広汽トヨタが2022年11月に発売した初のEV「bZ4X」は、中国市場での販売が振るわない(写真は同社ウェブサイトより)

トヨタ自動車と中国の国有自動車大手、広州汽車集団(広汽集団)の合弁会社である広汽トヨタが、1000人規模の人員カットを実施することがわかった。7月25日、財新記者の取材に対して同社が事実を認めた。

広汽トヨタによれば、今回の人員カットの対象は生産部門が中心で、その規模は通常の調整の範囲内であり、市場の状況に応じて生産体制を合理的に見直すことが目的だという。

「59万円値下げ」でも鳴かず飛ばず

「解雇された同僚の多くは、EV(電気自動車)の『bZ4X』を生産している第5生産ラインの所属だった。bZ4Xは売れ行きがパッとせず、2023年4月頃から生産台数が落ち込んでいた」。今回解雇された従業員の1人は、財新記者の取材に対してそう証言した。

bZ4Xは、広汽トヨタが2022年11月に鳴り物入りで投入した同社初のEVである。ところが、発売直後から2023年1月までの累計販売台数はわずか2500台余りにとどまった。

そこで同社は、bZ4Xのメーカー希望価格を2月に3万元(約59万円)値下げし、販売のテコ入れを図った。にもかかわらず、2月から6月までの累計販売台数は3500台余りと、鳴かず飛ばずが続いている。

広汽トヨタのEVシフトが出足でつまずいたことは、広汽集団にとって頭の痛い問題だ。広汽集団の決算報告書によれば、2023年上半期(1〜6月)のグループ販売台数は116万3000台。広汽トヨタは、その約4割の45万2800台を占める稼ぎ頭だからだ。


広汽集団にとって、広汽トヨタはグループ販売台数の約4割を占める稼ぎ頭だ。写真は2022年12月に開催したEV生産ラインの操業開始イベント(広汽トヨタのウェブサイトより)

中国の自動車市場ではEVの需要急増に伴い、エンジン車の市場が縮小の一途をたどっている。その影響により、広汽トヨタの上半期の販売台数は前年同期比で9.5%減少した。

広汽集団の2023年1〜3月期決算では、純利益が前年同期の半分の15億3800万元(約302億円)に落ち込んだ。その要因について、同社は「合弁ブランド車の販売減少と利益率低下が響いた」と釈明した。

高まる外資凋落の懸念

外資系合弁メーカーの製品ラインナップは、広汽トヨタを含めて現在もエンジン車が中心だ。中国メーカーに比べたEVシフトの遅れは明白であり、凋落への懸念が高まっている。


本記事は「財新」の提供記事です

「合弁メーカーが中国市場で成長するためには、中国の消費者のニーズに応える車を迅速に開発しなければならない。EV化とスマート化で挽回を図ることが焦眉の急だ」。広汽集団の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏は、2023年4月に開催されたフォーラムでそう述べ、危機感をあらわにしていた。

(財新記者:戚展寧、謝韞力)
※原文の配信は7月25日

(財新 Biz&Tech)