北九州「成人式のド派手衣装」生みの親の“苦悩と逆転”。九州の恥から一転、NY個展へ
![成人式当日に撮影した写真。画像提供:貸衣装店「みやび小倉本店」](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/8/9/89858_963_57f55332_7b712e6c-m.jpg)
今回は、そんなド派手成人式を生み出したことがキッカケで誹謗中傷の的となりつつも、ニューヨークでのファッションウィーク出演や「パリコレクション(パリコレ)」へ出場するモデルへの新作ドレス提供などを実現し、北九州市の発展に注力する貸衣装店「みやび小倉本店」の池田雅さんに話を聞いた。
◆キッカケは2人組の男性「金さん、銀さん」
「成人式の振袖や袴は取り扱っていましたが、男性はお店にある貸衣装の中から選ぶというスタイルでした。そのため、女性は成人式の1年半ぐらい前から店に来て振袖の柄などをすり合わせしていく感じでしたが、男性は成人式の2〜3か月前から予約を受けるのが普通でした。
2003年当時は、男性の衣装といえばシンプルな無地の羽織に縦縞の紋付袴が主流。そのような状況のなか、成人式の1年前ぐらいにやってきた2人組の男性(金さん・銀さん)から、金色と銀色の衣装を着て成人式に出たいと相談があったのです」
この日は日曜日で、取引先の業者はすべて休み。それでも、「なんとかなるだろう」と考え「あたってみます」と答えたところ、金さん・銀さんは大喜び。さらに、2人からレンタル料金を確認された池田さんは、当時の相場であった4万〜5万円だと返答してしまう。
◆結局100万円近くの赤字に
「でも、月曜から取引先に問い合わせをはじめてみると、『金とか銀はない』『グレーなら』という返事ばかり。それはそうですよね、いままでそういう注文はなかったのですから。そのような状況でしたが、羽織はどうにかなりました。問題は袴……」
ネットもまだまだ普及していない2003年当時、頼れるのは取引先の業者のみ。けれど、どこに問い合わせても金と銀の袴はみつからない。池田さんは、「問い合わせの電話をするたびに、気分が落ちていきました」と言い、何度も事情を説明して断ろうとした。
「でも彼らは『少しずつでも支払っていきたい』と言い、毎月5000円とか1万円を店に持って来てくれるようになったのです。そんな彼らの一生懸命な姿、そして私が『あたってみます』と答えたときの嬉しそうな顔を思い出すと、どうにかしたいと強く思いました」
商売をはじめる前から大切にしている「お客様の夢を叶えるのが仕事」という自身の理念ともリンクし、あらためて奮い立った池田さん。けれど、この依頼を遂行したことで100万円ほどの赤字を抱える事態に陥ってしまう。
◆まったく元が取れないオーダー貸衣装
金さん・銀さんの希望を叶えるために辿り着いたのは、いまはなき京都の機織り業者。普段は袴など作っていないその業者にお願いし、金と銀の生地を織るところからスタートすることになった。ただ、1種類につき約10人分もの生地が出来上がる仕組み。
「生地は機械で作るので、決められた長さが自動的に出来上がります。その一部だけを買い取ることもできなかったため、100万円近くの赤字を抱えることになりました。さらに、はじめて縫製から携わったのも、このときです」