリカで人気を集めていた「Starbucks Refreshers」。ラズベリー風味のパールが入ったアイスドリンクで、鮮やかなビジュアルで話題に。

現在米国スタバではホットコーヒーよりもコールドドリンク、レモネード、フローズン系の売上の方が高い割合を占めているものの、モバイルアプリやドライブスルーでの注文が7割以上を占めるビジネスモデルになった今、スタバブランドと顧客が感じる価値におけるバランスの悪さが明るみに。これは、スタバが当初から掲げてきた“サードプレイス(自宅でも職場でもない、第三のリラックスできる場所)”として、お客が店に足を運ぶ場所ではなくなってきていること、さらにはこだわりのコーヒーを優雅に味わうという、コーヒー専門店が本来持つべき価値を提供できていないということ。

この現状は、アナリストなどの専門家から指摘されている業績回復の大きなカギを握るドリンクイノベーションには成功していないことにつながるでしょう。今年の夏に登場したラズベリー風味のパールタピオカが入った「Summer-Berry Starbucks Refreshers Beverage」はそれなりの人気を集めたものの、今後さらなるヒット商品のデビューが期待されているのです。

賛否両論となった日本上陸メニュー

日本のスタバ人気を支えるフラペチーノ。アメリカでは過去の功労者的存在になっていることを考えれば、日本でもいずれは同じ運命をたどる可能性は大いにあるでしょう。即完売が定番だったタンブラーやボトルなどのグッズも、最近ではシーズンによって売れ残ることも出てきています。

9月3日、アメリカのスターバックスで20年以上愛されている秋の風物詩的ドリンク「パンプキンスパイスラテ」が店舗だけでなくコンビニなどでも購入できるチルドカップで登場したというリリースが発表されました。アメリカで流行したメニューが後年に日本上陸してヒットというモデルがどこまで通用するかは疑問です。同様に、今年の3月から日本でも本格導入がはじまった、オリーブオイル入りのコーヒー「Oleato (オリアート)」は、現在500店舗以上に販売拡大されているものの、ヒットを生み出す起爆剤にはなっていません。

どんな国にも自国で歴史を重ねてきた食文化があります。食文化とはには、常に変化や成長をする生き物のような特長があり、トレンドの使い回しが歓迎されることはありません。アメリカを拠点とするスタバが、海外の食文化を細やかにとらえ、スタバらしいその国ならではの目新しい提案ができること、そしてその足し合わせがグローバルでの成功につながっていくことでしょう。アメリカ支配にとらわれ過ぎない、日本における自由なチャレンジを期待していきたいと思います。スタバマニアだからこそ愛を込めて……。

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