イギリス政府は、砂糖の取りすぎによる肥満や虫歯の予防を目的に、100ml当たり5g以上の砂糖を含む飲料に課税する「ソフトドリンク業界税(SDIL)」、いわゆる砂糖税を2016年3月に発表し、2018年4月に施行しました。ソーダ税とも呼ばれるこうした取り組みには無意味との意見もありますが、追跡調査により着実に砂糖の摂取量が減っていることが報告されました。

Estimated changes in free sugar consumption one year after the UK soft drinks industry levy came into force: controlled interrupted time series analysis of the National Diet and Nutrition Survey (2011-2019) | Journal of Epidemiology & Community Health

https://jech.bmj.com/content/early/2024/06/11/jech-2023-221051

Children’s sugar consumption halved since tax announcement, study finds | Sugar | The Guardian

https://www.theguardian.com/society/article/2024/jul/09/childrens-daily-sugar-consumption-halves-just-a-year-after-tax-study-finds

Journal of Epidemiology and Community Healthで発表された今回の研究で、ケンブリッジ大学のニーナ・ロジャース氏らの研究チームは、毎年実施される「全国食事と栄養調査(UK National Diet and Nutrition Survey)」に2008年4月から2019年3月に参加した大人7999人と子ども7656人の砂糖の摂取量を調べました。



この研究で特に注目されたのが、ブドウ糖などの単糖類とショ糖などの二糖類の総称である遊離糖類です。単糖類そのものや、単糖類が2つしか結合していない二糖類は血糖値を急上昇させ、糖尿病などの原因になりやすいため、WHOイギリス栄養科学諮問委員会は「遊離糖類の摂取を総エネルギー摂取量の10%未満、より理想的には5%未満に抑えること」を推奨しています。

調査の結果、砂糖税が発表される前に比べて、発表後は子どもがソフトドリンクから摂取する遊離糖類が半分になり、大人でも約3分の1減少したことが確認されました。

以下は、2008年4月から2019年3月の期間中に大人(左)と子ども(右)がソフトドリンクから摂取した遊離糖類をグラフにしたもので、赤い点は実測値を、赤い線はモデル化したデータを使っています。砂糖の摂取量は砂糖税の導入前から緩やかに減少していましたが、砂糖税が発表された2016年からはさらに大きく落ち込んでいるのがわかります。



また、食事と飲料を合わせた場合の摂取量も着実に減少しており、遊離糖類の総摂取量は子どもが1日約70gだったのが約45gに、大人は1日約60gから1日に45gに減少しました。



この結果について、ロジャース氏は「イギリスの砂糖税が、大人と子どもの砂糖摂取量の大幅な減少につながることを示した研究結果には勇気づけられます。2024年7月の総選挙で発足した新政権は、現行制度では課税が免除されているほかの飲料や一部の食品にも課税対象を拡大させることを検討した方がいいでしょう。また、一律の課税ではなく、飲料100mlに含まれる砂糖1gごとに課税するよう見直してもいいかもしれません」と述べました。

WHOイギリス栄養科学諮問委員会によると、成人の遊離糖類の摂取量は1日30g、7〜10歳の子どもは24g、4〜6歳の子どもは19gに抑えるべきとのこと。つまり、1日45gという結果は、依然としてガイドラインの推奨値を上回っていることになります。

それでも、着実に摂取量が減ったことから、今回の研究には直接参加していないイギリス歯科医師会会長のエディ・クラウチ氏は「砂糖税は目に見える成果をもたらしており、効果的です。病気の予防に関心を持っている政府なら、課税の対象を穀類などにも拡大させてしかるべきでしょう。人々の生活費を増やすべきだという意味ではありません。自主的な改革に失敗した食品業界が、税制によって正しい行動を取るのを余儀なくされるということです」とコメントしました。